プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 ト短調 作品16
ヴィレーンの音楽をプロコフィエフに似ていると言ったが、プロコフィエフのあっけらかんとした部分には確かに似ている。しかし、プロコフィエフはそのような擬古典的でモーツァルト的な趣きの音楽も残したが、もっともっとモダンで、一見するととっつきにくいような作品も残している。
今回紹介するのは、今年のラ・フォル・ジュルネでも取り上げられていた、ピアノ協奏曲第2番。この曲もなかなかのとっつきにくさだ。しかし、ラ・フォル・ジュルネで演奏が終わり、会場から出ようとしているときに他のお客さんの感想が漏れ聞こえたのだが、案外「よくわからないけど、結構面白かった」とか「意外とこういうの好き」というような感想があった。
そう、確かによくわからないような音楽だし、プロコフィエフにはマーチやロメジュリなど、面白くて非常に聴きやすい曲がたくさんある。それらとはまた別に面白さを感じるような作品なのである。
プロコフィエフは、左手のための協奏曲も含めて5曲のピアノ協奏曲を作っているが、第2番はというと、この中でもかなりとっつににくい曲だろう。1番は短い曲だし、3番は有名で聴きやすい。4番はあまりお目にかかれない左手の協奏曲。5番もなかなかマニアックではある。
2番の良いところは、とにかくピアノをがっつりと楽しめるという点だ。もちろん技巧的な面で息を呑むような凄みに感嘆するというのもあるし、また作曲者や演奏者の表現する感情の深さを楽しむというのもある。
なによりカデンツァが聞き所だ。一言で言えば「圧巻」。ピアニストとはこうも激しく感情を表現できるのか、と舌を巻く。
30分ほどの大作で、4楽章構成になっている。
とっつににくいと言っても、第1楽章のテーマはどことなくオリエンタルで、少しは親しみやすいかもしれない。そして即興のような長大なカデンツァ。
2楽章はスケルツォで、これぞプロコフィエフといった、やや皮肉めいた高速テンポの音楽。左右オクターブで進行するピアノもひたすら止まらずに動き続ける。
打楽器や管楽器を中心としたオーケストレーションの伴奏で重々しく始まる3楽章。ピアノはグリサンドで加わる。インテルメッツォということになっているが、これも律動的といえばそうだろう。タンバリンが入るが、これが意外と難しいところなので、打楽器ファンには聞き所のひとつ。
4楽章はフィナーレ、アレグロ・テンペストーソ。まさに嵐のごとく、2楽章以上に激しく動き回る。中間部は急に静的な音楽に。急にコーダに移ってびっくりするだろう。爆裂する音楽。最後の最後が一番格好良いもの。満足感は大きい。
ピアノをたっぷり聴いたという満足感、緊張や情感にひたされた満足感である。やや難解な音楽には違いないが、はじめて聴いた人でも、この感覚を得ることはできるはずだ。
この曲で表現されている感情は、負の方向のものだと思われる。この曲が作曲された当時は、ちょうどプロコフィエフの親友シュミットホフがピストル自殺した時期とも重なり、また彼に献じられている。直接的に彼に関わる音楽とは言えないものの、尋常ならざる感情はそこに所以すると見ても問題ないだろう。
ベクトルはマイナスかもしれないが、それ以上に、この曲の持つ感情のスカラーに着目したい。それはピアノでしか表現されなかったのであり、またピアノだけでは表現しえないものだったのだ。これぞピアノ協奏曲の存在意義だろう。満足感がひとしおなのも納得できるというものだ。
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都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more
まとめtyaiました【プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番:ピアノコンチェルトの満足感】
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