Glazunov;Stenka Razin/Sea

グラズノフ 交響詩「ステンカ・ラージン」作品13


ロシア音楽の持つ濃厚な味わいという点では、グラズノフに勝る作曲家はいないかもしれない。
チャイコフスキーもボロディンも良いが、もっとコッテコテの味付けでロシア音楽を楽しみたいなら、やはりグラズノフだ。
彼の作品のうち全部が全部そうだとは言わないが、まあ大体そういう感じで間違いはない。
この曲も、弱冠20歳で作曲されたにもかかわらず、濃厚なグラズノフ節がはっきりと表出している。
「ステンカ・ラージン」とは、17世紀に活躍したヴォルガ河下流のコサックの首領、ステンカ・ラージンその人のことだ。
当時の体制に対し、農奴を率いて反乱を起こし大暴れしたステンカ・ラージンは、ロシアでは親しみ(あるいは蔑みか?)を抱かれる英雄的存在である。
グラズノフはリストを敬愛していたのだが、この作品は彼の影響を多大に受けたものになっている。
そういう理由か、グラズノフの作品で明確に「交響詩」と謳っているのはこの作品だけだ。
リストの影響と彼の題材選択を考えれば、この作品が持っている顔は“音楽の小劇場”だろう。


冒頭はヴォルガの舟歌を引用し、壮大にロケーションを整えたら、ステンカ・ラージンの出撃である。
激しい動きでラージン一味の活躍が描かれるが、そこでも決して「枠」をはみ出さないところが何ともグラズノフらしい確固たる音楽。
ラージンにつき従うペルシア姫をモチーフにした美しい旋律をクラリネットが奏でる部分は、濃厚でありながら神秘的な、実に魅力的な部分だ。
荒れるヴォルガ河の描写もさることながら、シンバルの炸裂とともにペルシア姫が河へ突き落される様子はなんとも迫力がある。
なんと言っても最後が聴きどころ。力強い合奏が描き出すのは、捨て身の全軍総攻撃と言ったところ。
突き進む力を生むのはいつだって強烈なロシアン・ブラスの仕事だ。全身全霊のファンファーレをくらえ。
リストの影響は確かに見られるが、それでも、20歳とは思えないほど耽美かつ堅実な音楽を作る人である。
まあ第1交響曲も15歳とは思えない完成度を誇るし、グラズノフの才能は若かりし頃から満開に開花しているのだろう。
この曲が湛えるのは爆発的な魅力と艶やかな魅力、さらに有無を言わさぬ快進撃の魅力とでも言おうか。
グラズノフが描き出す、暴れん坊の英雄が活躍する一幕は、魅力迫力十二分だ。

Glazunov;Stenka Razin/Sea Glazunov;Stenka Razin/Sea
Alexander Glazunov,Neeme Jarvi,Royal Scottish National Orchestra

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