Great Recordings Of The Century - Beethoven: Triple Concerto; Brahms: Double Concerto / Oistrakh, Rostropovich, Richter

ブラームス ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102


かなり変わった編成の協奏曲である。ブラームスはちょうどこの曲を作曲する前に、バロック音楽について勉強をしたらしい。バロックでは「合奏協奏曲」というジャンルがあるが、複数のソロ楽器と伴奏という組み合わせは、そこから着想を得たようである。
しかしまあ、ヴァイオリンもチェロも楽器としてはかなり有名どころであり、またブラームスも一流作曲家であるので、演奏機会も録音も多い。
特殊な構成ながらも、ブラームスの魅力である骨格のしっかりした骨太で重厚な音楽を楽しむことができる。交響曲ほど演奏時間も長くないが、交響曲さながらの力強く迫力あるオーケストラ音楽が展開される。
それでいて、ヴァイオリンとチェロのそれぞれの技を楽しめるという、通常の協奏曲の2倍も3倍も美味しい曲なのだ。ちなみにベートーヴェンには三重協奏曲という曲があり、こっちの方がより美味しいじゃないかと言われたらまあそれまでなのだが。
さんざん褒めてから言うのも難だが、中途半端な感じもしなくはない。ピアノ協奏曲ならひとまずピアノに注目するだろうし、交響曲と思って聴くにはヴァイオリンやチェロが目立つ。
もちろん、この曲の魅力として先に挙げた要素を、耳と頭をフルに活動させて聴くのが音楽に対する礼儀には違いない。そうやって全身全霊をかけて音楽に対するという姿勢が、特にベートーヴェンやブラームスの「魂の音楽」には求められると言えるだろう。
と、そんなことはわかっていても、やはり取っ掛かりは欲しいもの。どこか一つでもいいので、興味を持てるところから、そこに注意して聴き始めるのがいいと思う。木を見てから森を見ようが逆だろうがなんでもいいのだ。
最初はヴァイオリンに注目するもよし、自分の好きなソリスト、指揮者、オーケストラからこの曲に入るのもよし、何か小さなきっかけで良いので、そこからブラームスの重厚で深い音楽へ切り込んで行ってもらいたい。
ちなみに僕がこの曲を好きになったきっかけは、3楽章のメロディの格好良さからだった。そこ以外はむしろほとんど興味がなかったのだが、聴き込めば聴き込むほど、この作品の素晴らしさを実感している。


ブラームスがこの曲に着手したのは、1887年の夏。スイスのトゥーン湖畔にあるホーフシュテッターにて。このアルペンの湖畔の素晴らしいロケーションが創作意欲を掻き立てないわけがない。ヴァイオリン・ソナタやチェロ・ソナタもこの時に作られた。
交響曲第4番を作り、第5番を作ろうとしていたブラームスは、その着想をこの協奏曲に転用しなければならない事態に陥っていた。交響曲をやめて協奏曲にした理由は、長年の親友であるヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムとの不仲である。若くして作曲家・演奏家として名声を得ていたヨアヒムは、ブラームスの兄貴分のような存在。ブラームスをシューマン夫妻のもとに預けたのも彼である。
そんなヨアヒムは、自身の妻アマーリエに対して常軌を逸した嫉妬心を抱いていた。ヨアヒムはアマーリエの浮気を疑い、結局二人は離婚する。ブラームスはアマーリエの潔白を擁護し、慰めの手紙を書いたのだが、それが法廷に出たものだからヨアヒムは激怒。ブラームスまでも俺を裏切ったのかと思いこんでさあ大変。
ヨアヒムは変わらずブラームスの作った曲を演奏し続けたが、二人の間はぎくしゃくしたままだった。そこでブラームスは、ヨアヒムと仲直りするために、名ヴァイオリニストである彼の助言を得ながら協奏曲を作ろうと試みたのだ。それがこの二重協奏曲である。
なぜチェロが出てきたのか理由は定かではないが、まあヴァイオリン協奏曲の作曲にはすでに満足していたのかもしれない。
結局初演はヨアヒムのソロで行い(チェロはブラームスの友人ハウスマン)、そのときはヨアヒムとブラームスは久しぶりに色々と入念に打ち合わせをしていたらしい。クララ・シューマンはそれをみて驚いたとのことだ。後にこれはクララをして「和解の協奏曲」だったと言わしめたが、あくまで和解であり、その後彼らの仲が以前のような親友に戻ることはなかった。
そんな「和解」という言葉と、ヴァイオリンとチェロという2つの楽器がソロを担当するという事情と相まって、ヴァイオリンとチェロが寄り添うような友情の調べを奏でる……などという解釈もあるが、あまりふさわしいとは思えない。
2つの楽器の噛み合い方は重要な問題だが、どうにも調和が求められるようにも思えない。むしろ両ソロ楽器が個性を十分に発揮した演奏の方が、聴いていて楽しい。せっかく二重の協奏曲なのに、なんだか変わった曲である。
初演でも賛否両論だった。それが今やブラームスの代表曲のひとつとなっている。やはりこれは、初めて聴くとちょっとわかりにくいのかもしれない。しかし、長年かけて愛されてきたように、何度も聴けば、その変わった魅力の虜になるだろう。

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