日程的に行けるか微妙だったのですが、行けることになり急遽当日午前にチケ取り。当日でも開演までスマホでチケ取りできるの、ありがたいですね。普通コンサートは、当日券は窓口のみというのがほとんどでしょうし、そうすると会場に行ってからその公演を聴けるかどうか、あるいは席もいいとこが残っているかを知る訳ですが、当日なのに会場に行く前に席も選べて予約できるの最高。東京・春・音楽祭、ナイス!
【前橋汀子カルテット】
(2023年3月30日、東京文化会館小ホール)
ベートーヴェン:
弦楽四重奏曲 第4番 ハ短調 op.18-4
弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 op.95《セリオーソ》
弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 op.131
アンコール 弦楽四重奏曲第4番 第4楽章
前橋汀子カルテット
ヴァイオリン:前橋汀子、久保田巧
ヴィオラ:川本嘉子
チェロ:原田禎夫
前橋汀子さんの演奏を聴いたのは2015年のリサイタル以来でした。この日は美智子様も来られていたんでした。感想記事はこちら。今回はカルテット。何しろ凄い人たちが集まったカルテットですから、当然期待も高まりますね。春祭のページにあった前橋さんのインタビュー記事も面白く拝読いたしました(その記事はこちら)。カルテット結成は2014年で、コロナもあり今回は2019年以来の演奏とのこと。この前日は高崎で同じプログラムで演奏されたんですね。高崎なのに前橋(言いたいだけ)。春祭での東京公演の後は大阪と名古屋でもやるそうです。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の初期・中期・後期から1曲ずつ、良いプログラムですね。
まず驚いたのが前橋さんのドレス、全身真っピンク。春の音楽祭ですからね。他の3名は落ち着いた衣装なんですが、やはり「前橋汀子カルテット」の名の通り、いかに大御所が集まっていようとも、この桜の精のようなヴァイオリニストありきのカルテットなんだなと印象付けられます。そういう意味でも、第1ヴァイオリン重視の古典派カルテット演奏は意味あると思いますし、ベートーヴェンはそれでもハイドンやモーツァルトよりもストバイ以外が活躍する曲ですから、いい塩梅だなあと。最初は4番、op.18の中でもとりわけ傑作ですが、先日の会場で聴いたものとどうしても比較してしまい、ちゃんと響くカルテットに感激。美しい。どの楽章も楽しい。4番の後に11番セリオーソを聴くのも良いものですね、シンプルに音楽の進化を感じられるというか。このセリオーソも素晴らしい演奏でした。4番終楽章でカルテットのエンジンも全開で温まったのでしょうか、もうセリオーソ1楽章から空気を震わすようなキレキレの音楽。2楽章の集中力もすごい、このアレグレット、ベートーヴェンの中でもかなり曲者というか、とても良い音楽だと思いますが、めちゃくちゃ良い演奏でしたね。14番は後期ベートーヴェンの意味わからんくらい凄い曲で、前橋さんもインタビューで「やっぱり全部を通して聴いて初めて「ああ、そうか」と納得する曲」と語っているように、細部をあれこれ言うのはなんか意味ないんですよね。前橋さんがそういう風に言う意味も、ちょっとわかったような、わからんような、そんな音楽体験でした。良いもの聴きました。それにしても、前橋さんの表現力、やっぱり一流ソリストなんだなあと圧倒されました。第一ヴァイオリンだけを聴いていても全く飽きることがない。久保田さん川本さん原田さんも、土台を作りつつも自分が出るべきところの出方が絶妙で。絶対にピンクの女王を食うような、はしたない出方はしない、しかし絶対につまらない出方にはならない、何かキラッと光るものを見せる、すごいなあと思って聴いていました。桜の花びらに対して、まるで枝や幹のような3人の仕事、うーん、凄いっすね。あ、でも原田さんは何度か首かしげてて笑ってしまった。おい! 前橋さんも魂の演奏なのでときに決まりきらないんですけど、桜は散っても美しいんだなあ。そう思わせるのは絶対的なスターのオーラ、やはり枝と幹がしっかりある樹だからでしょうね。素晴らしい時間でした。今週は運良く上野で2度もカルテット聴けて満足です。
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more