シューベルト さすらい人幻想曲 D760
こんな曲は悪魔にでも弾かせればいい、とシューベルト自身が語ったという逸話は有名。
技術的にも表現的にも難易度の高い曲である。
歌曲「さすらい人」のテーマが使われているが、「さすらい人」についてはまた後にゆっくり語ることにして(これもまた語る要素があふれる心打つ名曲であるが)、今回はあくまでこの「幻想曲」について。
この曲が難曲とされている理由のひとつに、アルペジオの多用がある。
そしてそれはもちろん、この曲の美しさの理由の一つでもある。
ピアノという楽器はスラーの点において弦楽器にはかなわない。
サン=サーンスも皮肉っているように、音と音を切れ目無く繋げることは不可能だ。
まあ、それを可能であるように聴かせるのが名ピアニストのお仕事ではあるのだが…
そのようなピアノの短所である音の途切れという特徴を、長所として生かすのが、分散和音である。
素早く流暢なアルペジオ、ゆっくりと1音1音を際立たせるアルペジオ。
これこそピアノ音楽の魅力であろう。
1楽章の主旋律は「さすらい人」のリズムに加え、生き生きとした感じを出すような高速のアルペジオが用いられる。
2楽章では伴奏系に心が解けるような、3楽章のスケルツォはいかにも奇想的なアルペジオ。
4楽章のアルペジオは、さすらい人の行き着く先にあるようなどこか不安な気がする「喜び」を表すようだ。
アルペジオを中心にこの曲を見るというのはちょっと狭い考えだが、それだけこの曲のアルペジオ使いは巧妙で美しい。
ちなみに、この曲には妙な愛着がある。その理由は、題名がかっこいいからだ。小さい頃から名前に非常に惹かれていた。
そんな単純な縁というのもまあ良いのではないかと思っている。
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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more
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