フィールド ノクターン第12番:ピアノ小品の夜明け

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Nocturnes of John Field

フィールド ノクターン第12番:ピアノ小品の夜明け


ジョン・フィールドという作曲家は、18世紀終わりから19世紀はじめにかけて活躍したアイルランド出身の音楽家だ。
3月17日は「聖パトリックの祝日」であり、アイルランドにキリスト教を広めた聖人聖パトリックの命日である。アイルランドでは伝統的な祝日であり、イギリスから独立後はアイルランドの中でも大きな祝日として祝われている。
そこで、少し遅れたが、アイルランドの音楽家を取り上げたい。という気持ちは多くの音楽愛好家にとって同じであり、Gramophon誌がジョン・フィールドを取り上げているのを見て、あえてこの作曲家を選ぶのはなかなかの良いチョイスだと思い、真似することにした。
ジョン・フィールドは「ノクターンの創始者」として知られている。ショパンをはじめ、フィールド以降多くの作曲家がピアノ小品としてノクターンを書いているが、それにはフィールドのノクターンが影響していると言っても過言ではない。
たとえば、フィールドのノクターン第5番とショパンのノクターン第10番(作品32-2)や第16番(作品55-2)を聴いてみれば、すぐその類似性に気づくだろう。
全部で18曲あるフィールドのノクターンは、どれも美しい名曲であるが、知名度のほどはいまいち。
しかし、フィールドのノクターンは、聞いていて引っかかるようなものが一切なく、純粋な喜びと牧歌的な長閑さに満ちている、実に素晴らしい音楽である。
3~5分で終わる短い曲が多く、中には第17番のような大作もあるものの、どれを選んでも珠玉の名曲である。
僕はここでは第12番を選んだ。これは2分強のほんとうに短い曲だが、名作と名高い第4番などにも劣らず、美しいメロディーが魅力的な、僕の大好きな曲だ。


フィールド自身も素晴らしいピアニストであり、「彼の指は、まるで大粒の玉虫色の真珠の雨粒が広がるかのように鍵盤の上に落ちる」と評されるほどだ。
フィールドは11才の頃に家族と共にロンドンに移住し、作曲家でピアノの作り手でもあったクレメンティ(ソナチネでおなじみ)のもとで学んだ。
20才近くになると、フィールドはクレメンティと共にヨーロッパを回るようになり、ロシアのサンクトペテルブルクへ移住する。
クレメンティはサンクトペテルブルクを去るが、フィールドは留まり、演奏家、作曲家、教育者としての活動した。そのときの弟子には、あのグリンカもいる。
クレメンティはピアノの楽器的発展を支えた人物でもあるが、この時代のピアノの発展は目覚しく、フィールドは特にペダルの改善を上手く活かしたピアノ曲を生み出した。これにより、歌曲のような歌いまわしをする旋律が可能になり、伴奏も跳躍できる幅が広くなったことでよりいっそう深みのあるものになっている。
英国のドイツ人ピアニスト・音楽史家の大家エドワード・ダンロイターは、フィールドのノクターンを「あらゆる田園詩、エクログ、親密な詩の、純粋な可愛らしさや無類の優美さの、まさしく真髄」と評している。
ベートーヴェンと同時代だが、ロマン派の作曲家たちがこぞって参考にする理由もわかるピアノ曲。のどかで、純粋な美しさ。クラシック史上、ピアノ小品の新たな夜明けだ。
アイルランド音楽というと、すぐに浮かぶのは民族色豊かな音楽――ダニー・ボーイやリバーダンスなど、アイリッシュらしさ溢れる音楽なのだが、こういうクラシック音楽史上の重要な音楽家がいたことも忘れてはならない、と僕は少し自分に言い聞かせた。
色んな音楽を愛しているのだけれども、もっともっとクラシックを愛したいのだ。

Nocturnes of John Field Nocturnes of John Field
John Field,John O’Conor

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