イヴリー・ギトリスの世界 イヴリー・ギトリスの協奏曲

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現役最高齢ヴァイオリニスト、生ける伝説イヴリー・ギトリス(92)。僕がクラシックを聴き始めた中高生の頃、ギトリスの弾くヴァイオリン小品集のCDをよく聴いていました。まさかまだ生きてるとは、失礼、まだ演奏活動をしているとは。そんなギトリスの演奏を生で聴くことができるとは思ってもいませんでした。貴重な機会に巡り合えて幸運なことです。


【イヴリー・ギトリスの世界 イヴリー・ギトリスの協奏曲】
(2015年5月1日、東京オペラシティコンサートホール)


バッハ:G線上のアリア
バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043
マスネ:タイスの瞑想曲
サン=サーンス:ハバネラ
バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調 BWV1042
アンコール 成田為三(ギトリス編):「浜辺の歌」変奏曲
イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)
ヴァハン・マルディロシアン(指揮)
木野雅之(ヴァイオリン)
日本フィルハーモニー交響楽団


プログラムには「トークセッションでギトリスに質問しよう」というような紙が挟んであり、おお、こんなのもあるのかと驚きです。ギトリスはお弟子さんの木野さんに支えられながらステージに登場し、椅子に座って何度も何度も眼鏡を拭いていました。バッハのドッペルでは木野さんが調弦のお手伝いをして、音が合うとお茶目なリアクションをとって会場を笑わせてくれました。曲目変更があり、当初はベトコンをやる予定だったのですが、小品に変更。ギトリスの体力を見る限り、無理もないですね。小品にして正解だと思います。タイスの瞑想曲は、今まで聞いたどのタイスよりもファンキーな演奏でしたよ。


休憩を挟んでからトークセッション、ここでは御大やりたい放題です。質問を書いた人の中からいくつかピックアップしてギトリスにきいていくという方式で、質問を書いた8才の少女に、壇上に上がりなさいとギトリス御大。彼女に長々と音楽とはいかなるものかと語っておりました。この薫陶を受けた少女がいつの日か日本を代表するヴァイオリニストになることを祈ってやみません。また、ヴァイオリンを生涯やると決心したのはいつ?という問いには「生まれる前から」。年齢についての問いに対しては「年を取ることは全く問題ではない、自分が問題と思わなければ」と、いくつになってもかっこいいギトリスです。


ギトリスの演奏、僕はCDでしか知りませんでしたが、この老巨匠から全盛期の面影を探しつつ音楽を聴いていました。実際のところ、もう支えられて歩いているほどに体力もなく、ピッチや音の運びはヘロヘロなんですが、やはり端々で彼の如何にも曲者らしい音を聴くことができた気がします。バッハの協奏曲2番の冒頭、そう、体力が無いので冒頭にこそ本領が発揮されているような気がしたんですが、鬼才の響きでした。変幻自在・緩急自在だったファンキーな「タイスの瞑想曲」、アンコールには即興で「浜辺の歌」(成田為三のですよ!)の変奏曲。彼こそ「巨匠」と呼ぶに相応しい圧倒的なオーラ、彼と彼の音楽を愛する人たちに溢れた会場の温もり、トークもリアクションもお茶目なのに、演奏中の音楽に臨む真摯な態度。誰よりも風格がありました。「年を取ることは全く問題ではない、自分が問題と思わなければ」と語る92才、彼は本物の音楽家です。敬愛の念を抱かずにはいられません。


本当に聴けて良かったです。色んな意味で、次元が違いますね。遥か遠い次元のようだけど、すごく近しい音楽、音楽っていいね。来年も日本に来てくれますか?の問いに「神のみぞ知る」だそうです。

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