R・シュトラウス 交響的幻想曲「イタリアより」:意外な一面

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R.シュトラウス:マクベス&イタリアより

R・シュトラウス 交響的幻想曲「イタリアより」Op. 16 TrV 147


旅行音楽が続くが、イタリアを訪れた印象を音楽にした、という作曲家は数え上げたらきりがない。
このブログでも、そういった種類の曲としては、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」にリストの巡礼の年第2年「イタリア」と取り上げ、これがもう3つ目になってしまった。
単に僕の好みの問題でもあるが、まあイタリアはやはりそういう地なのだ。
この作品は、1886年、シュトラウスが若干22歳の頃に作曲された、最初期の管弦楽曲である。
彼の作品は巨大なものも多いが、この交響的幻想曲と題された音楽も同じく大編成で、演奏時間も約45分程と、なかなかの大曲で、副題を持つ4つの楽章で構成されている。
1楽章「カンパーニャにて」、2楽章「ローマの遺跡にて」
3楽章「ソレントの海岸にて」、4楽章「ナポリ人の生活」
4楽章では当時流行していたカンツォーネ、「フニクリ・フニクラ」を引用して、陽気に大盛り上がりするのだが、シュトラウスはこれを民謡だと勘違いして勝手に取り入れてしまったがために、演奏の度に作曲者のデンツァに著作権料を払うことになった、というなんとも間抜けなエピソードがある。
それはともかく、彼の若さのおかげもあるのだろうが、「あ、こんな聴きやすい曲もあるのか」と、ちょっと彼の意外な一面を見たような印象のする曲である。
「R・シュトラウスの作品は長いし難しいし聴きにくいな…」と思っている方にぜひ聴いてほしい曲だ。
他の作品と比べてとってもわかりやすいので、45分があっという間に感じてしまう。
また、明朗だからといって決して浅い音楽ではない、というのもまたオススメの理由だ。


最初期の作品ではあるが、1楽章冒頭からすでにR・シュトラウスらしい広がりのある響きが。
それでも後期のようなとっつきにくさは一切ない。
美しく艶のある弦楽合奏が、ハープの伴奏に乗った木管楽器が、日の光が差し込む海と山がスケール大きく広がるカンパーニャ地方を巧みに描写している。
特にこの1楽章は、巨匠ピアニスト、リヒテルもお気に入りだったそうだ。
2楽章はローマの遺跡とある。様々に移り変わる情景は時代をも行き来しているのだろうか。
3楽章の「ソレントの海岸にて」は、まるで印象派を思わせるような、繊細なオーケストレーションによる描写が特徴的だ。
木管群のトリルに弦楽器のグリッサンド、暖かく、緩やかな風を感じる音楽に、いつまでも酔いしれる。
と、思っていると、4楽章はいきなりフニクリ・フニクラ。いかにもナポリな雰囲気。
ナポリ人の生活、活気があって、ちょっとやかましくて、そんな中聞こえてくるフニクリ・フニクラ。
子供は駆け回り、大人も駆け回ったりして、時にロマンチックで、時に喧嘩して、そんな中聞こえてくるフニクリ・フニクラ。
ちっぽけな悩みなんかか吹き飛ばしてくれる、なんて陽気な街、なんて陽気な音楽なんだろう。
交響曲でも交響詩でもなく、より自由度のある交響的幻想曲と付けられた情景音楽。
その自由さは、シュトラウスの見たイタリアの雰囲気をいっそう鮮やかに描き出しているし、またそういう曲にこそ彼の真の姿というのが隠れているのかもしれない。

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