フルートのさまざまなカタチ~歴史とスタイル~

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シランクス~フルート名曲集


前日は珍しい雪の日でしたが、当日は快晴。少し道路に雪が残っていても、新潟生まれにはこのくらいどうってことありません。徒歩で会場へ。荒川の河川敷は雪化粧です。犬が喜び駆け回り、子どもはそり遊び、雪だるまさんが何体も何体も鎮座しておりました(笑)


ザルツブルク音楽院講師で、カメラータ・ザルツブルクでフルートを吹いている佐藤智子さんと、日本フルート協会理事で、レコード芸術でも執筆している西村祐さんが講師の講演で、講演のつもりで行ったのですが、解説付きのフルート演奏会といった感じでした。無料で演奏会が聴けるのだから、良い企画ですねぇ。


【フルートのさまざまなカタチ~歴史とスタイル~】(2014年2月9日、学びピア21講堂)
テレマン/バスなしフルートのための12のファンタジーより、5番、7番
W.F.バッハ/2本のフルートのための6つのソナタより、1番
モーツァルト/2本のフルートのための「魔笛」より
ドンジョン/8つのサロン・エチュードより、エレジー
武満徹/2本のフルートのための「マスク」より、コンティニュ
J.S.バッハ/コラール「われ汝に感謝す、愛しまつわる主よ」
グノー(ストーナー編)/9つの管楽器のための小交響曲より、第2楽章
フルート:佐藤智子、西村祐
フルート・アンサンブル:セレーノ・フルートオーケストラ


後半のバッハとグノーは、西村さんの主宰するアマチュアフルートオーケストラが登場し、アルト、バス、コントラバスフルートも含めた10名程のアンサンブルでした。


かけつけ1曲ということで、テレマンのファンタジーをフラウト・トラヴェルソによる演奏で。佐藤さんは古楽器専門ではないので、難しい難しいと言いながらやっていました(笑) 来場者には、資料としてこの曲の初版譜、クイケン校訂の原典版、ランパル校訂版の楽譜のコピーが配られ、フラウト・トラヴェルソの演奏の後に、コーカスウッド製の木管フルートで原典版を、そしてモダン楽器でランパル校訂版を、それぞれ演奏していました。バロック演奏の常識から大きく外れたランパル校訂版を取り上げ、こんな有り得ないスラーを付けちゃった楽譜を出版できたのも、時代と巨匠ならではですね、という笑えるお話を紹介。古楽器研究は日進月歩で、ついこの間も、フランスの手回しオルガンの音楽が発見されて、演奏の常識が覆るかも、というニュースを佐藤さんがお話ししていました。


W.F.バッハ、J.S.バッハの長男に当たる作曲家ですが、こちらの曲はモダン楽器と、銀のボディに木の頭部管を付けたもののデュオで演奏。演奏前に、2楽章のカノンでは、佐藤さんの即興を含めて西村さんが頑張って全部真似して追っかけますと解説をしてからの演奏。西村さんは相当頑張っていたようでした(笑) モーツァルトはモダン楽器のデュオで数曲抜粋、最後の曲では佐藤さんがピッコロに持ち替え。魔笛初演から1年足らずで出版された(つまりモーツァルトの死の翌年)、全17曲の魔笛アレンジ作品だそうですが、これも演奏前に、モーツァルトはフルートが嫌いだったという話を紹介していました。フルートは音程が悪くてハモらないから嫌いだということをモーツァルトは手紙に書いているそうです。そこで、この作品の中から1曲を取り上げ、わざと悪い音程でデュオ演奏。これには笑いが起こっていましたね。その後のちゃんとした魔笛は素晴らしかったですよ。


ドンジョンはベーム式という少し古いフルート1本で演奏。古いフルートは円錐形だということを解説して(リコーダーも円錐形ですね)、W.F.バッハの曲も再びこのフルート2本でやっていました。扱い難い楽器のようで苦戦しておられましたが、音色や雰囲気が全く異なりますね。最後は武満の若い頃の「マスク」という曲で、現代音楽も悪くないでしょ?と。


それからは、西村さん指揮でフルート・オーケストラとともに。バッハのコラールもグノーも、佐藤さんがコントラバスフルートに初挑戦するという謎の企画でしたが、佐藤さん本人は楽しんで吹いていたようです(笑) バッハとグノーの間に、フォーレのパヴァーヌを、アルト、バス、コントラバスだけで、もっさり演奏していました。こういう音域のアンサンブルは、僕は好みなので、面白かったですね。


質疑応答では循環呼吸の話が出ました。オーレル・ニコレが循環呼吸でバッハの曲をやった録音があるが、それはそれで逆に聴いてて息が詰まる、なんてことを西村さんが言っていました。まあ、なんだかんだで盛り上がっていたのは、西村さんが桐朋出で、渦中の作曲家の先輩だったという話や、若干の桐朋内輪話などでしたが、演奏と解説自体はとても楽しめましたし、何より無料ですし、満足です。

シランクス~フルート名曲集 シランクス~フルート名曲集
ランパル(ジャン=ピエール),ドビュッシー,バッハ,ヘンデル,モーツァルト,クルムフォルツ,プーランク,フォーレ,ラスキーヌ(リリー),ラクロワ(ロベール=ベイロン)

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“フルートのさまざまなカタチ~歴史とスタイル~” への2件の返信

  1. 当日はお足元の悪い中おいで下さってありがとうございました。楽しいレビュー、とても嬉しかったです。

    • 西村様

      コメントありがとうございます。
      フルートオーケストラはなかなか聴く機会がないので、楽しませていただきました。
      また機会があれば聴かせていただきたいと思います。

      funapee

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