ショパン ワルツ集:小さな愛の舞曲

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ショパン:ワルツ集(全14曲)

ショパン ワルツ集


「珠玉の名曲」というのは本来こういうものを言うのだろう。
ショパンのピアノ・ワルツは17曲あるが、そこからいくつか抜粋して紹介する。
ショパンの舞曲というと、ワルツ、マズルカ、ポロネーズが有名であり、マズルカが女性的だとしたらポロネーズは男性的である。
ではワルツはというと、やはり舞踏会、つまり男女の社交場、出会いというのが一般的だろう。
もちろんショパンのワルツはウィンナ・ワルツと違い、実際に踊ることを想定されていない。
舞踏の情景であり、或いはワルツの形式を取った抒情詩である。


まずは作品18の「華麗なる大円舞曲」(第1番)。
ショパンがウィーンに滞在中の作品であり、題名の通り一番きらびやかで、少々仰々しい程に華麗である。
旋律は美しく人気もあるのだが、華麗さばかり目立って深みがないのは、ウィーンに免じて、あしからず。


作品34の「華麗なる円舞曲」は3曲ある。
34の1(第2番)は、作品18なんかに比べるとぐっと味わいが増す傑作である。
34の3(第4番)は俗に猫のワルツなどと呼ばれ、深みはないが、速いテンポで駆けめぐる旋律は天才のセンスが光る。
第11回ショパンコンクールでブーニンの弾くこの曲と英雄ポロネーズのライブ録音を初めて聴いたときは衝撃的だった。


「大円舞曲」作品42(第5番)は間違いなく傑作である。
2拍子と3拍子の重なる優雅な音楽に可憐な高音旋律、聴かせるうたあり技術あり、の非常に完成度の高いワルツである。
コーダの前で転調が続き、コーダそのものも華やかに終わる。非常に美しい曲だ。


作品64の1(第6番)は「小犬のワルツ」の名で有名な作品。
自分のしっぽを追いかけくるくる廻っている小犬の様子である。
あっという間に終わってしまう曲だが、だからこそ良いというもの。


「別れのワルツ」で知られる作品69の1(第9番)は、死後出版されたもので、最も甘美な作品だ。
ショパンが恋人のマリアと結婚し、幸せいっぱいの頃の曲だが、ショパンは彼女の両親から突如婚約破棄の手紙を受け取る。
悲しみのショパンはこの曲を思い出として、ずっと胸に秘めていたのだろう。


作品70の3(第13番)も実に甘美でいじらしいような魅力がある。
理想の女性に当てたラブソングのような作品で、中間部の左手の旋律は愛の言葉を囁きながら寄り添っていくようにも思える。
まったく、恋というのは音楽を魅力的にするものである。


ワルツは比較的演奏が容易なので、自分で弾いて楽しむことも出来るし、また録音も大変多くあり、鑑賞も非常に楽しめる。
自分の好みに一番合う作品を見つけるのも良いし、情感たっぷりに弾くピアニスト、淡々と弾くピアニスト、技巧派のピアニスト、と様々なテイストを味わうのも良い。
僕の崇敬するルービンシュタイン先生は、ものすごくしぶい。
あまりにもしぶくて吃驚するほどだが、枯れるような渋さに潜ませたうたごころは老巨匠ならではとも言える。
ちなみに僕の一番好きなワルツは、順番を付けるのは難しいのだが、第4番のような気がする。
傑作かどうか、美しいかどうかと、好きかどうかはまた別の話だ。

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ルービンシュタイン(アルトゥール),ショパン

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