武満徹 映画音楽「夏の妹」:もうすぐ夏ですね

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武満徹 映画音楽「夏の妹」


日本を代表する作曲家と言えば、間違いなく武満徹であろう。このブログで初めて取り上げることになるが、やはり日本人として、彼の話をするのは畏れ多い。僕なんかが軽々しく扱っていいのだろうか……なんて思う。
武満に対する理解が自分自身にどこまであるのかよくわかっていないので、ここはひとつ、最初の武満に関する記事は、ぐっとくだけて、武満の芸術音楽ではなく、実用音楽の方を、さらさらさらーっと紹介して、武満音楽への導入としたい。
事実僕がそうであったように、武満の音楽は、音楽の教科書で「ノヴェンバー・ステップス」を知ることはあっても、それ以降、なかなか自ら進んで聴こうという気にならない人も多いだろう。
彼のコンサートピースは、現代音楽として世界最高峰のものであろう。しかし、それらは高度に現代芸術的すぎて、なかなかとっつきにくい。
そこで、今回はそんな武満の、とっても聴きやすい映画音楽を選んでみた。武満は多くの映画音楽を手がけているが、それらの中で、普段は使い慣れない楽器や音響的な技術などを実験・試行している。もし本格的に武満の芸術音楽に当たりたいならば、映画音楽からのアプローチだって意義深いだろう。
武満自身も映画好きであったようだ。また演劇やテレビ番組の音楽も多く作っている。
今回選んだものは、特に聴きやすく、また美しいと思われるもので、あくまで武満映画音楽の一側面でしかないが、日本人の心に共通して何か響くものがある、という作品ばかりだ。


『夏の妹』は1972年公開の、大島渚監督による作品。 あらすじを少し語ろう。
主人公素直子の許に一通の手紙が届く。大村鶴男という沖縄の青年からで、彼の父は死んだものだと思っていたが、最近、母から素直子の父が鶴男の父らしいと知らされたという。そして夏休みには沖縄へ遊びに来てほしい、と結んであった。
夏休み、素直子は彼女のピアノの家庭教師で、父が再婚しようとしている若い女性、小藤田桃子に、鶴男のことを打ちあけ、鶴男を探しに二人で沖縄へ。姉妹のように仲むつまじい女同志の船旅。
那覇、素直子は沖縄語を観光客に教えたり、ギターで流す一人の若い男と知り合う。彼は実は鶴男なのだが勿論お互いに気付かない。二人は親しさを増す一方、桃子はホテルに届いた鶴男から素直子宛の手紙を受取り、素直子に黙って、ひそかに鶴男に会う。鶴男は桃子を素直子と思い、また桃子は、鶴男に惹かれていき、人違いを教えることが出来なくなる。
鶴男は、素直子に兄を探して欲しいと頼まれることにより、妹だと思っていた女性が父であるかも知れない人の婚約者であることを知り、桃子を犯す。その現場を素直子が物陰から目撃。桃子のバカヤロー、ギターのバカヤロー、鶴男を探しもしないであんなことを……素直子の瞳には大粒の涙が光っていた。 とまあ、こんな感じ。
映画のクライマックスで流れるこの音楽は、素直子(スータン)のテーマとも言える。
豊かに膨らむフリューゲル・ホルンの音色が主旋律を奏で、後半ではサイケデリックなエレキ・サウンド。
スータンは鶴雄に「こうなったら絶対に本物の大村鶴男君を探します!」と言い放ち、青い海に落ちる。夕方、ハンモックで目覚める彼女。港で鶴男に「グルビサビラ(さよなら)」と別れを告げるシーンを貫き流れる、「夏の妹」のテーマ曲。美しい夏の空気。これも武満音楽の素晴らしさだ。

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“武満徹 映画音楽「夏の妹」:もうすぐ夏ですね” への1件の返信

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