シェーファー フルート、ヴィオラとハープのための三重奏曲:19世紀フランスの重み

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ェーファー フルート、ヴィオラとハープのための三重奏曲

もう少し早くシェーファーについて書こうと思っていたのだが、何の曲にするか決めきれず、ちょっと時間もあったので「ええいままよ」精神でこの曲にしてみた。あとドビュッシーの曲と間違えて検索してひっかかってブログ読んでくれる人もいるんじゃないかという淡い期待もある。ドビュッシーだと思った人、ごめんなさいね!
最近は「デュオ・カリスタ」というフルートとハープのデュオのアルバムで、マリーナ・ティボー(va)が加わったトリオの録音を聴いた。この2019年のアルバムには、ドビュッシーの
「牧神の午後への前奏曲」のフルートとハープ版という素敵な編曲の録音も入っているので、ドビュッシー好きな方はそれで勘弁してください。と言いつつ、下まで読んでもらえると嬉しい。
レーモンド・マリー・シェーファー(1933-)はカナダの作曲家で、サウンドスケープ理論の提唱者である。サウンドスケープについて書くと長くなりそうなので、ものすごく雑にまとめると「人がある文脈において認知した音の環境」、もっと一般的には「音の風景」「音環境」などと言われる。気になる方は調べてみてください。
そういう面白い考え方を持つ人の音楽はやはり面白いので、色々聴いているのだけど、実はかなり幅広いジャンルで曲を書いていて、それで何をブログで書こうか迷ってしまったのだ。日本人のシェーファー好きのほとんどは合唱から入るだろうし、僕もシェーファーは合唱の人だなんて初めは思っていたのだけど、オペラやオーケストラから室内楽まで数多くの作品があり、録音も結構な数がある。
ということで、ええいままよと室内楽にした。何しろ僕がTwitterで適当にやっているGoTo室内楽キャンペーンもだいぶ経ってきて、なんだか室内楽作品の紹介が自分の責務のような気がしてきたような、そうでもないような……。

僕が最初に聴いたのはトリオ・ヴェルレーヌによる録音で、2013,14年録音。このトリオらによる委嘱作品であり、2010年、オタワ国際室内楽音楽祭で初演された。
シェーファーの作風は、やはりサウンドスケープ理論と言い出すだけあって、ちょっと面食らうような独特の音響が魅力なものが多く、合唱作品の「ガムラン」や「ミニワンカ」などはその典型だし、室内楽なら弦楽四重奏曲集(特に初期)がそうだし、フルートの作品なら協奏曲もなかなか激しい音響で面白い。
しかしこのフルート、ヴィオラとハープのための三重奏曲は、どこかドビュッシーへのオマージュもあるのだろうか、穏やかというか伝統的というか(そもそもドビュッシーを伝統的と言っていいのか知らんが)、特殊奏法で変わった音を響かせるという方向性は見られない。
ただまあ、伝統的な和声にとらわれず「印象派」と呼ばれるようになったドビュッシーと、音が創り出す風景・環境という考え方を軸にしたシェーファーは、どこか通じるものがあるのかもしれない。だからこの編成で生まれる曲も、自然と似た雰囲気を持のだろうか。ドビュッシーのファンにも聴いてほしい曲だ。

3楽章構成で15分弱の演奏時間。音と音同士の関係が描き出す空間を楽しむことがメインになるだろうが、この曲はそれでも旋律を聴き取ることもできるし、モチーフの展開なども楽しめる。そこが面白いところだ。
1楽章Freely flowing、タイトルにあるように、自由に浮遊する音たち。いやいや、シェーファーならもっと自由に、どこまでも浮かんでいくような音楽だって書けるはずである。どうも、音環境としては19世紀フランスという時代の重みが音の浮遊を制限しているようだ。もちろん、いい意味でね。
2楽章Slowly, calmly、シェーファー自身も聴いて「賛美歌のようだ」と驚いてしまったという冒頭部分、この楽章は不思議と荘厳な雰囲気をも醸し出している。
3楽章Rhythmic、澄んだ音色だがリズムが浮き立つ、舞曲風の音楽。なぜかこういう楽章に限って、民謡のような、あるいは妙にセンチなメロディを感じちゃったりするから油断ならない。
シェーファーなんて聴いたことないというクラシック音楽ファンにも聴いてほしいが、「シェーファーって、あの変わった合唱の人でしょ?」という先入観をお持ちの合唱ファンにも、ぜひ一度聴いてほしい。逆に驚くかも。

Origins
Debussy / Duo Kalysta (アーティスト)


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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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