モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調:ピアニストに、ぜひ

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モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲

モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調 K.423


モーツァルトのピアノ・ソナタを聴いたことがある人は多いと思うが、この二重奏はまさしく「弦楽版ピアノ・ソナタ」と呼ぶのに相応しい作品だ。
ピアノ・ソナタは、ヴァイオリン・ソナタやヴィオラ・ソナタのようなピアノと弦楽器という異なる楽器の組み合わせによるソナタではない分、統一感がある。
また、音域の広さもあり、ピアノ1つであっても弦楽器1本の無伴奏ソナタよりも幅が広い音楽が展開される。
と、まあこんな風に書くとヴァイオリン・ソナタや無伴奏ソナタが好きな人から怒られてしまいそうだが、別にそれらを卑下している訳ではなく、それらには勿論それら独特の魅力があるのであって、少し比較してみただけのこと。
統一感と幅の広さが楽しめる室内楽として、この二重奏は非常に優れた作品だと言えよう。
弦楽四重奏やブラス・バンドなどよりも小さい同族楽器同士の組み合わせであり、アンサンブルというよりもまるで一つの器楽であるかのような雰囲気だ。
ちなみにこの組み合わせの二重奏曲はK.423とK.424の2曲が存在し、どちらもミヒャエル・ハイドン(ヨーゼフ・ハイドンの弟)の仕事を助ける形で作られた。
ミヒャエルも音楽家であり、ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタを6曲依頼されていたのだが、4曲作った後、彼は病気で作曲が困難になってしまう。
ウィーンで結婚した後たまたまザルツブルクに帰っていたモーツァルトは、親しいミヒャエルのために残り2曲を引き受けたのである。
急遽代役を務めてこのクオリティなのだから、モーツァルトはやはり天才なのだ。


普通の3楽章のソナタで、それこそピアノで言う右手がヴァイオリン、左手がヴィオラ、という印象を受ける部分がほど多い。
そういったやや協奏曲チックな楽しみもあれば、室内楽的な楽しみ、二人の奏者の掛け合いを楽しめる部分もある。
ピアノ・ソナタのようだと言ったが、特に2楽章のアダージョで、弦楽ならではの息の長い旋律を味わうのを忘れてはいけない。
弦楽ならではの魅力と、二重奏だからこそ発揮される魅力と、まるで一人の音楽家が演奏しているかのような魅力、それらがこのヴァイオリンとヴィオラという最小の組み合わせだからこそ成り立っているのだ。
あまり録音が多い作品ではないのだが、絶妙なバランスで生かされている二重奏の典型例として挙げたい、それくらい素晴らしい作品だと思う。
さて、礼賛が終わったところで、ピアノというのは右手と左手と一人の人間が担当する訳で、いかにそれぞれ単独に頑張ろうとしても、2人の人間がやるようには行かないものだ。
しかし、もし時に一人の人間が両手をコントロールし、また別の時には二人の異なった人間が音楽をするようにピアノ・ソナタが弾けたらどうだろう。
まあ、人間には限度があるし、僕は出来ないから別に良いのだけれど、この二重奏を聴いていたらそんなことを少し考えてしまった。

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