広島交響楽団 サントリーホール公演「平和の夕べ」

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フォルクハルト・シュトイデ 広島交響楽団" 運命"


広島交響楽団がサントリーホールでアルゲリッチと共演するとのことで、聴きに行ってみることにしました。どちらも初めてです。前の方の良い席が取れたのもあり、期待大。


【広島交響楽団 サントリーホール公演「平和の夕べ」】
(2015年8月11日、サントリーホール)


ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」作品84 序曲
《朗読》レズニーコフ:「ホロコースト」から
ヒンデミット:交響曲「世界の調和」
《朗読》原民喜「鎮魂歌」から
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15(ピアノ:マルタ・アルゲリッチ)
アンコール
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番 第3楽章
指揮:秋山和慶
朗読:アニー・デュトワ、平野啓一郎


先日の前橋さんのヴァイオリン・リサイタルでも、皇后陛下がご台覧なさってましたが、なんとこのコンサートも、今度は天皇皇后両陛下が、後半の協奏曲をご鑑賞にいらっしゃいました。曲順変更のお知らせがあったのはそういう理由だったのでしょうね。実際、ヒンデミットの「世界の調和」よりも、アルゲリッチが弾くコンチェルトの方が、倍くらい大きな拍手が起こっていましたから、曲順変えて正解だったのかもしれません。

両陛下のご鑑賞がネットでもニュースになっていました。


広響、初めて聴きましたが、なかなか渋くて芯のある音なんですね。エグモントも堂々たる演奏で、すぐに引き込まれました。秋山先生の指揮姿のカッコいいったらなんの。見とれてしまいますね。


ヒンデミットの世界の調和、これも久しぶりに聴いた曲でしたが、やはりヒンデミットの音楽は真面目で好きです。もちろん冗談にあふれた曲があるのも知っていますが、プロコフィエフやプーランクのような、真面目な顔をしながらふざけるタイプとは違って、ふざけるときはふざけ、真面目なときはとことん真面目。そんな音楽な気がします。要は隙がない。平和を祈る音楽会で、ホロコーストをテーマにした重い内容の詩の朗読の後に演奏するのに実に相応しい曲だと感じました。演奏も、おそらくこの曲は、べらぼうに上手いオケがやって格好がつく曲だと思いますが、広響も気合い十分で、それこそ「真面目に、真剣に」演奏するスタイルがあったからこそ、この難曲から感動を生み出すことに成功したのだと思います。素晴らしい演奏でした。


ホロコーストと原爆を主題にした詩それぞれ一篇ずつの朗読を担当したのはアルゲリッチの娘であるアニー・デュトワと作家の平野啓一郎さん。はじめは平野さんの淡々とした朗読(というか普通に喋ってるだけのような読み)に、なぜここに朗読のプロを起用しなかったのかと残念な気持ちになりましたが、後半の原民喜の詩の方は、なかなか感情もこもっていて、アニーさんとの掛け合いもあり、異様な「嘆き」の雰囲気を醸し出していたように思います。ただ慣れただけかもしれないですが。まあ慣れでも構いませんが、そんな独特のコンサートの雰囲気から、アルゲリッチのコンチェルト。エグモントとピアノ協奏曲第1番は、1964年に行われた広響の第1回定期演奏会で取り上げられた曲とのことで、被爆70周年という節目の年に、サントリーホールでアルゲリッチとこの演目をやるということは、なかなかに象徴的であり、その場に居合わせることができた幸福も大きなものです。


アルゲリッチのピアノは、非常に柔らかなタッチで、鍵盤を見ると「このタッチで音が鳴るの?」と思ってしまうほどに軽さがありました。筋骨隆々としたベートーヴェンではなく、まるでモーツァルトのような、音楽する喜びが溢れているような、そんな演奏でしたね。アルゲリッチは「音楽には人を愛する事を育み、人を傷つける気持ちを萎えさせる力が宿っている」と語ります(この公演に対するアルゲリッチのメッセージはこちらから)。こうして音楽ができる、音楽が聴ける平和を大切にしなければならないですね。


広響自体は聴くのは初だったのですが、チェロのスタンツェライトさんは、3年前に室内楽の演奏会で見たことがあり、その演奏で一気に心惹かれたチェリストです(その演奏会の感想はこちらから)。今回もダンディーな演奏スタイルで格好良かったです。コンチェルトでは、ちょうど角度的にアルゲリッチ、秋山先生、スタンツェライトさんがバッチリ見えていました。終始険しい表情で弾いてたスタンツェライトさんが、終楽章のピアノが鳴った瞬間、フッと笑顔になったの見て、いやあ、心ときめきますね(笑)


アンコールにもう一度ベートーヴェンの終楽章。長い長いカーテンコールがあり、天皇皇后両陛下も、最後の最後まで拍手を送ってらっしゃいました。いい演奏会に来れて良かったです。

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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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