ロッシーニ 歌劇「泥棒かささぎ」序曲:きっと残り続ける曲の1つ

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ロッシーニ:序曲集

ロッシーニ 歌劇「泥棒かささぎ」序曲


ロッシーニのオペラと言えば、やはり「ウィリアム・テル」と「セビリアの理髪師」が知名度、名曲としての存在感において抜群だが、僕は「泥棒かささぎ」や「絹のはしご」、「チェネレントラ」なんかも案外好きである。
高校の頃はよく聴いていたのだが、近頃はあまりロッシーニを聴かなくなっていた。
しかし某保険会社のCMで耳にして、「泥棒かささぎ」をCMに使うとはなかなかだなあ、と思ったのだ。
ロッシーニのオペラ序曲は、正に「ながら聴き」に丁度良い、などと言ったらお叱りを受けそうだが、事実その旋律の美しさは、意識して聴かなくとも、ごく自然に心に入ってくる、素直で快い旋律なのだ。
小太鼓のロールから始まり、朗らか、かつメランコリックな主題、鮮やかに移るソロ楽器。
終始活躍する軍楽風な小太鼓は気分を高めさせ、そして何とも爽快なロッシーニクレッシェンドも味わえる、非常に口当たりなめらかな曲である。
かの名作映画「時計じかけのオレンジ」で使われた曲であり、実に意義深い巧妙な選曲に思う。


歌劇の序曲はコンサートピースとして広く親しまれているが、それ故に、その音楽の真の良さ・魅力、その音楽の本当の意図するところ、というのは、非常に難しいものだ。
1817年作曲の歌劇「泥棒かささぎ」の全幕の日本初演は2008年、去年のことである。
歌劇の公演は滅多に無い上、テレビCMやらBGMやらと使われるのでは、「真に音楽的」にすることが難しいのも、仕方ないかもしれない。
例えば、「テル」なんて僕はもう残念な事に、小学校の頃の掃除の時間の曲という刷り込みがなされてしまっている。
こういう社会の状況を「クラシック音楽の崩壊」と呼ぶか、「クラシック音楽の進むべき未来」と考えるか、それは人それぞれではあるが。
村上春樹の小説「ねじまき鳥クロニクル」の第1部の副題に「泥棒かささぎ編」とある。
その冒頭は、アバド・ロンドン響の「泥棒かささぎ」を聴きながら主人公がスパゲティを茹でるシーンである。
そこで主人公はこの曲を「スパゲティーをゆでるにはまずうってつけの音楽」としている。
まったく、村上春樹の音楽の着眼点・センスはさすがと言ったところだ。
僕としては、こういう深い話に言及するのはやはり難しいのだけれど、こんな一素人がこれからのクラシック音楽を心配してもしょうがないし、名曲・名演は「過去に」僕が一生かけても聴き尽くせない程ある訳で。
この10分程の美しい音楽に耳を傾けながらスパゲティを茹でるのも、そう悪くはないなと思っている。
やれやれ、結局僕の言論はいつも同じ所に戻って来てしまうのか。

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