お久しぶりの東京・春・音楽祭、3年前にボロディン弦楽四重奏団聴きに行った以来ですね。あれは良かった。その前に行ったのとなると8年前でしょうか。リフシッツのバッハは、所沢でパルティータ全曲やる日がロータス・カルテットとかぶって行けなかったので、上野で協奏曲聴けるのが楽しみでした。
【コンスタンチン・リフシッツ~バッハ ピアノ協奏曲全曲演奏会II】
(2018年4月1日、東京文化会館小ホール)
バッハ:ピアノ協奏曲第5番 へ短調 BWV1056
ピアノ協奏曲第6番 へ長調 BWV1057
ピアノ協奏曲第7番 ト短調 BWV1058
ブランデンブルク協奏曲 第5番 ニ長調 BWV1050
ピアノ&指揮 コンスタンチン・リフシッツ
管弦楽 トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア
トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアというのは、トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズが2016年に改名したオケなんですね。小編成で、真ん中にベヒシュタインのピアノが鎮座しておりました。今年はなぜかバッハに恵まれていて、1月にもガヴリリュクがイタリア協奏曲を弾いてくれましたし、2週間前にはアンデルジェフスキがイギリス組曲を弾くのを聴きました。リフシッツは、まあアンデルジェフスキのバッハとは対極に位置するような、力強いピアノ、力強いバッハ。もっとも、独奏曲ではなくて協奏曲ですからそれは当然なのですが。指も良く回り、全体的に快速運転。ここ何週間かで、各地で他のバッハ作品を弾き周っている人だと思うと、よくこんなに弾くもんだなと、あなおそろし(笑)
チェンバロでなくピアノでバッハの協奏曲を弾くのの何が良いかを、正直のところ僕は初めあまり理解していませんでした。独奏曲ならわかりますが、アンサンブルするならチェンバロの方が合うんじゃないかなあなんて思っていました。今回、初めて生でこうして聴いてみて思ったのは、音量や音色の変化を付けることで、例えばリフシッツが右手のメロディーを歌わせながら左手を完全にオーケストラ伴奏の音に溶け込ませたり、あるいはチェンバロではどうしても均質な音量になる旋律も、部分的に特異点を作るかのごとく際立たせたりできて、ライブでこれを聴くのはなかなか興味深いものがあります。どうしたってチェンバロではできないことをモダンピアノやる、これが重要なんだなあと(最近そればっかり言ってる……)深く深く頷きながらリフシッツの創意工夫をできるだけ見逃すまいと集中しておりました。
ということで、僕の聴く側としての調子は尻上がり的に出てきて、一番好きな7番は一番よく楽しめたと思います。そして、ひそかに期待していたブランデンブルク協奏曲5番。ピアノ協奏曲の6番のときに出てきたリコーダー2本は古楽器だったので「ふーん管は古楽器でやるのか」などと思って、ブランデンブルク5番でも古楽器なのかなあと予想していたら、やはりフラウト・トラヴェルソが出てきました。ピアノはモダン楽器ですし、オケもそうでしょう。そこに管だけ古楽器なのはどういう意図かなあと思案したのですが、僕の足りない頭ではよくわからず。それはとにかく、このトラヴェルソがびっくりするくらい音が聴こえないんですよ(笑) もちろん、楽器の特性上、音が小さいのは仕方ないんだけど、リフシッツのピアノとソロヴァイオリンを弾くオケのコンマスさんの音量とのバランスは悪かったですね。舞台上、リフシッツくらいの距離なら聴こえていたのでしょうか。あるいは客席最前列はどうだったのかな? 僕は前後で言えばほぼ真ん中、そしてやや下手側で聴いていましたので、少なくとも僕より後ろの人たちはこれより聴こえないトラヴェルソだったのかと思うと残念です。確かに、あの少人数編成でモダンフルートを使うと音が大き過ぎる危険もありますが、聴こえないのと大きいのならどちらが良いのでしょうか。せっかく古楽器を持ってきているのに惜しいなあと思っていました。
そんなこともありましたが、リフシッツのピアノを聴くという目的で言えば十二分に堪能しました。楽しそうに弾きますね(笑) 修行僧みたいなアンデルジェフスキの後だったのもありますが、豊かで愉しい音を届けてくれたという印象です。
J.S. バッハ:音楽の捧げもの、前奏曲とフーガ《聖アン》(リフシッツ編) 、フレスコバルディ/トッカータ集 (Bach: Musikalisches Opfer; Praludium & Fuge, BWV 552; Frescobaldi: 3 Toccaten) Konstantin Lifschitz,Johann Sebastian Bach,Girolamo Frescobaldi,Konstantin Lifschitz (Klavier) Orfeo |
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more