シューマン 4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック:演奏にシビアになる

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シューマン 4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック ヘ長調 作品86


コンツェルトシュテュック、つまり小協奏曲という名ではあるが、4本のホルンをフィーチャーした、スケールの大きな作品。
ドレスデン在住時代の1849年に作曲された。この2年前、シューマンはバッハの「4台のハープシコードとオーケストラのための協奏曲」の研究を行っており、影響を受けたとも考えられる。
よく管弦楽法の未熟さが指摘されるシューマンだが、交響曲第2番と交響曲第3番の間の時期に書かれたものであり、少しは自信も付いていた頃であろう。また、ホルンとピアノのための「アダージョとアレグロ」(作品70)という曲も先に作っており、ホルンの扱いにも自信があったと思われる。
これだけ名曲になりうる要因が揃っていれば自ずと素晴らしい作品が出来上がるものだ。本当に卓越した、素晴らしいシューマン作品の傑作と言えよう。
それにしても、ホルンが相当難しい。僕はホルン奏者ではないが、それでも十分わかるほど難しい。まず音域が高い高い。それゆえに演奏効果が低いと批判する者もいたほどだ。
しかし、世の中にはどんな悪魔のような技巧的な作品でも演奏してしまう魔王のような化け物プレイヤーはいる訳で、我々リスナーはこの曲の音域の高さも魅力と捉えるべきだ。
終楽章前半、楽器の最高音を響かせる瞬間のホルンは鳥肌モノである。


4本のホルンのファンファーレから始まる1楽章、いきなり心を掴まれること間違いない。伝統的な協奏曲らしく、2楽章は緩徐楽章。3楽章はリズミカルで、シューマン自身の第4交響曲の終楽章のような雰囲気。
シューマンのような名の知れた作曲家による、このような形式の協奏曲というだけで価値がある(そもそも管楽器の協奏曲はピアノやヴァイオリンに比べて数少ない)というのに、それがまた圧倒的な名曲なのだ。
ホルン奏者にとっては重要なレパートリーであり続け、難曲であるが録音も多くされてきた。これは幸運なことだと思う。しかし、そこにあぐらをかいていてはいけない。こういう曲こそ、一層シビアな耳で評価していかなければならない。
まず、最高音が出てない録音がざらにある。まあ、偉大な演奏家でもミスタッチをしている録音などはあるし、全体的に出来が良ければそれもいいのだろうが、やはり聴く分には決めどころで外されると残念。
また、ホルンが良いのにオケが残念なパターン。ややマイナーな曲なぶん、マイナーなオケが取り上げることも多いが、せっかくホルンの響きが美しくても、オケの響きが中途半端では、やはり満足できないものだ。
そして、全体として良い感じだなあと思っていたら、4人じゃなくて5人だった、というオチのこともある。特に1番パートの負担は尋常ではない。僕の大好きなホルン奏者バウマンも、1番を別の奏者と分担して録音しているものもある(勿論バウマンのことだから、1人でやっているものもある)。まあ、やはりこういうのはずるっこだろう。
バレンボイム指揮ベルリン・フィル、デイル・クレヴェンジャーとベルリン・フィルのホルンセクションという豪華なメンバーで構成された演奏のDVDは素晴らしいものだった。この演奏会はこの曲も良かったのだが、それ以上にアンコールでワルキューレの騎行をやったとき、ホルンのソリストがスタンドプレーでバリバリ吹きまくっていたのが圧巻だったが。
たまには演奏にシビアになった方が生きる曲もあるだろう。これはそういう名曲だと思う。

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