バルトーク ヴァイオリン協奏曲第2番:協奏曲の伝統

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バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番、ラプソディ第1番

バルトーク ヴァイオリン協奏曲 第2番 Sz.112


バルトークは学問分野の功績も大きい。民俗音楽学の祖として、東ヨーロッパの民俗音楽を収集・分析。彼の作品は、その民族音楽研究が大いに活かされているといえる。
ヴァイオリン協奏曲第2番は、長い間彼の唯一のヴァイオリン協奏曲だと思われてきた作品だ。後に第1番が発見され改名されたが、第2番はやはり名曲として名高い。
ヴェルブンコシュ(verbunkos)というハンガリーの民族舞曲が基になっている。
そういった民族色もあり、調性感が強かったり弱かったり、かなり忙しく色が変わる曲で、あまり飽きることはないだろう。
また、黄金比率の使用がわかりやすい曲でもある。明らかな盛り上がりどころに注意すると、黄金比率が巧みに用いられていることに気づくのは容易だろう。
ただ、この曲をつまらないと感じてしまう人もいるとは思う。それは、一見理解しがたい不可解な旋律や和声やリズムがみちみちているからだ。
そこがバルトークの魅力なのだが、合わない人は合わない。
ということで、一応こうやって紹介してみて、少しでもこの曲の魅力を広めようとしているのだ。
ハンガリー人ヴァイオリニスト、ゾルターン・セーケイの依頼によって書かれ、彼に献呈されている。
セーケイの依頼にバルトークは巨大な変奏曲形式を提案したが、セーケイは伝統的な3楽章形式の協奏曲を所望した。
2楽章を変奏曲形式にして折り合いを付けているが、この曲はやはり歴とした伝統的協奏曲なのである。


バルトークの第2協奏曲は、バルトークの中でも割と人気のある曲であり、たくさんの録音がある。そして、民族風を生かした土着な・粗野な雰囲気を強く表現するもの、歌を美しく表現するもの、鋭さや緊張感をフルに活かしたものなど、その方向性は様々だ。
僕のような素人でも、普通に考えると、この曲はやはり、ベートーヴェンやメンデルスゾーンではないのだから、先鋭的な演奏をするのが、演奏効果としてはベストであるような気がっする。そういう意味での名演は、パールマンやシャハムかもしれない。
バルトークの意向と異なり、セーケイは本格的な3楽章の伝統的協奏曲スタイルを望んだが、やはりこれは伝統的なヴァイオリン協奏曲として音楽を提示して欲しいものだ。
というのも、いわゆるキワモノ作曲家としてバルトークは見られるべきではないと思うからであり、それは弦楽四重奏などでもそうだ。
もちろん、緊張感と鋭さが光るバルトークは、特にバルトークの熱心なファンにとっては最高にシビレるものだろう。確かに、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルの「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」などは本当にシビレる!
話は少し変わるが、この曲の作曲された時代とバルトークの作風の変化というものを見てみよう。
初期はブラームスやR・シュトラウスの影響が強く、後期ロマン派的な作風。ハンガリーへの意識は多少あったが、それが強くなったのは、コダーイとともにハンガリーの民族音楽を研究しだしてから。それと同時に、民謡のイディオム抽出や、ドビュッシー、ストラヴィンスキー、新ウィーン楽派らの影響も受け始める。
そういったバルトーク独自の語法が確立し出し、非常に荒々しい音楽を作るようになる一方、新古典的な傾向も見られるようになる。和声も明快になり、古典と前衛的技法の融和を得た名曲を生み出すようになるのだ。後期はさらに旋律を重視するようになり、一層古典寄りになっていく。
ヴァイオリン協奏曲第2番が作曲された時代は、バルトークが自身の民謡的イディオムを完全に消化し巧みに操るようになりつつも、バロックや古典の影響を受け、新古典的なスタイルを打ち出していった時代だ。バルトークの弦楽四重奏曲がベートーヴェン以来の快挙と言われるように、やはりこの協奏曲も、ベトコン・メンコンの系譜に位置する作品なのだ。
その証拠に、非常に美しい歌が、この作品には散りばめられている。うかうかしていると聞き逃してしまうかもしれないが、鋭い緊張感の中にも(もちろんそうでないところにも)、聴き惚れるような歌がある。キョンファやズッカーマンなどの演奏は、そこもよく聞かせてくれます。
僕の好きなシェリングの演奏は、冒頭で語った通り古典的で、妙に奇をてらって無茶苦茶にパワフルなこともせず、また当然あやふやな解釈やあやふやな演奏になる部分もなく、全体を見渡して一貫した解釈を見せる演奏。となれば自然と、歌の美しさも他に引けを取らないものとなる。
狂信的なバルトーク・ファンの間では、もしかすると、ちょっと生ぬるくて箸にも棒にもかからない演奏とされてしまうかもしれない。
しかしシェリングのような演奏を聴くと、この曲の、クラシック音楽史に歴然と輝くヴァイオリン協奏曲としての価値を真の意味で見出すことができるだろう。

バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番、ラプソディ第1番 バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番、ラプソディ第1番
シェリング(ヘンリック),バルトーク,ハイティンク(ベルナルト),アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

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