バルトーク:弦楽四重奏曲第5番

バルトーク 弦楽四重奏曲第5番 Sz.102


なかなかバルトークの音楽の良さというのはわからない。
というのは、何も考えないで聴くとちっとも面白くないし、何か考えながら聴いてもちっとも面白くないからだ。
それに、こんな短い文章でバルトーク先生の魅力を伝えることはできそうにない。
まああまり急がず、少しずつその魅力を伝えるように努力してみよう。
弦楽四重奏曲は「ベートーヴェン以来の偉業」と言われるように、バルトークの重要な功績の1つである。
第5番は1934年8月から9月にかけて、ほぼ1ヶ月の間で作られた。
3楽章を中心として1,5楽章、2,4楽章の対応というアーチ型関係であり、3楽章ではブルガリアの民族舞曲のリズムが用いられている。
第5番は、バルトークの弦楽四重奏のなかでは、まだ聴きやすい方だと思う。
と言っても実際そんなに聴きやすさに差はないし、3番も4番も6番も好きなんだが。
バルトークの生きた時代は、まさに伝統的なクラシック音楽と所謂現代音楽のちょうど中間というか、前衛的手法が現れだしたような頃である。
この弦楽四重奏曲も、クラシックか現代音楽かと言われると、簡単には答えられない。
クラシック音楽でいう「普通にいい旋律」かというと決してそうではないし、むしろ「意味がわからない」のはもっともだ。
しかしどういう訳か、ふとした瞬間に、聴く者の心の琴線というか、敏感なところに触れてくるような、そういう音楽である。
特に僕は5番の3楽章、5楽章で、体が腹の底から疼くような感覚を覚えた。


バルトークは、自身の研究した民族音楽、そのリズム・イディオムの抽出、ドミナントの効果、数学的・神秘思想的な要素、それらの融合を目指した作曲家だと僕は思っている。
そのどれかに特化したような作品、例えば「ルーマニア民族舞曲」や「中国の不思議な役人」も名曲だと思うし、その分魅力は語りやすい。
だが、そういった曲の魅力ばかり雄弁に語るのは、ちょっと浅はかに思えて仕方ないのだ。
そういう意味で弦楽四重奏曲第5番からは、バルトークの目指した新しいクラシック音楽の形を感じる。
僕らがいくら考えても及ばない程に考え尽くされた彼の音楽を聴くには、考えることも考えないことも求められていないようだ。

バルトーク:弦楽四重奏曲第5番 バルトーク:弦楽四重奏曲第5番
アルバン・ベルク四重奏団,バルトーク

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