嫁さんの誕生日が近いので、思い出の地である横浜へお出かけするという体でサロネン&フィル管を聴けるぞ、と意気込んでチケット確保。みなとみらいホールに行くのは数年ぶりです。
【サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団 来日公演】
(2015年3月8日、横浜みなとみらいホール)
シベリウス:交響詩「フィンランディア」作品26
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77(ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン)
シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 作品43
アンコール
シベリウス:悲しきワルツ
指揮:エサ=ペッカ・サロネン
ちょうど3月8日という日はシベリウスの交響曲第2番の初演日にあたるそうです。そんな記念すべき日にサロネン指揮のシベ2を聴けた運の良さも加味した上で、実にいい演奏会だったと思います。サロネンは、想像していたよりもスイスイと先に音楽を進めていく印象でしたが、コーダでは息が詰まりそうになるほど引っ張って、ドラマチックな演出をしてくれました。聴いていて素直に感動できる音楽でしたね。フィルハーモニア管のメンバーも、サロネンとの信頼関係が築けているのでしょう。こちらも素晴らしい集中力でした。特に、2楽章で渾身のピッツィカートを聴かせてくれたコントラバスのトップの方にはブラヴォーです。また、これは後日のNHKの放送(サントリーホールのですが)のときもネットで話題になっていましたが、ティンパニ奏者のPaul Philbertさん、この人は相当良い味出していましたね。身体の動きのキレといい、テクニックの高さといい、何よりその圧倒的な存在感といい、異彩を放っていました。つい彼の動きを目で追ってしまいます。
ヒラリー・ハーンのブラコンもパワフルな演奏でした。もうね、ドレスが裂けるんじゃないかってくらい踏ん張っていて、確か妊娠中だそうですが、お腹の子は大丈夫なのかなと心配になるくらい、気合十分な演奏。男らしいなあと感嘆の溜息が出ます。男らしいというか、もはやおっさんみたいでしたね。まあ、ブラコンはそのくらいの堂々たる態度じゃないと聴いていても楽しくないですし、良いんじゃないでしょうか。ブラームスはともあれ、フィンランディアとシベ2、アンコールに悲しきワルツまで聴けてシベリウス定番三昧。大満足です。サロネンを聴きに来た甲斐があるというものです。
サントリーホールのシべ5も好評だったようで、僕も後日の放送を見ましたが、これを生で聴けた人は本当にラッキーですね。こんなシベリウスを聴いてしまったら、しばらく他のシベリウスは聴けないんじゃないでしょうか。サロネンはシカゴ響とのシベリウスの録音もラジオで聴きましたが、それもとっても良かったですし、フィル管とのシベリウスも本当に素晴らしかったのですが、どうもシベリウス以上に、彼に合う音楽があるよなあというのも正直な感想です。理知的でクリアーな響きを作り、瞬間、音楽は強烈な熱を帯びる。サロネンの作曲した作品の中にも、そのような雰囲気がふさわしいものがあります。彼はインタビューで「作曲と指揮は別」というようなことを語っていますが(ジャパン・アーツさんのサロネンのインタビューはこちらから)、やはり近似性を感じますし、そんな音の出し方は、ルトスワフスキやメシアンなどの音楽がとても似合うのではないかと思います。まあ、僕のシベリウスの好みがサージョンなので、それと比較するとそんな感じかなあという、あくまで個人的な好みの話ですが。
「クラシック音楽の美しさとは、過去から受け継がれた傑作と呼ばれる作品が、その国家的な特色があたかも媒介変数として作用するかのように、さらに広い世界ですべての人たちにとっての傑作へと変貌・発展していくこと。その過程が、本当に美しいのです」とサロネンも語っています。シベリウスの交響曲は地域性の高さとともに、それを越えた普遍的な魅力のある音楽です。フィンランディアも、シベリウスの2番も、やはり曲が良いいからたくさんの名演が生まれるのですね。正直、フィンランディアとシベ2が好きだからこの公演を選んだ(あとは嫁さんの誕生日が近いから)と言うと、シベリウスにちょっと詳しいだけの人には、無知で安易なやつだなあとか、まるで「好きな食べ物はカレーとハンバーグです!」と子どもが言っているかのように聞こえるかもしれません。それでもやはり交響曲第2番は名曲です。食傷なんて知りません。もちろん、5番も良い曲ですよ。しかし、2番もいい。声を大にして言いたい。
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都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more