伊福部昭 SF交響ファンタジー第1番:人間のエネルギー

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伊福部昭 SF交響ファンタジー第1番


伊福部は以前「日本狂詩曲」について記事を書いたが、この「SF交響ファンタジー」で再びの登場となる。
邦人作曲家が好きな僕にとって、伊福部はそのきっかけになったような重要な人物であり、さらに言えばこの曲は伊福部を好きになるきっかけのひとつでもあり、一層重要なのだ。
多くの映画音楽を残し、ことに特撮にかけては根強いファンが多い伊福部が、それらをこうしてまとめてステージ作品にしてくれたことに我々は感謝しようではないか。
現代では、映画の元ネタを知っている人にとってはノスタルジーであり、知らない人にとっても伊福部音楽らしさ、伊福部音楽の魅力を十二分に感じることのできる曲だろう。
「ゴジラ」「キングコング対ゴジラ」「宇宙大戦争」「フランケンシュタイン対地底怪獣」「三大怪獣 地球最大の決戦」「怪獣総進撃」から編纂されたこの第1番は、冒頭のゴジラの動機が印象深い、15分ほどの管弦楽曲。
轟く低音、唸る金管、吼える打楽器……伊福部音楽の力が溢れだす。
本来なら一夜限りの演奏会(初演時)で終わりにして、自身の作品リストには加えないつもりだったらしいのだが、ファンからの強い要望で、度々演奏されることとなった。
そうやって愛され、今こうして伊福部音楽の代表的な名曲となったのだ。


本当ならここで、この音楽の最も印象的な部分である「ゴジラ」の話をしたいのだが、ここ最近の様々な社会的な理由を考慮して割愛することにした。
放射能を撒き散らし街を破壊する怪獣の話もアレな気がするのである。どうして「人間はゴジラの恐ろしさを忘れていたのだ」といった趣旨の話を大声でできようか。たとえ事実だとしても、僕は3月11日の怪獣によって命を落とした人の墓前で、また彼らと近しくまた親しかった人の前で、大声でそれを述べることはできない。
しかし、僕がこんな風に話すのを危惧するような理由などはまるでかすんでしまうほど、心に食らいつく伊福部音楽の芸術としての素晴らしさ、これは言うまでもない。
敢えて言えば、ゴジラは確かに“都会文明に対するアンチテーゼ”なのだろう。当然伊福部の音楽も、原初・土俗・自然の側の圧倒的なエネルギーがその本質をなすと言えるかもしれない。
最近は良くも悪くも、そういったエネルギーを体験する機会に恵まれ過ぎてしまったように思う。
そんなときに、そんなときだからこそ、いや、むしろそんな時だろうが何時だろうが、芸術は確固として芸術の領域から己を主張すべきなのかもしれない。
僕は芸術至上主義者かと言われると、まあ実はそんなような気もしなくはないのだが、この曲では「ネイティブなエネルギー」を感じるというより、そのエネルギーから伊福部が芸術として作り出したもの、「伊福部音楽のエネルギー」を感じることができる。
これが芸術、これこそ芸術なのだ。この音楽は人間のエネルギーにあふれていると主張しよう。

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本名徹次,東京混声合唱団,コールジューン,伊福部昭,日本フィルハーモニー交響楽団

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