マスカーニ 4手のピアノのためのシンフォニア ヘ長調:カヴァレリアの呪縛、の前に……

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Mascagni: Piano Works for 2 & 4 Hands


マスカーニ 4手のピアノのためのシンフォニア ヘ長調


カヴァレリア・ルスティカーナについて記事を書いたのが2008年なので、10年近く空けて書くことになる。僕もまさかここにマスカーニの、それもオペラでなくてピアノ作品について取り上げて書くことになるとは夢にも思わなかったが、ブログ更新頻度が激減している状況にもかかわらず、ぜひとも更新したい書きたい多くの人に知らせたい!と思わせるだけの名曲であることは保証できる。
ウィキペディアでもイタリアの「オペラ作曲家」と書かれてしまうピエトロ・マスカーニ(1863-1945)の、オペラ以外、もっと言えばカヴァレリア・ルスティカーナ以外はそうそう聴く機会もないが、僕の最近のイタリア音源発掘趣味を愉しんでいる最中に、たまたまこの曲に出会い、「え、あのマスカーニが、こんな素敵な曲を!?」と感激したのだ。別にマスカーニを馬鹿にしているわけでは決してありません……まだまだ出会っていない素晴らしい曲が世の中にはたくさんあるんだなあと素直に感動したのだ。


マスカーニの生地リヴォルノにて、1880年に作曲された。彼がまだ17才、ミラノ音楽院に入る前に、まだ地元のリヴォルノの音楽学校で学んでいた頃だ。この頃から精力的に作曲活動に取りかかり、「アヴェ・マリア」や小管弦楽のための「シンフォニア ハ短調」などを作っている。
今回取り上げるシンフォニアはイタリアでは“Prima Sinfonia in Fa Maggiore”と呼ばれているようだが、シンフォニアとしてはこちらは第2作目にあたる。ハ短調の小管弦楽のためのシンフォニアは1897年12月に演奏された記録があり、現在こちらの作品についての詳細は、僕のような素人が探しても見当たらない。もっとイタリア語に堪能だったらわかるのかもしれないが。
ヘ長調のシンフォニアは元々ピアノ連弾用に作られ、マスカーニの友人である音楽家ギウリオ・ペレグリーニに献呈されている。1881年、音楽学校で、ペレグリーニとマスカーニによる連弾で発表されたそうだ。そのすぐ後に、管弦楽版も演奏された。
後の作品である歌劇「仮面」にも使うつもりだったとのことだが、そんなこと言われてもマスカーニの「仮面」を聴いたことのある人がどれだけいるのか……。
アダージョ-アレグロ、ラルゲット、メヌエット、アレグロ・モルトの4楽章構成で、演奏時間はおよそ30分にのぼる。なかなかの大作である。


爽やかでシンプルで、とてもきれいな音楽で、陳腐な言葉しか出てこないのだけれど、まるでハイドンの古典を思わせるような音楽だ。
そしてやはり、ピアノ連弾でありながら、オーケストラを意識したフレージングを感じることができる。穏やかな序奏に続いて、刻みの伴奏に乗った純古典風の旋律からは、どことなくイタリアの歌が聞こえる。
大胆な和音の連続や華麗な指さばきで魅せる技巧的なパッセージ、連弾らしい派手な音響など、楽しみどころ満載の1楽章。
2楽章も、はじめはモーツァルト風の典雅な音楽かと思いきや、オペラ顔負けの感情の高ぶりポイントもあり、濃厚な節回しが続く。この辺がいかにもといったところ。
軽いメヌエット楽章を挟んで、堂々の終楽章。こちらも美メロに美メロの応酬である。ちょっとやり過ぎ感は否めないが、このくらい派手にやってくれるともはや何も言うことはない。口直しに挟まれるゆるやかな主題(どことなく「夏は来ぬ」に似ている)が美しい。


特に冒頭の序奏の美しさにやられてしまった。これは間違いなく、オーケストラよりもピアノの方が似合っている。シューベルトやシューマンのピアノ曲をも彷彿とさせる。素晴らしい冒頭なのでぜひ聴いていただきたい。
マスカーニはこの作品で地元の音楽学校で「ポンキエッリ賞」なる賞をもらい、その後現代に至るまで全く演奏されることはなかった。2000年にマッシミリアーノ・カルディ指揮ミラノ・クラシカ室内管で管弦楽版が、2005年にガブリエレ・バルドッチとロベルト・プロッセダによって4手版(ペレグリーニ家で所有していたもので原典版ではないらしい)が演奏された。こうして世に蘇るまでにどれほどの苦労があっただろう。
僕が聴いて感動したのはマルコ・ソッリーニとサルヴァトーレ・バルバターノのデュオによる、2013年8月のアルモニエ・デッラ・セーラのライブ録音である。このデュオは同年6月にマスカーニのオリジナル版で世界初演を録音しており、CDも出ている。
思えばマスカーニは、一発当てた後、その傑作を超えることのできかなった作曲家……その意味では、カヴァレリア・ルスティカーナを生み出す以前の作品ということで、何のプレッシャーもなく、意欲と野心をもって臨んだ初期の傑作と言える。そんな忘れられた傑作を残し伝えていくことは賞賛すべきことだ。

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Marco SolliniConcerto

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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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