フォーレ ヴァイオリン・ソナタ第1番:近代室内楽の金字塔

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フランク、フォーレ&ドビュッシー : ヴァイオリン・ソナタ

フォーレ ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 作品13


近代フランスの作曲家によるヴァイオリン・ソナタの名曲と言えば、まずフランクのものが代表格と言える。
フランクのヴァイオリン・ソナタは圧倒的な名曲であることに間違いないが、フォーレがヴァイオリン・ソナタを書いたのはそれよりも10年以上も早い、1875年のことだ。
以前ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」をこのブログで取り上げたが(記事はこちら、演奏はこちら)、雨の歌はフォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番の完成に遅れること2年、そういう事実を鑑みるに、フォーレの室内楽的な音楽センスの卓越性には一目置くべきだろう。
まず「レクイエム」からフォーレを知ったという人は多いと思う。
僕も「フォーレと言えばレクイエム」という印象のみを抱いていた頃、フォーレのピアノ曲を聴いて、得も言われぬなめらかな肌触りを体感し、こと印象派に傾倒していた僕は「こういうフランスもあったのか」と新しい発見をした気分だった。
これがフランク、ショーソン、ダンディらに通ずるエスプリ感だったのは後に気づくのだが、フォーレのピアノ作品をきっかけに広がった近代フランス音楽の中でも、そういったエスプリ感がぐっと詰まっているように思うのが、このヴァイオリン・ソナタ第1番なのだ。


始まってすぐ、柔和で温厚なピアノの調べに夢見心地な気分になる。ヴァイオリンの調べが加われば、温和な空気はやや熱を帯びた空気に変わり、情熱的ですらある。
なんだろうか、この曲においては、音楽を肌で敏感に感じる。1楽章の温度感は、移り変わりも楽しいが、いずれにせよ快い温度を保っている。
緩徐楽章の2楽章は、先程も述べたが、なめらかな絹のような肌触り。この音楽に全身を包み込まれれば、1楽章に劣らない快さ。ピアノとヴァイオリンのバランスが醸し出す極上の肌触りだ。
3楽章は動き回るスケルツォ。ヴァイオリンの妙技に酔いしれたい。早いパッセージやピツィカートで、起承転結の転を担っている。
そして4楽章は、再び1楽章のような、フォーレらしい優しさにあふれた温度感。これがまさしく近代フランスの空気なのかもしれない。そう思わずにはいられない。
音楽はある空気を生み出す。その空気の気持ち良さを肌で感じられるのは、フォーレの音楽、特にフォーレの室内楽の美点だ。
派手さや胸を裂くような感情はないし、いつまでも浸っていれるほどぬるい音楽ではない。しかし、実にバランスよく、この音楽に浸っている時間の快さときたら!
フランクだけでなく、フォーレのソナタももっと称賛されてしかるべきだ。

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