メシアン 世の終わりのための四重奏曲:天使が告げる神の世界

Spread the love

メシアン:トゥーランガリラ交響曲、他

メシアン 世の終わりのための四重奏曲


オリヴィエ・メシアンは20世紀フランスを代表する作曲家で、昨年2008年は生誕100周年であった。
世界各地で彼の作品が演奏され、この曲を含め、日本でも例年以上に演奏会でメシアンが取り上げられていた。
神学家であり鳥類学者でもある彼は、共感覚者でもあり、彼独自の高い音楽性の由縁といえる。
「世の終わりのための四重奏曲」は、彼が第二次世界大戦中に捕虜となり、収容されていた時、1940年に作曲されたもの。
ヴァイオリン・クラリネット・チェロ・ピアノという変わった編成で、それは収容所内で出会った3人の音楽家と自分のための作品だからである。
メシアンは多くの宗教作品を残しており、これもその1つで、イエスの不滅性・不死性、永遠の安息日を思い讃えた曲になっている。
Ⅰ.水晶の礼拝 Ⅱ.世の終わりを告げる天使のためのヴォカリーズ Ⅲ.鳥たちの深淵
Ⅳ. 間奏曲 Ⅴ. イエスの永遠性に対する頌歌 Ⅵ.7つのらっぱのための狂乱の踊り
Ⅶ.世の終わりを告げる天使のための虹の混乱 Ⅷ.イエスの不死性に対する頌歌
この8楽章で構成されている(「8」は天地創造の安息日である7日目が、永遠に延長される8日目由来とのこと)。


キリスト教の持つ世界観とその深みというのは、どうも日本人にはよくわからないところが多い。
もちろんわからなくとも、ただ聴いて「天に召される」ような美しい曲はたくさんあるのだが、この「世の終わりのための四重奏曲」はどちらかというと、味わうにはある程度の教養というか理解というか、そういう「世界観へのアプローチ」が必要な曲である。
無論、名曲として残っている以上、楽器の特性を生かした旋律作りの上手さ、メシアン節とも言えるある種奇妙な語法、響きの美しさなどは申し分ないのだが。
『ヨハネの黙示録』第10章からインスピレーションを受け作曲されたこの作品は、キリストの再来と神の国の到来、それを告げる天使とそのラッパ、イエスとその国の永遠性、という意味を持っている。
天使は世の終わり(End of time)を告げ、鳥は天国とその平穏を静かに歌い、天使を喚起する。
天使のラッパは災いを告げ、人は恐れ焦り、世は終わりへと向かう。
最後は永遠の神の国、イエスの不死を讃えるような、瞑想的なチェロ、鳴りやまないヴァイオリンの調べ。
こういったキリスト教世界観がベースにある作品である。
黙示録による世界を想像すると、特に曲の最後などは鳥肌ものだ。
また、クラリネット・ソロによる「鳥たちの深淵」、総ユニゾンの「7つのらっぱのための狂乱の踊り」、など、所謂「聴きどころ」も押さえておけば、コンサートでも楽しめる。


収容所のメシアンが描く天地創造、彼は黙示録から何を受け取ったのか。
疑わしくも、どこまでも敬虔な響きを堪能したい。

メシアン:トゥーランガリラ交響曲、他 メシアン:トゥーランガリラ交響曲、他
ラトル(サイモン)EMI MUSIC JAPAN(TO)(M)
売り上げランキング : 19513

Amazonで詳しく見る by AZlink


ここまで読んでくださった方、この文章はお役に立ちましたか? もしよろしければ、焼き芋のショパン、じゃなくて干し芋のリストを見ていただけますか? ブログ著者を応援してくださる方、まるでルドルフ大公のようなパトロンになってくださる方、なにとぞお恵みを……。アマギフ15円から送れます、皆様の個人情報が僕に通知されることはありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。励みになります。ほしいものリストはこちら

Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

にほんブログ村 クラシックブログへ にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ 
↑もっとちゃんとしたクラシック音楽鑑賞記事を読みたい方は上のリンクへどうぞ。たくさんありますよ。

Spread the love

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください