ショスタコーヴィチ 祝典序曲:作曲家の才能

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ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、祝典序曲

ショスタコーヴィチ 祝典序曲 作品96


1954年の第37回ロシア革命記念日のために作られた曲。
ショスタコーヴィチの曲はどうも暗くて重くてどーんという感じが多いのだが、この時期の曲は割とそうでもない。
特にこの曲は、ショスタコーヴィチらしからぬ、簡潔・明朗なメロディーの曲だ。
ファンファーレから始まり、実に明るく、つい興奮してしまう曲である。
クラリネットの流れるような旋律は大変美しい。
この曲で何より取り上げたいことは、ショスタコーヴィチがこの曲にかけた時間はほんの数日であり、それでいて今日まで残る名曲に仕上がっていることである。


式典数日前に作曲の依頼を受けたショスタコーヴィチは、大急ぎでこの曲を作った訳だが、大急ぎとは思えないほど芸が細かい。
3連のファンファーレの流れ(E→Fis→Gis)は、後のホルン、チェロによる主題を、ファンファーレ直後の低音(E→D→Cis→H→D→Fis)はPrestのクラリネットの旋律を予感させる。
クラリネットの旋律の後半部がホルン・チェロの主題の前半部に、またその逆に前半部は後半部に、それぞれ結びついている。
転調もまたしかり。ファンファーレのA-DurからEs-Durの転調は、後半でも、またファンファーレ再現部でも用いられている。
またある旋律を裏返しにしたオブリガードが出てきたりと、技に限りはない。
と、まあ挙げていけばきりがないのだが、とても数日で作ったとは思えない緻密な構造である。
単純明快な曲調の裏には恐ろしく計算された構造があったのだ。
こういったバランスのとれた構造こそ、作曲家の技量である。
ショスタコーヴィチが単に社会派だとか現代曲風だとかいう評価でないのは、彼が短時間でこういう曲を作れるからだろう。
神が音楽を与え、無意識で究極の構造を作れるモーツァルトは真の天才である、というようなことを以前書いたが、人間の作る音楽として、こういったことが短時間でもぱっと出来るというのは、やはり才能である。
ああ、エルガーよりこっちを先に書くんだったなあ。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、祝典序曲 ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、祝典序曲
スヴェトラーノフ(エフゲニ),ショスタコーヴィチ,ロシア国立交響楽団

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