グリンカ 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲:疾走するクラシック代表

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グリンカ 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲


グリンカの作品を知る人は、まずこの曲に魅了された人、という人がほとんどだろう。
華やかで軽やかで、本当に「序曲」とはオープニングを飾るためのものだ、としみじみ思ってしまう。
1842年、彼の第2作目のオペラとなる「ルスランとリュドミラ」は、ロシア語によるオペラの先駆けとなったものだ。
グリンカは、ロシア国民楽派の作曲家としてもパイオニア的存在で、ロシア五人組(ボロディン、キュイ、バラキレフ、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ)にも大きな影響を与えた作曲家である。


ロシア音楽の醍醐味の1つとして、疾走する演奏、爆走する演奏が挙げられる。
バンドの演奏技術を顕示する目的もあるし、何より観客はその凄まじさに圧倒され、異常な高揚感に溢れることになる。
超高速演奏が楽曲の解釈として良い悪い、ということではなく、クラシック音楽界の(特にロシアにおける)伝統文化と言った方がいいかもしれない。
ソビエト時代、冷戦の影響もあり、良い楽器もほとんど入ってこなかったような楽団であったが、演奏家たちの高い技術のおかげで多くの名演が残っているのである。
ゲルギエフ指揮の剣の舞、スヴェトラーノフ指揮の祝典序曲、フェドセーエフ指揮のレズギンカなど、多くのロシア人指揮者とロシアバンドが、「この人たち、頭大丈夫なの?」と言いたくなるほどの、爆演を残している。
そんな疾走するクラシック音楽の代表として、ルスランとリュドミラは僕の中のトップに君臨するのだ。
もともと弦楽の早い・軽いパッセージが心地よい曲である。
それが超特急で奏でられれば、快いことこの上ない。
歌劇の序曲として、内容的にも構成的にも、もちろん素晴らしい曲だが、ロシアンクラシックの中で見れば、これはもはや疾走するための曲に思えてしまう。
誰がなんと言おうと、ムラヴィンスキー・レニングラードフィルの演奏が1番だ。
案外サヴァリッシュ・バイエルン国立歌劇場なんかが、疾走感・聴かせ方共に美しい演奏である。
逆に速くやらない方がおかしく感じるもので、クナッパーツブッシュ・オデオン大響の異常な遅さはかえって奇演である。


少し残念なのは、グリンカのイメージが「ルスランとリュドミラ」の快演連発のせいで、やや歪められていることか。
ピアノ曲のノクターンとか、切なく甘美な曲もあるのだが。

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レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団,グリンカ,ムソルグスキー,リャードフ,グラズノフ,ショスタコーヴィチ,ムラビンスキー(エフゲニ)

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