モーツァルト カノン「おれの尻を舐めろ」:芸術は勉強だ

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モーツァルト大全集 第23巻:歌曲、カノン全集(全79曲)

モーツァルト カノン「おれの尻を舐めろ」K.231 (382c)


少なくとも星空をバックに語る曲ではないだろうが、まああんまり堅い話ばかりでもつまらないだろうしね。
モーツァルトがこういうくだらないことが好きだというのはよく知られたところだし、時々この曲も雑学系の何かで取り上げられたりするので、まあ知名度はある。
男声6人のためのカノンで、男6人が「Leck mich im Arsch(おれの尻を舐めろ)」などと歌う、もう本当にどうしようもない曲なのだが、残念なことに(?)非常に美しい旋律の曲である。
いわゆる「お下品モーツァルト」の部類に属する曲は山ほどあり、それらの解釈・研究も多くなされている。
例えば、K.559 カノン「マルスとイオニア人になるのは難しい」の歌詞『Difficile lectu mihi Mars et jonicu difficile.(マルスの軍記を読むのは難しいし、イオニアの詩も難しい)』というものを、発音の悪い友人パイエルが歌うと、『Leck mich im Arsch』に聞こえる、というので大笑いし、続くK.559a カノン「おお愚かなるパイエルよ」の歌詞では『ああ、なんと愚かなパイエル、パイエルは愚か者…(中略)…急いでおれの尻にキスしろ。でないとお前の尻を塞ぐぞ』と言ったり、もう完全に内輪ネタの下ネタ。
こういう下品な歌詞で、家族や友人に親愛の情を示したり、からかって遊んだり、あるいは街や国を皮肉ったりしているのだ。
この「おれの尻を舐めろ」も、おそらくは仲の良い男たちと笑いながら歌って騒ぐための曲だろう。


この曲(あるいはこれらの曲)の歌詞はドイツ語で、ドイツ語を知らない人が聴けば、本当に普通のモーツァルトの声楽曲だ。
なんせ旋律が美しい。歌詞がこんな内容だとは思えない。
ただ聴くだけで美しい、感動できる曲はモーツァルトに限らずたくさんある。
このカノンも、多分それらに含まれる。
だがこの曲を聴いて、「お、これはモーツァルトかな?高貴な古典派の香りがするなぁ」などと言えば、ちょっと残念な感じになっちゃうだろう。
このブログでは、単に聴いて楽しむこととそれとは違うアプローチについて、どちらでも良いのだというようなことをよく言っているが、さすがにこの曲は…
まあ気になった方や残念な感じになりたくない方は、是非色々調べてみて頂きたい。
面白いことは間違いないし、それがクラシック愛好家にとっての「楽しい」勉強の時間なのだから。
それに、「お下品モーツァルト」についてきっと今後このブログで扱うことはないだろうし。
そして「モーツァルトの音楽は神が作ったもので~」という事に関する弁明は、後日たっぷりすることとしよう。

モーツァルト大全集 第23巻:歌曲、カノン全集(全79曲) モーツァルト大全集 第23巻:歌曲、カノン全集(全79曲)
オムニバス(クラシック),アーメリング(エリー),コンチェントゥス・ヴォカリス女声合唱団,コルス・ヴィエネンシス,コーイマンス(エリーザベト),ビルト(ペーター・ファン・デア),モーツァルト,バイエルン放送交響楽団員,ボールドウィン(ダルトン),ルーデマン(ベニー),シュテッフェンス(カールハインツ)

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