なかなかコンサートに行けない日々が続いていて、2016年初のコンサートとなったのがミシェル・ベロフのリサイタル。ベロフの弾く、軽すぎず重すぎず、歯切れが良くてそれでいてそっけなくもなく、自然なスタイルと温かで洗練された音色のドビュッシーの録音は愛聴盤です。今回はドビュッシーのアラベスク2つと子供の領分をやるということだったので、期待度大。
【ミシェル・ベロフ ピアノ・リサイタル】
(2016年3月17日、すみだトリフォニーホール)
フォーレ:ノクターン第1番 変ホ短調 op.33-1 & 第6番 変ニ長調 op.63
ラヴェル:水の戯れ/亡き王女のためのパヴァーヌ
ドビュッシー:2つのアラベスク/子供の領分
フランク:前奏曲、コラールとフーガ
メシアン:「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」より第19番「われは眠る、されど心は目覚め」& 第20番「愛の教会の眼差し」
アンコール
ドビュッシー:スケッチブックより
ドビュッシー:前奏曲集第1集より沈める寺
ミシェル・ベロフ(ピアノ)
フォーレのノクターン、これもよくユボーやコラールの録音を聴いている馴染みの曲で、とにかくまずベロフの音の良さに息を飲みました。こういう光が差し込むようなピアノの音こそ、フランスのピアノ小品に最もぴったりな綺麗な響きですね。ラヴェル、ドビュッシーは意外にも快速テンポでした。もっとも、そんなにためて弾くタイプではないのは20年前の録音からもわかりますが、さらりと流すように弾いていましたね。エモーショナルな演奏でした。
後半のフランク、この曲もコルトーの愛すべき名演が大好きなのですが、生で聴いたのは初めてで、改めて難曲なのを実感しました。ベロフの弾いている動きを見ているだけでこちらまで疲れてきそうです。前半の小奇麗な音楽とは違い、壮大かつ汚れない響きを行き渡らせるベロフのピアニズム、これは良かったですね。まあそれより何より、圧倒的だったのがメシアンです。ベロフはメシアンの「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」を、初演以来となる全曲演奏を行った、メシアン演奏の第一人者とも言えるピアニストだということなどすっかり忘れていました。会場の空気を変えるほどの集中力、振れ幅の大きな表現力、有無を言わせぬ完璧な演奏でした。心なしかメシアンはミスタッチが少なかったような(というか気づかないだけか……笑)気もします。ベロフがドビュッシーを録音したのは1995年、それから20年以上も経って、今65歳だそうですから、ラヴェルやドビュッシーに切れ味がなくなるのは当然ですし、それ以上にライブでしか味わえない円熟の響きを楽しめたので良かったのですが、逆にその年齢のことを考えても、それをネックに感じさせないメシアンの演奏には、あっぱれとしか言えませんね。いやあ、素晴らしかった!!
サインも貰えて大満足でしたが、せっかくドビュッシーのCDを3枚も持ってきたのに、お一人様1枚までですと言われてちょっと残念。弾いているときはもちろん、ベロフは普通にしててもダンディでイケメンですね。これで65歳だなんて。ずるいなあ。
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都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more