ウィーン・フィルの音色で大好きな「シェエラザード」を楽しみたいのはもちろん、ドゥダメルという指揮者の実力は果たしていかほどなのか、それも体感してみたいと思いチケットを取った今回の公演。シモン・ボリバルのノリノリな演奏の素晴らしさをはじめ、ロサンゼルス・フィルとのマーラーやベートーヴェンの録音を聴く限りでは、なかなか良いんじゃないかなあと期待していました。しかしウィーン・フィルの面々は、見る度に思うのですが、身長高いですよね(笑) ドゥダメルは小柄なのかもしれませんが、体格差がすごい。
【ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2014】(2014年9月27日、サントリーホール)
リムスキー=コルサコフ:ロシアの復活祭序曲 作品36
ムソルグスキー(リムスキー=コルサコフ編):はげ山の一夜
リムスキー=コルサコフ:シェエラザード 作品35
アンコール ヨハン・シュトラウス2世:エジプト行進曲 作品335
指揮:グスターボ・ドゥダメル
まずはロシアの復活祭序曲、管・弦・打のどれも安定したウィーン・フィルの音色で、そうそうこれを聴きに来たのだと一安心。ドゥダメルは、良く言えばウィーン・フィルと上手く調和していたし、悪く言えば存在感なし。後で他の人の感想や他の演奏会の話などを聞いて知ったことですが、ドゥダメルはとても謙虚で紳士な人だそうです。若手ナンバーワン指揮者と言われるような人物が、曲者頑固者のウィーン・フィルとこうしてツアーをこなせる理由は、おそらく彼がオケとの調和を図れる指揮者だからなのでしょう。僕はてっきりもっとイケイケな人なのかと思っていました(笑) はげ山になると、ちょっとは指揮者の個性のようなものも垣間見ることができたと思います。テンポの取り方や音の勢いなど、ハイスペックなオケの技量をフルに活かした音楽作り。お見事です。
どの曲もコンマスはシュトイデ、サイドにキュッヒルが構えていました。本日のメインであるシェエラザードを聴きながら、こんな贅沢な時間もなかなかないなあと、本当に良い気持ちでした。シュトイデのソロはやはりスマートさが光るソロで、僕の頭に浮かんできたのは、髪はショートカットでスレンダーな美人のシェエラザード(適当)。まあ本音を言えばコンマスはホーネックでもっとエキゾチック美人なシェエラザードを聴いてみたかったなあとも思いますが、シュトイデの横に鎮座して支えるキュッヒルの様子を見ると、これが世代交代というものかと、複雑な気持ちになります。ヴァイオリンだけでなく、管のソロも素晴らしかったです。それぞれ個性的でしたが、あの独特なルバートはドゥダメルの指示があったのでしょうか。しかし本当にシェエラザードという曲は名曲ですね。演奏中何度と無く、聴いているこっちの息が詰まるほど、陶酔の極みを尽くすような音楽。その音楽をこんなにも色鮮やかに彩り、生命を吹き込むのも、ドゥダメルとウィーン・フィルのなせる技です。
アンコールのエジプト行進曲は、今回の多彩なプログラムを踏まえた、エキゾチックながらもウィーンらしいというよく練られたものだったと思います。団員たちの歌声付き。シェエラザードの後に、それをも凌ぐクオリティの高さで演奏してくれたことこそ、ウィーン・フィルのプライドというものでしょう。ツアーラストということもあり、シュトイデやキュッヒルをはじめ団員たちも皆ドゥダメルを讃えていました。それを見て思い出しましたが、昨年のブッフビンダーがどれほど団員に愛され賛辞を送られていたことか! ドゥダメルはまだまだこれからの人ですし、ぜひウィーン・フィルとも仲良くやって、団員たちから有り余るほどの賞賛を受ける指揮者になってもらいたいものです。
余談ですが、僕の隣席に座っていた中国人のカップルには辟易しました。男の方はガサガサ音のするトレーニングウエアの様な格好で来て、しかもやたら動くんですね。興奮して指揮の真似まで始める始末。女の方が演奏中に咳をすると、男は鞄からガサゴソとアメを取り出して与えるという、非常識極まりない言動。この輩どもは1席35,000円も払っていったい何をしに来ているんでしょう。前席のおじさんは、演奏が始まってすぐは前のめりになってちょっと邪魔だなあと思っていたのですが、すぐに静かに眠りに入ってくれたので、こっちの方がまだマシです。さらに呆れたのは、カーテンコール時にぽつぽつスタンディングしている方がおられたのですが、隣の中国人も前のおじさんも揃って立ち上がったこと! 小喧しく音を立てながら聞いていて、あるいはほとんど眠っていて、最後には立ち上がって拍手喝采、ちゃんちゃらおかしいですね。ウィーン・フィルの演奏会に「行き」さえすれば、音なんかどうでもいいという人がいるのは残念なことです。百年二百年前のヨーロッパのコンサート会場でもそんな人はいたんでしょうが、この人達のせいで本当にウィーン・フィルの音楽を聴きたかった人が聴けなかったと考えると、悔しい気持ちになりますね。
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都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more