シャンバダール指揮ベルリン交響楽団 来日公演

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ベルリン響はベルリン響でも、ザンデルリンクで有名なあのベルリン響ではなく(そちらは今はベルリン・コンツェルトハウス管ですね)、旧西側のベルリン響だそうです。どんなオケなんでしょうか。超鉄板の名曲を引っさげて、日本全国忙しく飛び回って公演するそうで、なんというバイタリティだろうと驚いております。なるほど騙されて(言い方悪いですね笑)聴きに来る人もいるでしょうから興行的にも旨そうですし、地方にはなかなか外来オケは来ないですから、曲目も含めて初心者向けに良さそうですし、なるほどなあと思いながら、聴きに来た次第です。ちなみにこの2日前に福岡公演、この翌日に岡山公演だそうです。すごい(笑)


【シャンバダール指揮ベルリン交響楽団 来日公演】
(2016年7月15日、サントリーホール)
エルガー:「愛のあいさつ」
シューベルト:交響曲 第7番 ロ短調 「未完成」
シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調
(ピアノ:外山啓介)
アンコール シューマン:トロイメライ
ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調 「新世界より」
アンコール ワーグナー:ローエングリン前奏曲
指揮:リオール・シャンバダール


一言で言えば、聴けて良かったです。貴重な体験をし、勉強になりました。まあ、20世紀的な演奏の伝統を引き継いでいるというか、非常に心のこもった演奏というか、うーん、演奏を語るとしたら、このくらいの褒め方が限界ですね。音楽はテクニックじゃなくてハートですから。もちろんその辺のアマオケや学生オケよりは上手いと思いますよ。ただ在京のプロオケの方がまだ上手いんじゃないでしょうかね。ミスの多さ、ピッチの悪さ、縦の揃わなさ、何よりあの大編成でサントリーホールで、信じられないくらい響かない。わざとやってるんじゃないかと思うくらい、むしろそうだと信じたい。愛のあいさつと未完成は、穏やかな曲調のせいでしょうか、静かな曲ではお客さんもそれほど盛り上がらず。しかしシューマンは盛り上がっていましたね。つい先日ロマノフスキーのシューマンを聴いて非常に感動していたので、それに比べると感動もペラペラに薄いですが、演奏自体はもったりと濃厚にやって、聴衆は満足していたんじゃないでしょうか。外山さんについては、まず僕は身長の高さに驚きました(笑)。いやベルリン響の人たちも背が高いんですがそれに負けずとデカイ。それはともかく、やはり高身長イケメンがピアノ弾くとかっこいいですよ。会場は喝采でした。しかしまあ、この程度の演奏であればアマオケがプロのソリスト呼んで演奏会すれば聴けますね。大きな音でバーン!とやればブラボー!と言う優しい客層です。だから、新世界よりはみんな満足してたんじゃないでしょうか。一番大きい音がなる曲ですので。


何とか良い所を探そう探そうと努めて聴いていました。時々音がひとつにまとまると綺麗な瞬間もあります。ローエングリンなんかも、弦楽が美しい瞬間もありました。美しくない時間も豊富にありましたが。それにしては会場は大きな拍手に包まれ、なるほど、いかに天下のサントリーホールといえども、僕が普段行くようなコンサートとは客層があまりに違っていたのですね。「生のオーケストラなんて聴く機会がないけど、ベルリンのオーケストラなのね、聞いてみたいわ、チケットも安いし!」という方々で溢れていたとしたら納得できます。調べればこの旧西側のベルリン響、2004年にベルリン市から財政援助を打ち切られて、潰れそうだったんだそうですよ。演奏だって、ベルリン・フィルとは比べ物にならないですし、ザンデルリンクが鍛え上げた旧東側のベルリン響(現ベルリン・コンツェルトハウス管)とだって勝負にならないでしょう。彼らの演奏から音楽への愛は伝わりますよ。でも愛だけじゃやっていけないんです。オーケストラをやるのだってお金が要るんです。集客をしてチケットを売り捌き、利益を出さなければならない。そこで求めたいものが、ジャパンマネーってやつです! ベルリンという名前さえあれば、それほど詳しくない人がホイホイやって来る。いわゆるド定番の名曲を引っさげて、歴史と伝統のベルリンを振りかざし、チケット代を安めに設定して、クラシック音楽はあまり詳しくないけど好きだというライトなファン層を狙い撃ち! いいじゃないですか、Win-Winですよ。そんなに上手くなくても(念のため言いますが、もちろんその辺のアマオケよりだいぶ上手いですよ、念のため)、日本ツアーをやれば聴衆は大喜びしてくれる。奏者たちも気持ちよく弾ける。地方公演もたくさんやれば、普段オーケストラが来ない地域では嬉しいですよ、ベルリンから来るんですよ、天下のベルリンから。歓迎するに決まってます。ポスターを見ても何一つ嘘なんて書いてないです。歴史のあるベルリンのオーケストラが超名曲を演奏する、「ドイツ名門オーケストラで聴く究極の名曲集」とは、見事なキャッチコピーです。確かに創立50周年は名門でしょうし、演奏はともかく曲自体は究極の名曲に違いありません。


オーケストラの生き残り戦術を見た、そういう感じですね。良い体験でした。まあ一度は聴いておくのも良いもんです。ベルリン響より下手なオケだって数多あります。指揮のシャンバダールさんは日本語で可愛らしくアンコールを紹介し、最後は「オヤスミナサイ」と挨拶していました。日本への愛の挨拶ってやつですよ。客は入るし優しいし、彼らにとって日本人は神様でしょうね。薄利多売かもしれませんが、このベルリンのオーケストラを応援したい人は一度聴きに行かれてはいかがでしょうか。毎年のように来日していますし、地方も周ります。僕も毎年、心の中で応援することにしましょう。

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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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