リゲティ アトモスフェール:音、音楽、クラシックと雰囲気

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Ligeti Project 2: Apparitions Atmospheres

リゲティ アトモスフェール


ほとんどの人が想像する、いわゆる「現代音楽」というと、こういった作品になるのだろう。映画「2001年宇宙の旅」でも使われたリゲティの中では有名な管弦楽曲だ。
リゲティは1923年生まれのハンガリーの作曲家で、ブダペストではコダーイに師事した。1956年のハンガリー動乱のときにウィーンに亡命。その後ケルンに移り、シュトックハウゼンらの前衛手法に出会い衝撃を受ける。
彼の特徴的な手法はやはりトーン・クラスターである。トーン・クラスターとは、ある音から別の音までのすべての音を同時に出す房状和音のことで、ヘンリー・カウエルというアメリカの作曲家が一応オリジナルに近い人物となる。
なぜ曖昧なのかというと、このあたりは諸説あり、そもそもルネサンス音楽の頃から同じような手法や概念はあったとか、誰がオリジナルなのかよくわならないのが現状である。というか、僕自身があまりこのあたりの前衛技法には興味がないからというのも大きい。
そもそも僕はあまり現代音楽を聴く方ではない。もちろん、素敵な曲もたくさんあるし、聞いていて理解不能な退屈な曲ばかりじゃないから、一概に言うのはいけないともわかってはいる。
特にメロディックな現代音楽は素晴らしいし、邦人の吹奏楽作品などには他のクラシック作品にはない独特の魅力があると思う。
ではリゲティはというと、あまりそういう部類じゃない。この曲も、いきなりオーケストラの5オクターブのトーン・クラスターからはじまり、重なりに重なった音が、メロディーでもなんでもない、何か不思議な音の塊となって空気を漂う。
アトモスフェール、意味は大気とか雰囲気とか、色々に取れるけれども、確かにひとつの独特なAtomosuphereを生み出している。
僕はこの曲に古典芸術のような美しさを感じることはないけれども、それでもこの作品にはやや肯定的になる。
少なくとも、ここには偶然にではなく、人間の意図した構造があり、「音楽」ないしは「音楽的」な芸術と言えると思うからだ。


果たして「音」なのか、それとも「音楽」なのか。これは多くの現代音楽作品を聴いた際に感じる問いである。
ジョン・ケージはリゲティの弟子であるが、ケージといえばかの「悪名高い」(少なくとも僕はそう感じている)4分33秒という作品で、音の無い音楽を提示した。
それはひとつのコンセプトだったし、少なくともそれ自身は「音」ではない。無音である。そしてそれは「音楽」なのかどうか。疑問の残るところだ。
リゲティは「アトモスフェール」について、自身の解説で「ミクロポリフォニー」という手法を用いていると説明している。つまり、複雑で数多のポリフォニーを駆使して、不思議な音響効果を得るというものだ。
トーン・クラスターもそうだが、これは「音」を扱った技法であり、ケージの4分33秒とは対極にあるコンセプトだ。
この曲を聞けばわかるが、音の塊というのはいかんとも言いがたい雰囲気を作る。おそらく、人間が普通に生活していて耳にする音を、すべての他の感覚・聴覚以外の感覚を消去して聴いてみたら、このような世界は生じうるのかもしれない、とそのように思う。
ケージが音を消すことで生もうとした、世界にあふれる「音」を、リゲティは芸術的な「音」を用いて創造しようと試みたのだと思う。これを「音楽」と呼ぶのは、僕はいささかためらいを覚えるけれども、「音楽的」な芸術ではあるのだろう。
この音響的に不思議な雰囲気を感じるのが、リゲティのアトモスフェールを聴く一番良い方法であり、現代音楽ファンならずとも、一度はこの「トーン・クラスター」や「ミクロポリフォニー」の応酬に耳を傾けてみるのも良いと思う。
しかし、僕が自身をもってこれは「音楽」だと言い切れないのは、確かにこの曲は独特なアトモスフェールを感じるのだが、音楽が生み出すAtomosuphereは、こんなものではないと思ってしまうからだ。
僕が多くのクラシックを聴いて感じたAtomosuphereは、もっともっと夢のような、魔術的な世界へ導くことがあった。
そして、リゲティのアトモスフェールより、もっともっと現実世界を見せつけられるような精神を感じさせることもあったのに!

Ligeti Project 2: Apparitions Atmospheres Ligeti Project 2: Apparitions Atmospheres
Gyorgy Ligeti,Jonathan Nott,Berlin Philharmonic Orchestra

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Author: funapee(Twitter)
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