ブリテン 戦争レクイエム:演奏家の為しうる全てを

Spread the love

War Requiem

ブリテン 戦争レクイエム 作品66


反戦主義者であるブリテンの、約1時間半に渡るレクイエム。
1961年の作品であり、第二次世界大戦中にドイツ軍の空爆を受けたコヴェントリー大聖堂の復興献堂式祝賀会のための音楽である。
長大な作品であると同時に、管弦楽に室内楽、混声四部合唱と児童合唱、そしてソリストと、巨大な編成を要する作品でもある。
スケールの大きさに比例するように、この曲は非常に強いメッセージを持っている。
器楽伴奏が表す戦争と祈りの情景、声楽が運ぶその圧倒的な精神性、これは聴く方にも相当の覚悟を要求する。
ブリテンの精神を最高に表現した、彼の作品中でも傑作と言える「芸術」である。


歌詞に用いられるのは、ミサ用の典礼文と、イギリスの詩人オーウェンの詩である。
入祭唱、怒りの日、奉納唱、サンクトゥス、アニュス・デイ、リベラ・メという構成。
あまり細かいことを言うのも難だが、個人的には、サンクトゥスの「Pleni sunt caeli et terra gloria tua」(主の栄光は、天と地を満たす)という歌詞の部分が歌われるところが圧倒される。
飛び交う声とグローリアへ向かう群、ここだけ聴いてもなかなか凄みがある。
この音楽の凄さというのは、存在価値の大きさはもちろん、それを演奏することの意義深さにある。
僕があるところでピアノの小品を演奏することは、それ自体が僕以外の世界に与えるものはほとんどない。
しかし、「戦争レクイエム」は、演奏される度に、どんな演奏であろうとも奏者・聴衆・音楽に関わる全ての者に、必ず何かしら重要な示唆を与えるのだ。
ブリテンのスコアの表紙には、オーウェンの言葉が書き記されている。
『私の主題は戦争であり、戦争の悲しみである。詩はその悲しみの中にある。詩人の為しうる全てとは、警告を与えることにある』
作曲家の為しうる全てを、ブリテンはこの曲で体現しているのだ。

War Requiem War Requiem
London Symphony Orchestra,Benjamin Britten

Decca
売り上げランキング : 22171

Amazonで詳しく見る by AZlink


ここまで読んでくださった方、この文章はお役に立ちましたか? もしよろしければ、焼き芋のショパン、じゃなくて干し芋のリストを見ていただけますか? ブログ著者を応援してくださる方、まるでルドルフ大公のようなパトロンになってくださる方、なにとぞお恵みを……。アマギフ15円から送れます、皆様の個人情報が僕に通知されることはありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。励みになります。ほしいものリストはこちら

Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

にほんブログ村 クラシックブログへ にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ 
↑もっとちゃんとしたクラシック音楽鑑賞記事を読みたい方は上のリンクへどうぞ。たくさんありますよ。

Spread the love

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください