ここ最近バタバタしていて、カジモトのメールに促されてから忘れていたチケット発券を済まし、席もよく確認しないで時間ギリギリに会場に入り、座席番号を確認するとまさかの1列目。こんなに近くでスラットキンさんの指揮姿を目にすることができるとは。ニコニコの好々爺、可愛らしいです。
【フランス国立リヨン管弦楽団 来日公演】
(2014年7月17日、サントリーホール)
バーンスタイン: 「キャンディード」序曲
ラロ: スペイン交響曲 op.21 (ヴァイオリン:五嶋龍)
ベルリオーズ: 幻想交響曲 op.14
アンコール
ビゼー:オペラ『カルメン』第3幕への間奏曲
F.スラットキン:カルメンズ・フーダウン
指揮:レナード・スラットキン
1曲目のキャンディード序曲から、スラットキンの丁寧な仕事ぶりがわかるクリアな音が響き渡ります。といっても、終始そういうアプローチなのではなく、オーケストラの迫力を前面に押し出したりもしながら、耳に優しくかつ楽しく音楽を届けてくれます。素晴らしいですね。もっとクールな音で行くのかなあとも思っていたのですが、予想以上にアメリカンなキャンディードでした。そういう「冷静と情熱のあいだ」のような、明晰で聴き手に音楽をわかりやすく伝えるような作り方と、音を上手くブレンドさせて絶妙なハーモニーを作り情感たっぷりに表現する方法と、いいバランスで全体を構成するのがスラットキンのすごいところです。ラフマニノフやヴォーン=ウィリアムズの交響曲集の録音なんかを聴いても、そういう巧みさは他の指揮者と一線を画するものでしょう。幻想交響曲も、一つ一つが丁寧で、音が彫像の様に浮き彫りになっているのですが、行進曲やクライマックスでの気持ちの昂ぶりは、これぞロマン派音楽の魅力、音が一つの大きな塊となって直球勝負で聴衆に体当たりしてくるのです。
パンフレットでも、リヨン管の木管奏者たちの素晴らしさが冒頭で触れられていました。実際、まろやかで角の立たないオーボエの音色には関心しきりでした。幻想交響曲での、3楽章のアングレとオーボエの掛け合いや、4楽章5楽章でのクラリネットなども、「幻想交響曲のソロはかくあるべし」という理想的なものでしたね。一見まろやかなのに、どことなくドス黒いものが見え隠れしている、いかにもフランスのオケだなあという音です。ホルンの温かい音色も素晴らしかったですね。
もちろん、五嶋龍さんのスペイン交響曲も熱演でした。この曲の1楽章なんか特に演歌みたいなもので、五嶋龍さんもこぶしを利かせたどっこいしょ音楽を朗々と奏でていた、のかどうかはわかりませんが、良い演奏でした。しかし26才にしてこの貫禄。うむ。このプログラムは全て僕の大好きな曲なのですが、スペイン交響曲の次に幻想交響曲を聴くと、中身がすっからかんの曲から一気に中身のたっぷり詰まった曲になるので、ギャップに苦しみますね(笑)
幻想交響曲が終わった後のスラットキンさんはまるで一気に歳を取ったかのように老けこんでいました。体力も精神力も消耗する曲ですよね。しかし、アンコールで再び一気に若返り、このオケの名物であるフルートをはじめとした木管楽器の音色を十分に味わえるカルメンの間奏曲と、スラットキンさんの父(ハリウッド弦楽四重奏団の創設者)が編曲したカルメンを演奏。この「カルメンズ・フーダウン」という曲がノリもよく打楽器も大活躍する楽しいアレンジで傑作でしたね!スラットキンさんも演奏前にこの曲は通称“Carmen goes to Hollywood”だと言って笑いを取っていましたが、まさしくアメリカン・グッドオールド・カントリー・ミュージックなカルメンに会場も盛り上がっていました。
サイン会をやるとは知らず、何も持ってこなかったのですが、パンフレットにスラットキンさんのサインをゲットしました。五嶋龍さんの方が長い行列だったかな?アンコール2曲にサイン付きのなかなかお得感のあるコンサートで、満足です。
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都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more