王子ホールの銀座ぶらっとコンサートというシリーズ、Caféギンザというものをやっているようで、加藤昌則さんの企画なんでしょうか。Wikipedia見たら2007年からやっているとありました。今回が10回目ということでいいのかな。ヨックモックが協賛しているので、コーヒーや紅茶と、シガールが出ます。最高だな!
【銀座ぶらっとコンサート #182 Caféギンザ10】
(2023年5月24日、王子ホール)
ヴォーン=ウィリアムズ:
揚げひばり(ヴァイオリンとピアノ版)
「旅の歌」全曲(ヴァイオリン付き)
1. 放浪者
2. 美しい人よ目覚めよ
3. 道端の火
4. 青春と恋
5. 夢の中で
6. 無限に輝く空
7. 私はいずこにさすらうか
8. 言葉の響きは明るい
9. 坂を上り、坂を下りた
アンコール ヴォーン=ウィリアムズ:静かな真昼
加藤昌則:Sancta Maria
加藤昌則(作曲/ピアノ)
三宅理恵(ソプラノ)
大江 馨(ヴァイオリン)
ヴォーン=ウィリアムズは大好きな作曲家の一人です。昨年は生誕150周年で色々ツイートしたりしましたが、個人的にはこの記事を頑張って書いたのでアピールしたい。ということで、お時間のある方はぜひご覧ください。
このシリーズは初めて来ましたが、加藤さんが色々お話して、解説しながら進めるコンサートなんですね。結構笑いを取りつつ、楽曲をより楽しめるような情報を盛り込んだ、ナイスなトークでした。ヴォーン=ウィリアムズ誰それ?という人も今日来たのを後悔させないとお話ししていた通り、知らない人にもすごくわかりやすいようにお話されていたと思います。
まずは加藤さんのピアノと大江さんのヴァイオリンで、名曲「揚げひばり」。素晴らしい演奏。大江さんの傷のない、繊細なヴァイオリン、大変美しい。今度仙台フィルとやるそうなので、聴ける方は期待して良いと思います! 加藤さんが「最近は本当に揚げひばりを、ひばりを食べて減っちゃってるから、そういうのに対してヴォーン=ウィリアムズはこの曲を書いたという説もあるらしいよ」と言っていましたが、そうなんですか。え、ひばりって食べられるの? まあ当時のイギリス人が食べたかどうかはともかく、一般的にはヴォーン=ウィリアムズはメレディスの同名の詩にインスピレーションを得て書いたとされていますが、2021年には“Pastoralism, Loss, and Nostalgia: V alism, Loss, and Nostalgia: Vaughan Williams’ aughan Williams’s The Lark s The Lark Ascending as an Elegy for Environmental Disruption”という論文もあるように、環境の変化も書く動機になってるんじゃないかという説もあるようですね(論文PDFリンクはこちら)。あと、最近はこの曲を通してひばりを守ろう運動もあるようです。色々ありますね。
「旅の歌」が生で聴けるということだけで、もうすでに興奮マックス。こちらも解説を挟みながらの演奏。プログラムをもらったときに対訳が無くて「お、そういうスタイルか」と身構え、僕は予習してきましたが、平日の真っ昼間の銀座のコンサートでヴォーン=ウィリアムズの歌詞予習してくるやつはほぼいないだろうと、大丈夫なのかと少し不安に。でも、加藤さんが「敢えて対訳なしにしたのは、詩の内容が難解で日本語にしても理解できるのかどうかという問題があるのと、詩は音楽に表れるので大意を取って音楽を聞いてほしい」と。なるほど。結果、それで良かったのかなと思いました。第1曲、第2,3,4曲、第5,6曲、第7,8曲、第9曲と分けて、それぞれの演奏前に加藤さんが解説。大意を把握して音楽に浸る、良いやり方だったと思います。下手に対訳載せてパンフ見ながら聴いてると絶対に居眠りしてパンフ落っことす人が出たでしょうしね。それはともかく、このピアノとヴァイオリン伴奏という編成の妙、素晴らしいですね。歌にきれいに寄り添うヴァイオリンのバランス、大江さん、凄い。ときに歌に、ときに伴奏に、すっと馴染んで上手く補い魅力を高めます。編曲も演奏も良かったからできたことですね。第6曲では星の瞬きをフラジオで表現、ナイスアイディアだなあ。ちょっと派手な雰囲気にはなるけど、それがまたソプラノで歌うこともあってか、違和感ないんですよね。この曲はソプラノで聴くことのあまりない曲ですが、三宅さんの熱演も素敵、オペラチックだったけど、装飾的にボリュームアップした伴奏には、華やかで力強い歌唱が似合います。劇的で、とても良かった。「旅の歌」はもっと渋いイメージでしたが、こういう楽しみ方もあるなあと、感心しました。
アンコールに静かな真昼、素晴らしいチョイス。ヴォーン=ウィリアムズ好きにぶっ刺さる、最高のアンコール。加藤さんも曲への愛を熱く語っていましたが、良い曲なんですよね。それを、この少し地味な作曲家かもしれないけど、晴れた良き日の午後に聴くヴォーン=ウィリアムズ、静かで美しい午後の音楽の時間を過ごすことができた今日の演奏会の締めくくりにふさわしい……いやあ最高過ぎる……なーんて思ってたら、もう1曲アンコール。加藤さんの曲、サンクトマリア。うーん、蛇足、蛇足、蛇足! いらねー!!! 曲は別にね、良い曲だと思いますけど、せっかくならさ、ヴォーン=ウィリアムズだけで素晴らしいマチネができるたのだ、と、そうして欲しかったなあ。まあこれはRVWファンのぼやきです。加藤さんのファンは聴けて良かったですね。とまあ、アンコールにはちょっと物申したくなったけど、とっても良いコンサートでした。逆にウィグモアではできないよねこれ、オリジナリティとイギリス音楽愛あふれる素晴らしいコンサート、堪能しました。
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more