友人が出演するアマオケを聴きにつくばへ行って来ました。ポスターやチケットに伊福部昭生誕百年のあのロゴが入っているのを見て、このオケの伊福部への愛を感じますね。以前タプカーラをやって盛り上がったそうで、今回のリトミカも気合が入っているとのことでしたし、何よりリトミカのピアノ独奏が我らがあまスタの誇るピアニスト、ビル氏こと塚原啓太氏ですので、期待を高めて応援に来た次第です。
【オーケストラ・ウィル 第6回定期演奏会】
(2014年9月6日、つくばノバホール)
ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲
伊福部昭:ピアノと管絃楽のためのリトミカ・オスティナータ
(ピアノ:塚原啓太)
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68
アンコール
アンダーソン:舞踏会の美女
指揮:佐々木雄一
思うに伊福部昭の作品は、日本人が演奏することに意味がある音楽ですし、またそれ以上にアマチュアが取り上げる意義も大きい音楽なんでしょう。オーケストラ・ニッポニカにしろ新交響楽団にしろ、伊福部を取り上げた演奏会を聴きに行った人たちの感想を見ると、いつも目にするのが「伊福部になると音が変わった」という感想。2ヶ月ほど前の朝日新聞の記事でも吉田純子氏がこんな風に書いていました。
“「音楽はごく一部の特別な人たちのものではない」。表面的な洗練を拒み、熱狂に素直に身を投じる。こうした「伊福部流」を実現してきたのが、アマチュアたちの情熱だった。”
今回の演奏会のリトミカを聴いて、全く上述の通りの文言が頭をよぎりました。ロッシーニやブラームスとは全く性質の違う音で、まことに息の詰まるような緊張感と熱狂を生み出していたと思います。おそらくはクラシックのことを知らないお客さんたちの多くも血沸き肉踊る熱狂を感じ得たのではないでしょうか。基本的に、クラシックは洗練されている方が美しいに決まっているのですが、伊福部やハチャトゥリアンなんかは、小綺麗なプロオケの演奏なんかより、気合と根性のアマオケの音の方が本当に心に響いたりするものです。そして、リトミカみたいなピアノの使い方をする曲(ダンディのフランス山人の歌による交響曲など)は「プロを呼んでやるにはもったいないけどプロ並みの人を呼ばないと出来ない」曲ですし、実演されることにも大きな意味があったと思います。力強いピアノを聴かせてくれた塚原氏には大拍手です。
実はアマオケを聴くのはえらく久しぶりで、アマオケの存在意義というのはもちろん奏者たちのためもありますし、演奏会をやるなら例えば地元の音楽を盛り上げたり、音楽を気軽に多くの人に楽しんでもらったりと、他にも色々と思い浮かぶものもあるのですが、じゃあわざわざアマオケを「聴く」意味って何なんだろうと考えると、自分にとっては、やはり一番は「人」なんだなあと再確認させてもらいました。僕はプロ奏者の知り合いが多い訳でも何でもありませんので、友人がオーケストラの舞台の真ん中でソリストをやるのを見るというのはこんなに楽しいものなのかと、また一つ発見になりました。音大出身の方なんかはたくさんこういう経験が出来るのかなあと、ちょっと羨ましくも思ったり。また、打楽器の友人のティンパニもすごく上手で聴いていて素直に感心しましたし、シンバルのあの方もとてもお上手だったと思います。
差し入れを持って行くコンサートも久しぶりかもしれない。表参道のジャン・ポール・エヴァンのチョコを自宅用にも買ったので、楽しみで仕方ないですね。コンサート前につくばのマッサージにも行けたので、充実した週末でした。いやあそれにしても、伊福部昭の音楽は良いですね!そして伊福部の音楽を愛するオケも、本当に良いものですね。ウィリアム・テルを聴いて、本日のメインイベントのリトミカはいったいどうなってしまうのだろうかと思ったりもしたのですが、これほどの名演を聴かせていただけるとは、脱帽ブラボーです。あの熱狂の後のブラームスはさぞやりにくかったことでしょう(笑)おいしいところを全部持って行って、ビルさんもにくい人ですねえ!
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都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more