フィビフ 交響曲第2番:リスナー・フレンドリー

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Fibich;Symphonies 2 & 3

フィビフ 交響曲第2番 変ホ長調 作品38


彼はいい意味で、本当に恵まれた、「古き良き音楽家」という人生を送ったのだろう。
チェコの作曲家ズデニェク・フィビフ(フィビヒ)は、スメタナやドヴォルザークと並ぶ、国民楽派の作曲家だ。民族色は彼らに劣るも、ドイツロマン派の伝統が色濃く現れた作品を多く残した。パノハ弦楽四重奏団など、チェコの奏者が取り上げることも多いので、耳にしたことがある人もいるかもしれない。
一応スメタナの正統な後継者という位置づけをされている。このブログではスメタナについてまだ書いてすらいない。まあ適当なもんである。
学生時代、素敵なピアノ協奏曲を残したチェコの作曲家モシェレスや、高名な音楽理論家で作曲家でもあるヤーダスゾーンから学び、卒業後は音楽教師をしながら絵画や彫刻も嗜む。
音楽教師をしたり、作曲をしたり、教会や劇場の音楽監督をしたり……忙しい楽壇の教授になることもなく、平穏に芸術生活を送っていたと見える。現代の芸術家(地位を求めるやつは別として)にはなかなかできない、というか少し羨ましくもある。
交響曲第2番が作られたのは1892年から1893年にかけての時期。この時期は、ちょうど、かつての教え子である18才年下のアネシュカ・シュルゾヴァーと“親密な関係”が始まった時期である。晩年のフィビフの作品は、彼女との恋愛によって大影響を受けていると考えられる。ピアノ曲集「気分、印象と追憶」は彼女との恋愛日記であるとも言われているし、そこまで直接ではないにせよ、交響曲第2番にも、この恋愛があってこその音楽だと思わせるような場面がある。
やはりこういうロマンスは、年齢に関係なく、音楽にとって非常に重要なものだ。チェコの作曲家で、フィビヒとほぼ同時代のヤナーチェクもそうだったし、そういうものなのだろう。


4楽章構成で、35分から40分ほどの長さ。基本的には、ひとつの主題が全体を貫いているといえる。1楽章のAllegro moderatoでは、ホルンによって演奏されて印象的に登場する。3楽章のScherzoにも、わずかだがテーマとの関わりが見える。
緩徐楽章である2楽章Adagioには、同じ時期に作っていたピアノ曲から取られた旋律などもあり、明らかにロマンスの香りがする。美しい。
何よりも、僕がこの曲の中で最も好きな楽章、4楽章は素晴らしい。Finale: Allegro energicoとあるように、エネルギーにあふれ、リズムも際立ち、聴いていて本当に気持ち良い。気分がスカッとする。
冒頭からトゥッティで動く旋律は楽しいし耳に残る。リズムを支配するティンパニが印象的だ。
テンポを落とした部分に現れるオーボエのメロディーも、ドイツ・ロマン派とチェコ国民楽派の間に位置するフィビフらしい、ちょっと耳慣れないがそこがまた楽しい旋律。
最後には主題が大きなコーダをなす。なんだかちょっと不自然なきらいもあるが、楽しいフィナーレにはちがいない。循環形式と言えなくもないだろう。確証はないが、チェコ初の循環形式の交響曲かもしれない。
ナクソスから出ているCDの宣伝文句には、ロシアのカリンニコフ、ノルウェーのスヴェンセンと来て、チェコのフィビフも、という感じに書かれていた。「リスナー・フレンドリーな音楽なら歓迎という貴方にイチオシです」と。確かにこの交響曲を聴くかぎりでは、聴きやすいメロディーメーカー(は言い過ぎかもしれない)として最高の作曲家だろう。聴いて楽しい交響曲。もっとポピュラーになってもらいたいものだ。

Fibich;Symphonies 2 & 3 Fibich;Symphonies 2 & 3
Fibich,Jarvi,Detroit Symphony Orchestra

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