随想1.湾岸ミッドデイ、あの日あの時あの場所で 随想2.塩味エアリアル、何てコトない毎日が

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随想1
東京に住んでいると、公共交通機関が充足しているので自家用車はほぼ必要ないかもしれないが、家に小さい子どもがいると車は便利で、あるに越したことはない。よくTwitterで「ベビーカーでバスに乗って冷たい目で見られる」とか、もっと酷いことをされたとか、そんな話題を見かけることもあったし、僕だってもちろんベビーカーを押しながら電車やバスに乗った経験は何度もあり、混んできたときは別に誰に文句を言われなくても肩身が狭く感じたものだ。世の中は赤ちゃん連れのママにだけ酷く当たる、要は自分より弱そうな奴と見ると横柄な態度になる腐った悪人がいる。僕は覇王色の覇気をまとった男なのでバスの中で酷いことをされたことはないけども、か弱いママさん方は乗る際に不自由さやストレスを感じることも多いだろう。我が家はマイカー移動も多かったため、比較的そういう思いをしないで済んだ方だと思う。今はもう子どもたちも自分で歩くようになって一安心だ。ベビーカーや抱っこひもで乳幼児を連れて移動するパパママは心身ともに本当に疲労が大きい。その疲労感を少しでも減らせた、というだけでも車はありがたい。

上の子(息子)は電車が好きなので、大体は車移動よりも電車を好む。下の子(娘)は別に電車好きではないので、車の方が楽だから車移動を好む。妻は息子の影響で自分も鉄道好きになり(そういうのを子鉄・ママ鉄と言うそうだ)、どんどんマニアックになっていってウケる。これを書いている今も妻が「NewDaysで鉄道の日フェアが~」とかなんとか言っている。そうですか。妻はカメラも好きで(これは祖父の影響である)、Canonの一眼レフを持って撮ったりもするが、ガチな撮り鉄は大変だし怖い輩もいるので程々にしているようだ。まあまあ僕と同様、育児しながら趣味を謳歌していて結構なことね。

娘が大きくなってきたので、息子と妻が二人だけで鉄道イベントに出かけられるようになった。趣味が合うもの同士で楽しんでいる。娘と僕でお留守番でもいいのだけど、どうしても兄に張り合いたい欲が出てしまう妹、私はパパとお出かけしたい、電車よりもできれば車が良い、と。そういうことで、年長さんの娘とパパの初々しい(?)ドライブデートが始まるのだ。

7月某日、妻と息子をイベント会場付近まで車で送ると、娘とパパの二人だけに。あ、言い忘れてたけど、娘はですね、普段からパパのこと、それはもう大好きですからね! 大事なことを言い忘れてたね、あぶないあぶない。いつもは子どもたちを後部座席に座らせているけど、今日は特別に、助手席にチャイルドシートを移動して、前に座って良いことにする。安全運転を心がけても、やっぱり子どもは後ろが良い気がすると思ってずっと後ろに乗せてたので、とにかく前に座れるというだけでも嬉しいのだ。僕も嬉しい。娘を助手席に乗せてドライブ。こんなに早く、そんな素敵なことができる日がやってくるとは、ああ、ああ、生きてて良かった。コンビニでお菓子と飲み物を買って首都高へ。湾岸線を走って海ほたるPAを目指すのだ。どうだ、東京のドライブデートっぽいだろう。え、いつか娘も知らん男とデートして海ほたる行く日が来るって?うるさい!黙れ!あっち行け! ほら、助手席は後部座席と違って前がよく見えるから、それだけで楽しいでしょう。湾岸線をひた走っている最中、ふと娘が言った。
「今日、寝てないよ」
「あー、いつも高速だと寝るのにね。今日は景色も見えるからね」
「それに今日、二人だからね!」
「えっ……あ、海が見える」
「海! キラキラしてる!」
娘の二人だからねという言葉に、そうか二人なのかと、なんかちょっとドキッとしちゃった。ドキッとしたその瞬間、太陽の光がキラキラと反射する海が見えてくるなんて、出来すぎ出来すぎ、十分過ぎる演出じゃないか。頭の中に「ラブ・ストーリーは突然に」が流れてきた。

少し混んでいたけど、海ほたるに到着して「幸せの鐘」を鳴らした。鐘があったら鳴らすのは子どもの習性、意外と大きい音でうるさい。クレープが食べたいというので買おうと思ったら開店前だった。しかたないからソフトクリームを買ってやったらクレープが良かったと文句を言われた。でもお昼は娘の大好きなラーメンを食べられたので満足したね。お土産で、ご当地すみっコぐらしグッズみたいなのがあったら良いなと思ったけど、なかった。サービスエリアにはそういうものがあると勝手に思い込んでいた。でも、兄にお土産を買うんだと言って色々探して、ベビースタードデカイラーメンのご当地味を買った。これを自分が選んでやったんだぞと兄に自慢してやりたいらしい。ゲームコーナーに行ったらすみっコぐらしの小さいクレーンゲームがあり、娘は自分で景品が取れて大喜び。パパじゃなくて自分が取ったんだぞとママに自慢してやりたいらしい。海ほたるにはストリートピアノが置いてあったので、二人で「カエルのうた」や「チューリップ」を連弾した。こういうとき、もっと恥ずかしがるかなと思ったけど、案外度胸あるんだな。スタバでコーヒー買って帰ろう。並んでるけど、モバイルオーダーするとすぐ買える。どうだ、みんな並んでるけどパパはすぐ買えてすごいでしょとカッコいいところを見せて車に戻る。帰りは寝ていいからね、と言うと、すぐ寝た。

Oh!Yeah!/ラブ・ストーリーは突然に
小田和正



随想2
9月某日、再び同じように子鉄とママ鉄が出かけるので、ドライブ組はどこに行こうかと相談し、葛西臨海水族園に行くことにした。葛西臨海は、春に水族館ではなくて公園の方に行って、今度は水族館にも行こうねと話をしていたのだ。今回のドライブデートは動物園とか水族館にしようかと話をしていると、娘はスケッチブックを持っていって絵を描きたいと言う。都内に動物園や水族館は数多くあるが、子どもがスケッチしててもあまり邪魔にならないところとなると、特に休日では限られてくる。娘は昨年、上野動物園で何回かスケッチしており、今回もなるべく敷地面積が広いところがいいなと思い、葛西臨海水族園を選んだのもある。それに涼しいといいしね。

助手席に座らせる準備をして、出発、まずはコンビニへ。飲み物とおやつを買う。ヤマザキビスケットのエアリアルというお菓子があるのだが、その塩味を買った。それがいいと娘が言うからだ。エアリアルに塩味なんてあるんだ、ふーん、いつもチーズ味しか買わないからな、と思いながら購入。二人で食べながら水族館に向かった。

水族館、楽しかった。まあね、水族館デートで、楽しくないわけがない。あれこれ見てさ、ランチしてさ、お土産買ってさ。娘は色んなお魚や海の生き物をスケッチブック広げて描く。僕はさしずめ、そのアシスタントですよ。あのペン出して、これ取って、ちょっとあっち見るからこれ持ってて……良いよ良いよ、幼児だしな、手伝ってやるよ。もう少し大きくなったら自分でやれよ、自分で。葛西臨海水族園にはいなかったけど、上野動物園に行ったときは、娘の隣で大学生くらいのお姉さんが同じようにスケッチブック広げて写生してた。カッコいいよね。僕は絵描くの全く得意でないのでなおさら。絵を描くのが好きだと、大きくなったらこのお姉さんみたいになるかな、なんて思ったりして、ね。マグロが泳ぐ大きな水槽を、段々になっている席に座りながら絵に描いていく。
「おお、上手じゃん」
「ママはね、いろんなとこ行ったら写真撮るでしょ、でもわたしは撮れないから、こうやって描いて、見せてあげるの」
「そうなんだ、いいね、いっぱい描いて見せてあげようね」
そういう気持ちでスケッチしてたのか。単に絵を描くのが好きなのかと思ってたけど、ちょっと違うんだな。そもそもスケッチブックがほしいと言ったのは随分前に「のんのんびより」を一緒に見たときで、れんちょんがスケッチしてるのを真似て自分もやりたいというから買ってあげたという経緯である。特別絵を描くのが大好きな子、という感じでもなかったけど、時々そうやって持ち出して描くときにはそんな風に「これを記録して見せよう」と思っているのかと、少し発見だった。絵を描くのが上手下手、絵を描くのが好き嫌い、なんでも構わないし、思うように描いたり描かなかったりしてくれればいい。僕は、いつも他人様の芸術についてああだこうだ物申してるけど、本当はそんなのどうでも良くて、自分の子が描くもの、もちろんピアノだったそうかな、どんな出来栄えだろうと、世界で最も偉大な芸術で、それに触れられている瞬間があるということ、ただそのことに感謝したい。

芸術の世界を追求するなら、多分片手間では難しいだろう。例えば育児をしながら世界のトップを目指せるかというと、ほとんど無理な話で、出来たとしても非常に特殊なケースだけだと思う。僕はただの好事家だけど、好事家なりに芸術を突き詰めたいと思ったら、やっぱり育児しながらは無理。僕もたまにブログでも何でも、偉そうに解った風な口をきくことがあるが、そんなの本当は心の底からどうでもいいと思っている、片手間の音楽ファンのクソみたいな戯言に過ぎない、これが事実。でも、広い芸術の領域においても、育児しているからこそ見えるもの、育児していなければ見えないものは確かにあって、そこで見いだせる光は、なるべく大事にしたいとは思っている。

その日の夜、鉄オタ活動に勤しんだ子鉄&ママ鉄と、水族館を堪能した娘が寝静まってから、一人晩酌を始めた。イチローズモルトのホワイトラベルをハイボールで。今日のつまみは、エアリアルの塩味。娘と食べていたものの残りだ。エアリアル塩味はうまかった。娘との、車内での会話を思い出す――ねえ何個食べていい? とりあえず3個な。塩味もおいしいね。おう、塩味も美味しいな。ねえもう1個食べたい、ねえもう1個食べていい? じゃあもう1個な、あとパパにも1個ちょうだい。こないだは袋なかったからこうやって折ってかばんに入れたけど、今日は袋あるからこうやって入れておけば大丈夫だね。そうだね、こないだはコンビニで袋もらわなかったからね。ねえエアリアルまた食べていい? いいけどパパにもちょうだい。何個? 2個。はい、はい、あっ! おい車でこぼすなよ!

何てコトない毎日がかけがえないし、何てコトない毎日がトクベツになる。間違いない。いやね、普段は子育て、大変なことばっかりですよ、バタバタして、辛くて、不安で、悲しくて、やりきれないことだって沢山ありますよ。だからこそ、この楽しかった時間を書き残そうと思ったわけであります。ああ、愛すべき娘との至福の時間を思い出しながら酒のアテにする残り物の塩味のエアリアルが、世界で二番目にうまいと話そう。一番うまいのはチーズ味のエアリアル。マジで上手いからなチーズ味のエアリアルは。

ヤマザキビスケット エアリアルドイツ産岩塩アルペンザルツ使用しお味 65g×12袋
ブランド: ヤマザキビスケット


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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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