都民芸術フェスティバルという都から助成金の出るイベントですので、払った税金を取り戻すために行くべし、という理由で行くわけではないですが、平日昼公演があったおかげで聴きに行けました。都響がトリフォニーでやるなんて、珍しいですね!
【2025都民芸術フェスティバル 都響】
(2025年2月18日、すみだトリフォニーホール 大ホール)
芥川也寸志:弦楽のためのトリプティーク
モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K.453
(ソリストアンコール ショパン:前奏曲第3番)
シューマン:交響曲第1番 変ロ長調 作品38「春」
指揮/梅田俊明
ピアノ/中川優芽花
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珍しい、全部好きな曲というプログラム。いいね! 芥川也寸志は今年生誕100周年なんですね。交響三章に感動して昔書いた記事もあるし、交響組曲「東京」の記事もあるけど、ぜひ芥川好きには新響のレニングラード公演の方の記事をどうぞ。トリプティークも好きですよ。開始早々、良い音で鳴らしてくれて楽しい。ちょっと渋くて、一体感のある弦楽の音色、芥川によく合うなあ。かっちり演奏も良いですね、上手いなあ都響は。艶よりも鋼の音色で、きちっと演奏される芥川はやはり魅力的だ。こういう、カチッとやれば絶対に良くなる保証がある作品だよね芥川のトリプティークって。素敵でした。
さらに良かったのはモーツァルトでしっかりモーツァルトの音色に変わったことかしら。彩りがパッと。良かったわ。ピアノの中川優芽花さんも、初めて演奏を聴きましたが、オケとよく合うきれいなモーツァルトで素晴らしかったですね。2楽章がかなりゆっくりテンポで、周囲のご老人はおねんねタイムに突入する方も結構いましたが、それだけ優しいモーツァルトだったということで。まあそういうのも良いんではないか。ゆっくりなのは別に良いんだけど、謎の間が何回かあったな、個人的にはあれは流れを切っていたように思う、ソロじゃなくてオケの方ね。全体的に遅いからフレーズ後にたっぷりめに間をとっても良いかとなると、そういうときもあれば気になってしまうときもあるんだなと。3楽章もじっくりじっくり丁寧に。木管をたっぷり聴かせてくれたのはナイスですね、ちょっとノリにくそうではあったけど、どうなんでしょう。まあでも、良いモーツァルトでした。今度は中川さん、もっと小さい編成でのモーツァルト協奏曲や、室内楽なんかも聴いてみたいですね。絶対いい感じの音楽になりそう。
モーツァルトは良い感じだったんですが、休憩中に「このモーツァルトのスタイルだと何となくシューマンは……」と想像していた通り、かなーり遅めであった、これが個人的にちょっとしんどかったわ。遅いこと自体は悪くないでしょうが、にしても遅かったなあ! 上手いオケだから縦も合うしトチらない、大音量で迫力もあった。でもシューマンの交響曲、特に1番って「まじめに愚直に丁寧にやれば良くなる」っていうタイプの交響曲じゃないじゃないですか。マーラーもそう思ったんでしょうよ、きっとね。延々と変わり映えしない景色が続く感じ、何分くらいやってたのかしら、体感では50分くらいだったぞ。実際は40分くらい?わからないけど、それでも長いよ、この曲にしては。長いというか、終始グルーヴが全くないのがきつかった。引き算がないからね。常に足し算だけ、音塊がずんずんやってくる。まあ音楽にはそういう魅力もあるっちゃあるさ。真面目に真摯に臨んでいるのは非常によく伝わりましたね、ただ、まじめだからこそ、聴く方には驚きがない。この曲を知らない人には良かったかもしれない、でかい音量で、なんか良さげなメロディがきれいめの音色でどんどん出てくるから。そういう意味では2楽章は素敵でしたね、ひたすらまじめに、ゆっくりと濃厚な音で歌うのは良いものです。1楽章、あんなに変なノリ方だったのに、4楽章は徹底してメトロノームカチカチでやるの謎だ。色々言ってしまったけど、とにかく、遅かったなあ! 大音量という点以外では、この曲から喜びが感じられなかった。何度も言うけど遅いことそのものが悪いとは思わないし、それが良いと思えるときもあろうよ。今回はまあ、僕が悪いかもしれない、なんせ今回はフェスティバルだし、2月も後半、もうすぐ春だからきっとシューマンの春も歓喜に満ちたウッキウキの演奏になるだろうなと勝手に期待してしまったのはある。それは僕のせいです、ごめんなさい。確かに昨日は寒かったもんな。大寒波だしね。オーケストラが「皆さん!まだ春じゃないですよ!」って言ってるような春ってなんやねん。「お前たち、フェスティバルだからって、都民どもは浮かれるなよ、雪国では大寒波で大変なんだぞ、自粛しろ自粛!」って言われてるようだったわ。僕が子どもの頃、よく婆ちゃんがテレビ見ながら言ってたなあ、そういうこと。「こっち(新潟)はまだ大雪でこんな大変なのに東京はなんとかかんとか」みたいな。婆ちゃんのヒステリーを思い出しちゃったよ、さすが都響、異次元である、やだやだ、やめてくれよ。春の気分でノリノリでスキップするんじゃなく、まだ春も遠い、雪で覆われた山からゆっくりゆっくりと行軍するようなシューマンでした。
ホールを出て帰る人たちの中である夫婦が「疲れたねー」って言ってました。わかる。このシューマンでは疲れるわ。いやいや、雪国の方のご苦労を思うと、暖かいホールで座ってるだけで疲れたなんて言っていられません、すみませんね。僕は雪国生まれですが、絶対に実家には住めない。良かったらこんなのも読んでください↓
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都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more