【序文】
このブログは基本的にはクラシック音楽について語るブログだが、どうしても記しておきたいと思うに至ったものについては、ここに記録して残しておこう。つまり、アニメ「アイカツスターズ!」の音楽はそれほどに素晴らしい音楽であることは保証したい。ポップミュージックの進化の歴史の最先端は常にアニソンなのだ。なお、前提として、僕はクラシック音楽オタクではあるがアニソンオタクでもないし、アニメオタクでもないと思っている。前作である無印のアイカツについてはそれほど詳しくないし、データカードダスもやったことはない。しかしこんなに1つのアニメにハマったのはローゼンメイデン(2004-)以来かもしれない。自分でもびっくりしている。あ、ネタバレ注意。
TVアニメ/データカードダス『アイカツスターズ!』挿入歌シングル 2 ナツコレ
01 8月のマリーナ
歌:かな from AIKATSU☆STARS!
作詞:只野菜摘 作曲:石濱 翔(MONACA) 編曲:田中秀和(MONACA)
02 Summer Tears Diary
歌:みほ・かな from AIKATSU☆STARS!
作詞:こだまさおり 作曲・編曲:ミト
03 トキメキララン☆
歌:せな・みき from AIKATSU☆STARS!
yura 作曲・編曲:藤末 樹
本領発揮である。楽曲のクオリティの高さに驚きを禁じ得ない。特に1曲めと2曲めはシリーズの白眉と言える。こんな曲を提示されたら、ちょっと落ちるしかないですね。逆に言えばすごくもったいない。女児向けアニメを見る僕のような残念な視聴者層にしかこの曲が届かないなんて……そんなことも思いつつ、アニソンはやはりクオリティは高いのにニッチな人たちしか聞かないというギャップがあってこと成立するのではないかとも思う。クオリティが高いからって世に広く知られるわけではないし、世に知られていてもクオリティの低いものは多いし、しかたあるまいよ。ジャケットはゆず様とあこにゃん、夏らしい。
8月のマリーナ
非常によく作り込まれていて、作詞者・作編曲者のアニソンへのアルチザンを感じる。あらゆる要素に意味があり無駄がない。ポップスに篤くない僕の例で恐縮だがアニソン業界ではryoさんや、アニソン以外で有名所だと椎名林檎など、才能があるが故にそれを前面に押し出し過ぎたり詰め込み過ぎたりして食傷気味になってしまうというのが僕はあまり好まないのだが、飽和寸前のギリギリ良いところまで詰めました、という感じ。繰り返すがあらゆる要素に意味があり無駄がないのだ。イントロのハミング、奥田民生風のスネアドラムが高揚感を出し、ブラスの旋律が華々しく夏を告げ、ハミングはパパパのスキャットに変わり、フレーズ終わりにハンドクラップ3発、Aメロ入りの前にティンバレスによるフィルイン……もう開始数秒でどれだけ夏らしさを詰め込んでいるのか、心から驚嘆するばかり。BメロはPPPHにサザンやTUBE風のカスタネットと決して定番を外さない。サビで再びイントロのドラムパターン、うーん、すごい。ブレイクの決めもやり過ぎず程よい。ここでキメキメ過ぎたら台無しになる。そんな風にしてはいけない、どんなに小技を持っていても出し過ぎではいけないのだと、よくわかっている。2番Aメロでのうねるベースラインにクローズのリム、あざといがそこが良い。必要なものを必要なところで必要な分量だけ入れる。素晴らしい。歌詞にも触れよう。2番Aメロの歌詞「ほんものの小麦色 まるで真珠貝からうまれたよう はじめから長い時間 灼いたりしちゃだめ 真っ赤になる」はここ数年では最も衝撃を受けた歌詞として挙げて良いと思っている。音選びも良い。ビブラスラップやウィンドチャイムなどパーカッションもさり気なく効果的に用いられている。Cメロからギターソロ、大サビ前のダイナミクス落とし(落とした部分が歌詞の内容とも完璧にマッチしている)からの転調サビ、完璧な流れに舌を巻くのみ。曲の終わりにSEで入るほんの一瞬の鳥の声と波の音、芸が細かい。いやに細かいところばかり注目して熱く語ってしまったが、個人的には天才ゆず様(歌唱担当かな)が歌っているということだけで細かいことなんてすべて吹っ飛ぶほどの魅力になるのだ、アニソンとはそういうものだと思う。
Summer Tears Diary
8月のマリーナと双璧をなす、シリーズ屈指の超名曲のひとつと言えよう。この曲は冒頭が命、印象的な3音にハートを鷲掴みされる。トライアングル系の金物の響きに一音ずつアクセントを感じる「キラリ」の歌詞、ピアノのシンプルなリズムの伴奏に、ベースが高音で飛び込んでイントロを脱する、かっこいい。Aメロも凝ったベースラインに耳が行く。実際のところ、終始ベースメインの曲だなあと思う。Bメロに入る前2小節はユニゾンでEADGと上昇音型を奏でるのだが、それがメランコリックな雰囲気を醸し出すのはもちろん、ゴリゴリ開放音で上がっていくのを考慮してもこの曲のバンドの主役はベースである。バンドの主役はベースだが、正直この曲は歌詞の良さと、夜空たん(歌唱担当みほ)と真昼ちゃん(歌唱担当かな)のデュエットの意義深さが勝る。憧れる・憧れられる存在でありライバル同士でもある姉妹の、なかなか出せない本心や互いへの思い、愛情が、リムスキー=コルサコフのシェエラザード顔負けの実にメランコリックでロマンチックな曲調で歌われる。「オトナになれば 時間も距離もカンタンに越えられるのに きっとそれには間に合わないの なんて…、のみ込むオモイが痛い」素晴らしい歌詞だ。ああ、いじらしい。思春期の少女たちの姉妹愛たるや。この2人は作中でも実力者であり、しかもちゃんと歌唱担当が歌が上手で(重要である)、それがまたこの曲を名曲たらしめているし、8月のマリーナが陰陽で言えば陽の方のサマーソングであり、それにきちんとコントラストある陰の方の夏の歌を設える完璧なプロデュース、どちらもハイクオリティで甲乙つけがたいほど良い曲、僕はただただ天を仰ぐのみである。
トキメキララン☆
上記2曲がキレキレの傑作だとしたら、ちょうどいい口直しのような、よくある子供向けアニメソング。本編では主人公たちが劇中劇を演じた際にテーマソングとして用いられた。ジャズワルツが基礎で心地よいウォーキングベースとやや激し目スネアのドラムの上にアコーディオンが特徴的に鳴る。間奏のピアノとジャズオルガンのソロも至極真っ当。歌詞も子どもらしく、未来への夢あふれた音楽である。特記したいのは歌がゆめちゃん(歌唱担当せな)とあこにゃん(歌唱担当みき)という、アイカツスターズの中でもクセの強い2人が歌っているということで、時折入る可愛らしい合いの手なんかはとても良いのだが、歌そのものはなかなか、色んな面で耳に訴えるものがある。しかしゆめちゃんは、ローラと一緒に歌うときよりは実力差が目立たないというか、どちらかと言えばあこにゃんの方がゆめちゃんよりもさらにクセのある節回しなので、曲のファンタジックな趣味とも相まって、これはこれで良きものである。今後ゆめ、ローラ、真昼、あこが話の中心となり、オープニング曲もそのメンツで歌うことになるのだが、クセ系のゆめあこ、まともに上手い真昼ローラと、バランス良い編成になる。この曲はクセ系攻め。そういうのばかりだと辛いが、たまになら大歓迎。
アイカツスターズ!のCDについて語る その1(2017年10月18日)
アイカツスターズ!のCDについて語る その2(2017年10月19日)
アイカツスターズ!のCDについて語る その3(2018年1月23日)
アイカツスターズ!のCDについて語る その4(2018年1月24日)
アイカツスターズ!のCDについて語る その5(2018年3月1日)
アイカツスターズ!のCDについて語る その6(2018年4月2日)
アイカツスターズ!のCDについて語る その7(2018年4月10日)
アイカツスターズ!のCDについて語る その8(2018年4月10日)
アイカツスターズ!のCDについて語る その9(2018年4月12日)
アイカツスターズ!のCDについて語る その10(2018年4月14日)
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都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more