東京混声合唱団 特別演奏会 ~田中信昭と共に~ 東混オールスターズ

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この前日は少し早めの下の子の誕生日祝いでディズニーへ。疲れたので朝はゆっくり起きて、いざ東京芸術劇場。日曜のマチネに行くなんて、超久しぶり。基本的に子どもと過ごす時間を優先しているので、休日のコンサートも平日夜のコンサートも今はめったに行かないんですが、珍しく、子ども二人を連れて妻が出かけるという予定が数日前に入ったため、この日の昼に行けることになったのでした。ネマニャ来日の都響と迷ったんですが、そちらはもうチケット完売のため東混をチケ取り。その直後、都響の方で当日券出ますとアナウンスがあり「うーむ」と思ったんですが、合唱聴きたい欲も高まっていたのでこちらへ。いやー、行って正解、大満足でした。


【東京混声合唱団 特別演奏会 ~田中信昭と共に~ 東混オールスターズ】
(2023年9月3日、東京芸術劇場)
高谷光信指揮 P.チャイコフスキー:「ナポリの踊り」「鶯の歌」
山田茂指揮 GReeeeN(森山智宏編曲):キセキ
水戸博之指揮 E.ウィテカー:Sleep、The Star-Spangled Banner
山田和樹指揮 三善晃:静岡市立南部小学校校歌、神奈川県立希望ヶ丘高等学校校歌

松原千振指揮 L.マデトヤ:De Profundis Op.56
大谷研二指揮 G.マーラー:交響曲第5番より「Adagietto」
キハラ良尚指揮 A.ブルックナー:Ave Maria
        G.フィンジ: My spirit sang all day
        The Battle of Jericho (黒人霊歌)
田中信昭指揮 三善晃:生きる
 アンコール 田中信昭指揮 赤とんぼ

ピアノ:中嶋香、古海行子


一応断っておきますが、別に僕は合唱や声楽の経験者でもなく、また今回の演奏会に参加している人の関係者でも何でもない、ただ聴きに来ただけの音楽ファンです。まずは高谷さんの指揮でチャイコフスキー、想いを込めたと後で語っていた鶯の歌、第一声から美しかった……上手い合唱って凄いなあと。ナポリの踊りは首藤健太郎さんという方の編曲で、会場に来られていました。どんな風になるんだろうなと思っていましたが、思った以上にナポリの踊りそのまんまで面白かった。この曲は昔ピアノ連弾で弾いたのもあって特に好きなんです。スキャット(って言うんですか合唱でも)で、高音もテンポ変化も楽しかったですね。曲間にはヤマカズさんが出てきて指揮者たちとトーク。面白いお話たくさんでした。

山田茂さん指揮でGReeeeNのキセキ、別にGReeeeNにさほど興味はありませんが、この曲は良い曲ですよね(なにしろ高木さんも歌ってるからな!)。これも良いアレンジで、とても良かったです。原曲の良さが消えるような合唱編曲だったらつまらないし、でも単に編成を変えましたみたいなのでもつまらないし、どうなるんだろうと思っていたんですが。原曲らしいリズム感、テンポ感も生きつつ、ハーモニーもこだわっていたり、こういうアレンジでしか味わえない魅力もあって、大変感激しました。

さあ、いよいよ、僕がおそらく日本人現役指揮者の中で最も敬愛している水戸博之氏の指揮だ。過去の巨匠録音ならともかく、現役指揮者の中で特別推しとかはいないんですけど、水戸さんはね、マジで応援してます。水戸さんが出るからこの公演を選んだと言っても過言ではない、これとかこれ、読んでくださいね。曲はウィテカー、いいじゃん、合唱といえばウィテカーだよね。ヤマカズさんとのトークで、あまり東混はやらないけど水戸さんは好きだからと言っていたと思うんですが、そうなんですか。僕もウィテカー好きですよ、嬉しいなあ。合唱はもちろん、吹奏楽でゴーストトレインやったんですよ昔、ああ、クソ難しかったなあ。それはともかく、スリープ良かったです。めっちゃきれい。これぞ合唱。最後も美しかったなあ。続いて星条旗、なぜ星条旗なんだろうと思っていたら、東混で「アンセムプロジェクト」なるものをやっていて(やっていた?)、それにちなんでということなんですね。面白い響きのアレンジ、楽しい楽しい。

前半最後は山田和樹さん指揮で三善晃の校歌2つ、前半の方は宗左近の詩、今年はヤマカズさん指揮による都響で三善の反戦三部作やって配信も含め話題になりましたが「詩篇」の詩も宗左近ということで、作詞作曲のコンビの最初の曲を探して、この校歌に行き着いたそうです。後半の神奈川県立希望ヶ丘高等学校校歌はヤマカズさんの母校だそうで、終わった後に「うちの校歌が日本一!」だかなんか言ってて面白かった。三善晃作曲の校歌、面白いですね。ちゃんと三善晃だなーって感じするもんね。校歌プロジェクトやろうと息巻いてらっしゃいました。そしたらぜひ、僕の母校の中学の校歌もお願いしますよ、中田喜直先生の作曲で、非常に美しいメロディなんです。やっぱね、中田喜直先生っすよ、マジで、小中高の中で中学の校歌が圧倒的にきれいでしたね。ということでヤマカズさん、ぜひお声掛けください!


演奏会前半は皆さん私服というかカジュアルな衣装でしたが、後半は正装。松原千振さん指揮でマデトヤの深き淵より、男声合唱。これ以外は混声だったので、こういうのも聴けて嬉しい。いつも行けないんですが、北欧とかの合唱団の来日、聴きたいんだよなあ。続いて大谷研二さん指揮でマーラーのアダージェット、なんて美しいんでしょう。まあきれいな曲になるだろうことは予想できていたものの、こんな編曲があるとは、全く知りませんでした。家に帰ってから配信を探して聴きました、多分これですよね、リヒャルトの夕映えに(4つの最後の歌)と同じ詩だと大谷さん仰っていましたよね。マーラーのアダージェットってどうやって振るの?とヤマカズさんに聞いて笑いが起こっていました。いやいや、素晴らしい演奏でした。

Van Gogh in Me
Various Artists


キハラ良尚さん指揮はブルックナー、フィンジ、スピリチュアル。トークで「この企画は皆さんバラバラなので、自分の中でバラバラに組みました」と言っていて笑ってしまいましたが、実は言うほどバラバラでもないですよね(笑) この演奏会は終始ソプラノを酷使する会になっていましたが、ここでも素晴らしいソプラノの高音、堪能しました。

最後は田中信昭先生、95歳、渾身の三善晃「生きる」、これは感動しない訳がないわ。一言一言、一音一音の重み、宿るもの、届くもの、凄まじかった。きっと歌っている方々も特別な思いで歌ってらっしゃるんでしょうし、たまたまですがその空間にいられたこと、本当に嬉しく思いますね。

あまり合唱界隈の方は見てない方もいると思いますが、いわゆるクラシック音楽界隈では、小澤征爾さん88歳が松本のフェスティバルで来日したジョン・ウィリアムズからお祝いされている写真が上がっていて、車椅子で痩せこけた小澤さんが舞台上に出てファンが総立ちとのことで、それについてネット上ではああだこうだ物申されていたんですけど……いつまで舞台上がるんだとか、振れないなら引退しろとか、いや商売もあるんだとか、巨匠使って金儲けしてるやつがどうこうとか、老体に鞭打って晩節を汚してとか、何だかんだと。確かに何年か前は小澤が振る振ると言ってドタキャン、みたいな詐欺まがいの公演もあって、それは興行の仕方としてはいけないだろと僕も思ったし、早く引退した方がいいという声も多々見かけました。まあ、引き際が肝心なのか、生涯現役が良いのか、そんなの僕は知りませんけれど、今回の田中信昭さんみたいなこういう指揮や演奏を聴くと、やっぱり何か音楽の真髄のようなものに触れられると思うんですよね。そんなものは無い、老いた音楽家が出せるものなんてフェイクだと、そう思う人にはそうなんでしょうけど、音楽にも色んな次元や、色んな世界がありますからね。まあまあ、素人の感想ですので、絶対に正しいことを言っているという自信がある訳ではないですが、ともかく、今回の東混の演奏会では良い音楽を聴いたなあと満足した次第です。

三善晃:混声合唱と管弦楽のための「詩篇」[初演](1979 小林研一郎指揮)/レクィエム[初演](1971 岩城宏之指揮)三善晃 (作曲)

日本の合唱名曲セレクション20東京混声合唱団 (アーティスト, 演奏)


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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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