フックス 氷河:少しも寒くないわ

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フックス 氷河(エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏曲)

最近、春とは思えない暑さだったから、少しでも涼し気な音楽をと思いフックスの「氷河」という曲をチョイスした。しかし、こうしてブログに書く頃には、もう梅雨みたいな天気になっている。今年の5月は不思議な天候だ。
ケネス・フックス(1956-)は、2019年の第61回グラミー賞ベスト・クラシカル・コンペンディアム部門を受賞した、アメリカの「人気」現代音楽作曲家である。日本でどのくらい人気なのかは知らないが、NAXOSレーベルで多くの音盤をリリースしており、僕も網羅しているわけではないが、幅広いジャンルで作曲している。何度かグラミー賞はノミネートしており、ジョアン・ファレッタ指揮ロンドン交響楽団が演奏するフックスのアルバムとしては5枚めに当たる、ピアノ協奏曲「スピリチュアリスト」、生命の詩、氷河、ラッシュの4作品を収録した2017年録音盤がついにグラミー賞受賞にいたった。
ということで、「氷河」はフックスの中でも有名な作品だと言ってもいいだろう。おそらくこのアルバムのメインはピアノ協奏曲だと思うが、ちょっと話の流れ的に「氷河」を推さないといけない気がするので、ここでは「氷河」の話をする。他の収録曲も素敵なのでぜひ聴いてください。

エレキギターとオーケストラの協奏曲である「氷河」は、ボーズマン響(ボーンマス響じゃないよ)からの委嘱作品。ボーズマンはアメリカのモンタナ州南部の町で、ロッキー山脈に囲まれ、イエローストーン国立公園やグレーシャー国立公園などへの観光拠点として知られる。フックスはその広大な自然の景色に触発され、この曲を書いたそうだ。ということで、氷河がメインなのは1楽章だけで、後はまた別の情景である。別に涼しくも寒くもないのであった。
5楽章構成で20分ほど。エレキギター協奏曲というジャンルがそもそも作品数が少なく、ポップスのミュージシャンによるクロスオーバー的な作品がいくつか目立つ程度だが、フックスの「氷河」はポップス寄りではなく、このCDでもD.J.・スパーという現代音楽で活躍するエレキギター奏者をソリストに迎えて録音している。

第1楽章Glacier: Tranquillo、これは遠くから見た氷河の塊をイメージしているそう。ゆったり流れる弦楽合奏にグロッケンシュピールがチラチラ輝く。エレキギターはジャズっぽくリラックスした音色で漂うパッセージを奏でる。ワウが加わると次の楽章へ。
第2楽章Rivulets: Moderato、小川とか細流といった意味。16分音符が流れを作り、打楽器も活躍。素朴で優しいメロディを奏でるリリカルなギター、なかなか素敵だ。途中カデンツァもある。
第3楽章Vapor: Misterioso、蒸気という意味。イエローストーンの間欠泉なのだろう。ギターテクの見せ場だ。スライドで面白い音色を出したり、ロックのギターソロのような即興(風?)の速弾きも登場する。しかし、全体の雰囲気はビートを感じない、神秘的な楽章。
第4楽章Stone: Vivace、ここでようやく速いテンポ、ギターとオーケストラの様々な音のやり合いを楽しもう。最後はエフェクトも楽しいカデンツァ。
第5楽章Going to the Sun: Tranquillo、モンタナ州のグレイシャー国立公園内にある、ロッキー山脈の風光明媚な「ゴーイング・トゥー・ザ・サン・ロード」というドライブコースがあり、それを讃えた音楽。画像を検索したら国立公園局のサイトにあったので拝借した(↓の写真参照)。行ってみたいなあ。同じ音形を繰り返しながら、上昇していくような、ちょっとエモい響き。作曲者自身はシンプルなジムノペディと言っているが、まさしく穏やかな陽気の中を寛ぎながら進むジムノペディ。これは太陽に向かっていくようだ。実際にドライブしていてもそうなのかしら。広大な自然の中だと、そういうものなのかな。
全体的に激しくないので、まったりとコンテンポラリー・ジャズを聴くような雰囲気でも楽しめると思う。ぜひ聴いてみてほしい。

引用元:https://www.nps.gov/thingstodo/drive-gtsr.htm

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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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