セヴラック 農事詩「大地の歌」:大地と生きる人の香り

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セヴラック 農事詩「大地の歌」


もしマーラーの大地の歌を検索してこの記事にたどりついた人がいたら申し訳ないのだが、マーラーではなくセヴラックというフランスの作曲家のお話。
農事詩とあるが、厳密には「7部からなる農事詩」であり、農作業、自然とそれに携わる人々の風景が題材である。
このような題材からしてもう説得力が十分だが、セヴラックという作曲家は、コルトーをして「田舎の作曲家」と言わしめ、ドビュッシーに「素晴らしい大地のような香りがする」讃えられた。
パリ音楽院に入るも、その厳格なアカデミックさ加減に嫌気がさし、ダンディが創設に一役買ったスコラ・カントルムに移る。そこでダンディやマニャール、アルベニスから指導を受けた。
同じようにお堅いアカデミズムに息苦しさを感じていたラヴェルや、ピカソをはじめとした多くの画家たちとの交流は、充実したパリ生活を提供したものの、やはり故郷の南仏が彼の音楽の核だった。
南フランスの故郷に固執したセヴラックの音楽は、後期ロマン派とも印象派とも取れる、独特の趣を持っている。
ドビュッシー風のやや前衛的な技法を用いつつも、セヴラックはシューマンへの思いを常に抱いていたようだ。
シューマンのような、いつくかのやんわりしたテーマのピアノ小品を組曲にするという構成を好んで用い、この農事詩「大地の歌」もその一つである。
ドビュッシーの言う「素晴らしい大地のような香り」が最も感じられるのは、やはりこの「大地の歌」なのではないだろうか。


プロローグ(大地の魂)、耕作、種蒔き、間奏曲(夜のおとぎ話)、雹、刈り入れ時、エピローグ(婚礼の日)という7曲からなる。
短いプロローグは、副題に大地の魂とあるように、この組曲の魂のようなものだ。後に何度か現れ、古風な雰囲気と統一感を演出する。
耕作はなかなか重苦しい。だがこれがなければ、農作は始まらないのだ。終始耕す様子が描写的に表現されるが、耕作の終わり、この曲の終わりは堪らなく美しい。そういうものなのだろうか。
種蒔きはこの組曲中僕が最も好きな曲だ。そう、種を蒔ける季節がやってきたのだ。この希望に満ちた音楽。希望の高まった部分、僕は少し身震いしてしまった。少なからずこういう部分がある音楽は、本当に愛しいものだ。この曲は(或いはこの曲も?)大地に立つ人間の歌だ。
間奏曲には夜のおとぎ話という副題がある。種蒔きで少し興奮した心を、この優しい歌で落ち着けたい。それが組曲の楽しみというものだ。
雹はこの中で最も自然描写的な音楽。途中で聞こえる鐘の音に注意したい。ピレネーのある地方では、嵐のときに鐘を鳴らす習慣があるらしい。人々が田畑の無事を祈る部分の音楽も聴きどころと言える。
いよいよ収穫では、心も体も弾むような、ちょっとした舞曲風な面持ちもある音楽が広がる。秋らしい哀愁も少し感じられるが、それ以上に、自然に対する人々の感謝の思いを感じながら聴くと、一層大地の香りがするものだ。
エピローグは婚礼の日とある。喜びと同時に、誓いと祈りの音楽でもある。大地とそこで生きる人々の、かくも美しい讃歌である。
「大地と生きる人の香り」がする、といいたくなるような、そんな音楽だ。

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“セヴラック 農事詩「大地の歌」:大地と生きる人の香り” への1件の返信

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    はじめまして。
    マーラーとは正反対の『大地の歌』、農作業の長靴をはいたままオルガンを演奏するセヴラックの写真を思い出しました。

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