ハンソン 交響曲第2番「ロマンティック」 作品30
まるで映画を見ているかのような、美しい情景が浮かんでくる旋律にうっとりするほどロマンティックな交響曲。
アメリカの現代音楽を代表する作曲家、ハワード・ハンソンは、「アメリカのシベリウス」の異名を持つ、保守的な作曲家である。
ハンソンの時代はシェーンベルクらの活躍する時代であり、この「ロマンティック」は、前衛手法に傾倒していたクラシック音楽界に対する反抗である。
数々の前衛的な現代音楽が生み出されていた時代において、こうしたロマン派の手法を保守した音楽を提案し続けたハンソンには、僕は尊敬と好感を抱いてる。
ロマンティックというと、ブルックナーの4番が有名だが、それとはまた違った意味の「ロマンティック」であり、まあ僕たちが普段使う意味に近いかもしれない。
いわゆる「ロマン的なもの」というよりは、ファンタジー性や情感の豊かさが特徴の曲である。
ストーリーこそないが、まるで1つの物語の世界を築いているような作品だ。
1楽章だけやや長いのだが、空想的な雰囲気がたっぷりと奏でられる。冒頭からいきなり空想世界にいるかのような気分にさせてくれる。
2楽章はいっそうムーディーで抒情的になり、弦楽と木管の合奏は聴きどころのひとつだ。後半の美しい弦楽合奏も逃せない。
ロマンティックさというのはやはりこういうゆったりした部分がミソだろう。
3楽章になるとブラスの壮大さも増し、ロマンティックな旋律はさらに表情を豊かにする。
クライマックスに向けて、いかにもアメリカらしい旋律が盛り上がってくると、トランペットのソロが鳴り渡り、それから幾分あっさりとフィナーレを迎える。
最後まで決して仰々しくないところが、この作品全体の持つ上品さを保っている。
やや映画音楽くさい、というかBGM風にも聞こえるのが、物足りない感じのする人もいるかもしれない。
実際、映画「エイリアン」のエンディングで3楽章が使われているし、おそらく何かしながら聴いたりすると、大した印象は残らないかもしれない。
なかなか生の演奏会で聴く機会はない曲なので、部屋で寝る前にでも聴いてほしい。
ハンソンの提案する、温かい音楽の世界の中では、濃厚なロマンティックさもすんなりと受け入れられるし、しばし美しい夢を見ていたような印象が残る、そんな曲である。
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都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more