バッハ フランス組曲:バロック表現の自由度

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バッハ:フランス組曲(全曲)

バッハ フランス組曲 BWV812-817


クラヴィコードのための曲を、J.S.バッハ、C.P.E.バッハは数多く残している。
鍵盤楽器の歴史を辿ったとき、多くのバロック作品はピアノで演奏され、チェンバロがそれに次ぐが、なかなか当時のクラヴィコードの音色で奏でられるバロック音楽は聴かない。
フランス組曲も、「平均律クラヴィーア曲集」「イギリス組曲」など多くのクラヴィコードのための作品の1つだ。
組曲が全部で6曲あり、それら全てにアルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグという基本形があり、ジーグの前にエール、メヌエット、ガヴォット、ブーレ、アングレーズ、ルール、ポロネーズなどのインテルメッツォが2、3曲挿入される構成をとる。
「フランス組曲」はバッハが名付けたものではなく、お上品で甘美な、いわば「フランス風」な曲調ゆえにそう呼ばれる。
全て素晴らしいので、何番が良いとかどうとか言うのは憚られるし、「何番の何々が良い」などと言うのはパルティータの楽しみ方ではないような気がする。
がしかし、「思い入れ」ということを言えば、断然1番、それも1番のアルマンドだ。
「複音楽の勉強」という意味で弾いていたバッハ作品ではなく、初めて「音楽を楽しむ」という意味で触れたバロックがフランス組曲で、つまり一番最初に触れたのは1番のアルマンドなのである。


バロック音楽の表現というと、制限の多さから、バロック以降と比べるとどうしても広がりに欠けるように思っていた。
しかし、今ではどうもそうでもないように思う。
まず、形式美の中には、形式(例えばフーガ、組曲)であるからこそ生まれる特有の「流れ」や「拍動」などがあるということ、これらの要素が単純な音楽要素を越えて表現を豊かにする。
また、教会の音楽ではなく、人間の精神に問いかける音楽を、バッハは我々に示しているということ。
(余談だが、妻であるアンナ・マグダレーナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集に、フランス組曲の1番から5番が含まれている)
さらに、ピアノ・チェンバロ・ハープシコード・クラヴィコードといった手段を、現代の音楽家は持っているということ。
グールドのピアノ、レオンハルトのチェンバロ、これらを聴けば、ロマン派ピアノ曲の表現の違いなどより一層深遠な差があるように思える。
こういった表現の自由度を鑑みても、フランス組曲は、その難易度からは想像もつかない、懐の深い作品だろう。


堅い話になってしまった。
こんなことを考えたりもするが、本当は「やっぱり5番のアルマンドが最高だなー!!」などと思ったりもするのだ。
それはそれでありだろう、「堅く」もあり「柔らかく」もあるのが音楽である。

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