スーザ　ワシントン・ポスト：思い出のマーチ No.2

スーザ　ワシントン・ポスト

アメリカの「マーチの王」ことジョン・フィリップ・スーザの行進曲。
このワシントン・ポストは「スーザの最も有名な行進曲のひとつ」とか「スーザの最も演奏される行進曲のひとつ」などと紹介されることが多い。
まあ、こういう表現はよく見かけるし、実際僕もよく使う表現だが、これはぼやかしているのであり、本当に一番有名なものや最も多く演奏されたものがわからないから使うものだ。
ズバリ言いましょう。この「ワシントン・ポスト」は、「星条旗よ永遠なれ」の次に有名で、二番目に演奏される機会の多い行進曲である！
根拠はないが、ほとんどのスーザファンはこう思っているに違いない。なんといっても1番は「星条旗よ永遠なれ」で、これは文句の付けようがない事実だろう。
では2番手は？　ほぼ確実に「ワシントン・ポスト」である。もしかしたら「士官候補生」や「雷神」を挙げる人がいるかもしれないが。
ビートルズのドラマーであるリンゴ・スターの名言「ビートルズのメンバーで２番目に好きなのは誰かって人気投票したら絶対僕さ」というものがあるが、ちょうどそのような感じだ。
あとは個人の好みや思い入れによって、「エル・カピタン」でも「美中の美」でも好きに挙げればよい。
「ワシントン・ポスト」の安定した人気は、事実この曲の音楽性の良さに由来する。これは100曲以上もあるスーザマーチの中でも、真の名曲である。
1889年、「ワシントン・ポスト」紙上でエッセイのコンテストが行われた。

「ワシントン・ポスト」紙のオーナーは、その表彰式で使う行進曲の作曲を当時アメリカ海兵隊楽団長であったスーザに依頼した。
これが表彰式で初演されると、あれよあれよと言う間に大ヒット。おかげで新聞社にも名声がもたらされ、スーザは「マーチの王」の称号を縦にする。
この曲の音楽性の素晴らしさは、表彰式という荘厳さが求められる場に、その重たい雰囲気を保ちながらも、マーチの軽快さが上手く組み込まれているところだ。
当時新しく登場して流行していたダンス、ツー・ステップの要素が盛り込まれ、それこそ踊りだしたくなるようなリズムが心地よい。
いかにもスーザの“どっこいしょ系”マーチ。聴いて楽しい演奏して楽しい、非常によく作られた名曲である。
これほど褒めるのには、やはりこの曲には思い入れがあるからであり、これは高校の頃、吹奏楽部に入部してはじめてやった曲のひとつなのだ。
「ワシントン・ポスト」、「忠誠」、「士官候補生」の3曲はそういう意味でも個人的に大切な曲。自分がいまだにときどき吹奏楽の曲を演奏すること、吹奏楽を通して出会った仲間や友人のこと……考えると、吹奏楽をやって良かったと思い、なかなかに感慨深い。
そこで僕はこの曲を推すわけだ。ではなぜナンバーワンを推さないのかというと、僕はアメリカのクラシック音楽は好きだが、そこまでアメリカに義理立てすることもないなあと思うからだ。
グローフェやバーンスタインなど、アメリカ作曲家の音楽と「星条旗よ永遠なれ」では、アメリカの濃度が違う。後者はもうアメリカらしさで飽和していると言ってもいい。
アメリカ音楽は好きでも、アメリカという国が好きかというと、別にそういうこともないので、「第二の国歌」はおあずけ。せいぜい新聞くらいでちょうど良いだろう。

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