バルトルッチ ヴァイオリン・ソナタ ト長調:起きないから、奇跡って言うんですよ

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バルトルッチ ヴァイオリン・ソナタ ト長調

勝手に「GoTo室内楽キャンペーン」と称して、室内で室内楽を聴いている。もっとも、別にこんなキャンペーンなんてやらなくても、年がら年中聴いているのだが……なんとなく、屋外ではなくて室内で、というイメージで室内楽にしてみた。お外で演奏しても室内楽。山はあっても山梨県みたいな。
ということで、Twitterの方で色々と紹介しており、今回はその中でも珍しい曲、ドメニコ・バルトルッチ(1917-2013)の室内楽作品集より、ヴァイオリン・ソナタを取り上げよう。
バルトルッチはイタリアの作曲家で、カトリックの枢機卿でもある。当然教会音楽には篤く、パレストリーナ研究の権威でもあり、システィーナ礼拝堂合唱団の音楽監督も務めている。作曲家として名を聴かない人も、そちらの方で見かけた人はいるかもしれない。
1985年、教皇ヨハネ・パウロ2世により挙行されたミサでは、サン・ピエトロ大聖堂にて、バルトルッチの指揮でシスティーナ礼拝堂合唱団が聖歌を演奏している。このときはカラヤン指揮ウィーン・フィルがモーツァルトの戴冠式ミサをやっており、キャスリーン・バトルなど豪華歌手との演奏で、こちらの方に目が行きがちだけども、バルトルッチ指揮の聖歌もちゃんとCDに収録されている。
日本にも同合唱団を率いて1991年に訪れ、サントリーホールで公演したそうだ。


そういう枢機卿としての地位や教会の合唱団の指揮者というイメージで、この室内楽作品集を聴くと、かなり驚くと思う。それらとはまた別の顔を持った音楽である。バルトルッチを枢機卿に指名したのは、先代の教皇ベネディクト16世で、彼もまたピアノが好きでモーツァルトとかベートーヴェンをよく弾いていたそうだが、聖職者としての顔と、音楽好きなひとりの人間としての顔、やはりそういうものがあるもんなんだな、なんて思ってしまう。
実際にバルトルッチが枢機卿としてどんな活動をしたのかは僕もよく知らないが、Bookletによると、教義や儀式の伝統を時代に合わせて変えるべきという考え方には反対の立場を取っていたようだ。つまるところ、礼拝などでグレゴリオ聖歌なりパレストリーナのポリフォニーなり、そうした音楽が無くなっていくことを危惧していたのだろう。

そうした宗教音楽とはまた別に、バルトルッチが世俗音楽に価値を置いていたのもまた事実だ。人々に広く歌われ、聴かれ続けてきた「カノン」という形式の音楽、彼は室内楽作品において「カノン」に大衆性を見出していたのであろうことは、ヴァイオリン・ソナタやピアノ三重奏曲を聴けばすぐにわかる。フランクのヴァイオリン・ソナタで見られるようなカノン要素、心地よい掛け合いが聴ける。
ヴァイオリン・ソナタは4楽章構成で、聖チェチーリア音楽院の仲間であるヴァイオリニスト、リッカルド・ブレンゴーラに捧げられている。
第1楽章Allegro moderat、ヘンデル顔負けの、澄み渡る美しい主題。この第一主題の美しさに惹かれた。ヴァイオリンとピアノは様々な形で丁寧な追いかけっこ、カノン的な展開を見せる。まるで即興でメロディをいじっているかのような自由さも感じる。ときに爆発するロマンと情熱、そこがいい。
第2楽章Andante sostenuto、繊細で、シンプルな要素で構成されている緩徐楽章、それだけにヴァイオリンとピアノの絡み方の妙をじっくり味わえる。後半はバッハの無伴奏でも聴いているかのような連続音と跳躍。
第3楽章Vivo e vigoroso、風変わりなスケルツォ楽章、程よく不気味でグロテスクだが、どこか可愛げもある。テンポも大胆に動くし、不協和音の響きも活かされている。
第4楽章Allegro con brio、明るく爽やか。そしてモーツァルトのような流麗さもある。どこかハリウッドっぽささえある。広がりを感じる旋律、そして恋するようにロマンティックな中間部、いやー、こういうの、いいね!
旋律も調性もわかりやすく伝統的な構造だが、その中で意外と細かいところが複雑で、ちょっとしたエクステンションが興味深かったりする。今のところ、バルトルッチの室内楽作品を聴ける唯一の音盤が、このBrillant盤である。また新録音が増えることを期待しよう。

Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック・ファンです。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、つまりひたすら聴くだけ。演奏することにはほぼ興味・情熱はありませんが、それでもときどきピアノを弾いたり、バンドでドラムを叩いたりシンセサイザーを演奏したり、あるいは作曲・編曲をしたりします。more

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