ダンディ 古風な形式による組曲:楽しく書いて、楽しく弾いて、楽しく聴いて

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ダンディ 古風な形式による組曲 ニ長調 作品24


ダンディは本当にクラシック音楽を聴く楽しさを感じさせてくれる。大迫力のオーケストラやキレキレのモダンな作品ももちろん良いけど、「古い時代の音楽」や「多くの人が思い浮かべるクラシック音楽らしいもの」という意味でのクラシック音楽を聴く喜びは、やはり何物にも代えがたい。
先日、
東京六人組の新譜CDコンサートに行ったとき、プログラムであるリヒャルトのサロメ「7つのヴェールの踊り」、プロコフィエフのロメジュリラヴェルのラ・ヴァルスという割と鋭い音楽の中にあって、ダンディの「サラバンドとメヌエット」は、穏和で古典的で、「ああ、クラシックって良いなあ」と、ひときわ思ってしまったのだ。
ということで、多分今年最後の更新(かどうかわからないけど)、ダンディの「サラバンドとメヌエット」の原曲にあたる、「古風な形式による組曲」を取り上げよう。


「古風な形式による組曲」は1886年、壮年期のダンディの作品であり、2本のフルート、トランペット、弦楽四重奏のという編成。管楽器のソリストたちと室内オケで演奏するパターンや、コントラバスが加わるパターンもある。パリの実業家で音楽愛好家でもあるエミール・ルモワンヌが主催する室内楽協会“La Trompette”の委嘱作品であり、そのためにこうした不規則な編成になっている。なお、ダンディの室内楽作品としては、このブログでは1890年の作品である弦楽四重奏曲第1番についても取り上げているのでぜひ。
5曲からなる組曲で、プレリュード、アントレ、サラバンド、メヌエット、ロンド。この中の第3曲サラバンドと第4曲メヌエットを、ピアノと木管五重奏という編成に編曲したものが先に挙げた「サラバンドとメヌエット」だ。
ちなみに、フランスの作曲家の曲で、同じように古風な形式を用いたニ長調の組曲といと、サン=サーンスの組曲ニ長調Op.49が挙げられる。こちらは1863年のハルモニウム作品を69年にオーケストラに編曲したもので、プレリュード、サラバンド、ガヴォット、ロマンス、フィナーレ。似ている。ダンディがこの組曲を作った1886年は、ちょうど国民音楽協会にフランス人以外の音楽家の作品を紹介するかどうかという点をめぐって、サン=サーンス側と、ダンディとその師フランク側で争った時期であり、結局フランクが国民音楽協会の総裁になりサン=サーンスは辞任する訳だが、以降サン=サーンスが亡くなるまで、巨匠サン=サーンスとフランク派は常にライバル同士だった。ということで、ダンディはサン=サーンスのニ長調組曲をバチバチに意識していたと考えるのが自然である。
そういうこともあってなおさら普通の編成ではなく、当時でさえ消えつつあったナチュラルトランペットを使うなど、ダンディの工夫も現れたのだった。


第1曲Prelude: Lent、ソリストにあたる管楽器のアンサンブルから始まる。ゆっくりと波打つ弦楽が物語の幕開けを告げるような。
第2曲Entree: Gai et modéré、なんと可愛らしい舞曲なんだろう。穏やかだがしっかりと楽しめる動きがある。確かに古風な形式ではあるが、当時のモードに片足突っ込んでいるような音の並びでもある。
第3曲Sarabande: Lent、重いリズムで、ダンディらしい美しい旋律と和声が楽しめる。ベースのように鳴り続くトランペットの雰囲気も良い。
第4曲Menuet: Anime、一転して華やかなメヌエット。トランペットのシンプルで上品なメロディが耳に残る。少しおどけたようなリズムのずらしも、たまらなく愛おしい。
第5曲Ronde francaise: Assez anime、フランス風ロンドと付けられた終曲は、トランペットの自然で古風な表情も見せつつ、複雑に入り組む弦楽器とフルートは19世紀末のフランス音楽のエッセンスに満ちている。


バロックのパスティーシュと言うこともできなくはないが、あくまで形式だけ借りた、ダンディの楽才の溌剌とした現出だと言えるだろう。
初演以来、パリとブリュッセルでは何度も好んで演奏されたそうだ。ブリュッセルの初演に参加したヴァイオリニストのイザイは、「この組曲はごく自然に生まれた作品で、様々な部分が一つの目的から逸れることなく、怪しい道へ行かんと悩むこともなく、次々と続いていく。正しい色彩に満ち、活き活きとしている!」と絶賛した。ダンディ自身も、書いていて楽しかったと語ったそうだ。苦しんで苦しんで生まれる名曲もあれば、楽しく作って楽しく弾けて、しかも楽しく聴ける、そんな曲もある。そういう曲だと思う。


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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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