グリエール ホルン協奏曲 変ロ長調 作品91
モーツァルト、リヒャルト・シュトラウスと並び、ホルン奏者に愛されるレパートリーの1つとして挙げられるのが、グリエールの協奏曲だ。
グリエールは「赤いけしの花」や「青銅の騎士」などのバレエ音楽で知られるロシアの作曲家である。
彼の楽風はロシア国民楽派的であったり、或いは中央アジアの民族音楽を取り入れたりと多彩だが、このホルン協奏曲は民族風はぐっと控えめ、ロマン派の香りが濃厚な作品である。
ボリショイ劇場管弦楽団の主席ホルン奏者、ヴァレリー・ポレックの委嘱作品で、初演は1951年、彼の独奏とグリエールの指揮で行われた。
伝統的な3楽章構成だが、1楽章だけ規模がやたら大きい。
しかも1楽章の中程にはカデンツァが入る。技術的にも体力的にも相当大変な作品で、そのせいか演奏機会には恵まれないようだ。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を意識して作られたとの話もあるが、その辺りの真偽の程はよくわからない。
だが、音域の広さや、一体どこでブレスをしたらいいのかわからないような旋律を考えると、確かにチェロコン風ではある。
豊かな旋律と3楽章の勇壮さの対比は見事なまでに惚れ惚れする。
僕は管楽器は全く吹けないので、知識もないし正直言ってよくわからないことが多い。
おそらく僕の一番わからない感覚は「呼吸」についてだと思う。
もちろん管楽器以外でも呼吸はするし、音楽の際に絶対必要なものだとは思う。
だが、管楽器以外は「息を吸いながら音を出せる」のだが、管楽器はそうはいかない。
ラヴェルの記事でも似たようなことを言っているが、管楽器以外の楽器は、その分だけ表現の幅がある。
だが(ここからは友人の言葉の受け売りだが)人間が生きるための行為である「呼吸」そのものを音にする管楽器には、他にはない表現があろう。
特にこの切れ目の無いような美しい旋律をホルンで奏でる協奏曲を聴くと、確かにそうだな、と僕も思う。
演奏者の意思は呼吸と共にあるのだから。
尚、トランペットの貴公子セルゲイ・ナカリャコフが、フリューゲルホルンでこのグリエールのコンチェルトを録音している。
彼は循環呼吸が出来るのだが、音色、カデンツァ、そして息づかい、反則技級に美しい。
そういう意味でもグリエールのコンチェルトは表現の幅が広い名曲であろう。
Russische Hornkonzerte (Russian Horn Concertos) Horn Neunecker,Rivin Koch Schwann (Germ.) |
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more
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