ハイティンク指揮ロンドン交響楽団 来日公演

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Bernard Haitink: The Symphony Edition


ベルナルト・ハイティンク指揮 ロンドン交響楽団の来日公演に行って来ました。3月9日、サントリーホールにて。妻の誕生日プレゼント兼、僕の趣味ということで(笑) プログラムは以下の通り。


ブリテン: オペラ「ピーター・グライムズ」から 4つの海の間奏曲
モーツァルト: ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K.453(ピアノ:マリア・ジョアン・ピリス)
ベートーヴェン: 交響曲第7番 イ長調 op.92
アンコール メンデルスゾーン:劇音楽「真夏の夜の夢」からスケルツォ


英国クラシックが大好きな僕にとって、ロンドン響がブリテンをやってくれるというだけでもう心躍ります。今年はブリテン・イヤーなので特に取り上げてくれたんでしょうが、本場のブリテンの演奏を聴ける良い機会ですね。素晴らしい。ブリテンの音楽も含め、英国のクラシック音楽がもっとポピュラーになることを願ってやみません。


今年の2月に行ったN響の定期は、バーンスタインのザルツブルク・デビューのライブと同じプログラムで、バーンスタイン好きの僕にとっては非常に興味深いものだったのですが、なんとこのロンドン響のプログラムもまた、バーンスタインに縁あるものです。バーンスタイン指揮ボストン交響楽団による、ダングルウッド音楽祭でのライブは、ブリテンの4つの海の間奏曲とベートーヴェンの7番というプログラムでした。1990年、バーンスタインの亡くなる2か月前のライブです。ベートーヴェンの途中で腕が止まってしまうという場面もあり、楽章間で咳き込むなどしながらも、最後の力を振り絞ったものすごい熱演になっています。このライブ録音もCDになっており、下で紹介しているものです。これも僕の愛聴盤の一つです。


こういう録音があるので、御年84才になられる老巨匠ハイティンクが来日するということは、嬉しい半面、ちょっと不安な予感もしていました。余計なお世話かもしれませんがね……。まあ、僕の大好きな指揮者ギュンター・ヴァントも、高齢で体力に不安があるにもかかわらず来日したこともありましたが(某トンデモ音楽評論家がドイツに来日反対広告を出したのは有名な逸話ですね)、最後の演奏会にならないでもらいたいものだなあ、なんて頭の片隅では思っていました。


そんな不安は演奏が始まればどこかに行ってしまうもので、何しろハイティンクは存在感を消すのが上手いですし、ロンドン響の上手さには流石としか言いようがありませんね。期待していたブリテンも、繊細な表現と迫力ある音圧をどちらも楽しませてくれました。こういう経験は得がたいものですね。この音楽的な意味での“英国らしさ”の魅力は、ちょっと言葉では言い表せないものです。部分的に木管が暴走しそうで、ハイティンクとコンマスがぐぐっと眼力を送っていた瞬間がありましたが、今日は木管はその後大活躍だったのでノーカンということで。打楽器が上手くて僕はホクホクでした。シンバルも綺麗だったなあ。


そして何より良かったのはピレシュです。圧巻ですね。ピアノは勿論ヤマハ。これがまた良かった。おそらく、多くの日本人にとってピレシュの弾くヤマハのフルコンほど、耳に優しく響くピアノの音色は無いだろう、って思ってしまう程、美しく調和のあるモーツァルトでした。一部のアンチヤマハ野郎共は、ヤマハのピアノなんて……と嘲笑するのかもしれませんが、ヤマハにスタインウェイの音が出せないのと同様に、スタインウェイには出せない、ヤマハ独特の良さがあるというものです。そして、それが最も生きるのはモーツァルトではないでしょうか。緩徐楽章や弱音での、響きの豊かさよりも温かみが優先されるような、ヤマハの音。絢爛豪華な音が求められる音楽には向かないことも多いかもしれませんが、モーツァルトのコンチェルトには最適でしたね。ベートーヴェンのコンチェルトも別プロであったようですが、そちらはどうだったのでしょうか。ベートーヴェンよりもモーツァルトにこそ相応しいとは思うのですが。


ベートーヴェンも文句なしに素晴らしかった! 冒頭から有無を言わさぬこの風格。パワーもありますね。力強くもあり、また音の美しさも保たれている、こういうのを本当の上手いオーケストラというのでしょうね。2楽章のテンポ設定が気になっていましたが、テンポはやや速めで堂々たる演奏。ハイティンクは終始オケの裏に隠れでもするような、いらぬあざとさは微塵も感じない。それでいて、音楽の感動を着実に構成していく。ロンドン響の良さというものを100%包み隠さず見せてくれる。素敵な指揮者ですね。アンサンブルも乱れないし、木管も本当に綺麗。これは聴けて良かったです。おまけで、とにかく全体的にティンパニが良かったですね。ブリテンは終曲で活躍しますし、ベートーヴェンでも見事な叩きっぷり。ハイティンクとピレシュに加えて、主席ティンパニストのニジェール・トーマスさんにブラヴォー!

最後の演奏会 最後の演奏会
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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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