リスト 愛の夢 ― 3つのノクターン:3つの愛のかたち

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山本実樹子 リスト・アルバム第2集 〜愛の夢・死の舞踏〜

リスト 愛の夢 ― 3つのノクターン


フランツ・リスト生誕200周年となる2011年、リストの記事として最初に書くのは、彼の作品中で最も有名と言っても過言ではない「愛の夢」にしようと思う。
特に第3番は、誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。このロマンティックで美しい旋律は胸をときめかせる。
もとは歌曲であり、それをリスト自身がピアノに編曲したものである。この旋律の浮かび上がるわかりやすい曲調からは、歌曲であったことも肯けるだろう。
第1番、第2番はウーラントの詩「高貴な愛」「私は死んだ」に曲を付けたもので、第3番はフライリヒラートの詩「おお、愛しうる限り愛せ」に曲を付けたもの。
この3曲をまとめて「愛の夢 ― 3つのノクターン」というピアノ曲として、1850年に発表された。
1850年というと、リストがピアニストとしての活動をやや抑え、ヴァイマル宮廷楽長として作曲活動に本腰を入れ始めた時期である(ヴァイマル時代とも言う)。
リストの描く「愛の夢」はどのようなものなのか。第3番が非常にロマンティックで印象深い上、第1番、第2番の知名度が低いため、どうしても第3番のものしかイメージがわかず、ついつい甘い恋愛のようなものを想像してしまいがちである。
3曲とも、その歌の歌詞からすれば本来は恋愛的な愛ではなく、宗教的な愛を描いた作品である。だが、このピアノ編曲された3つのノクターンからは、もう少し違った奥行きを持った愛が見られるようにも思う。
これらの3曲のすべてにあたると、リストが描く「愛の夢」(Liebestraum)が、少しはっきり見えてくるような気がするのだ。


第1番も第3番に負けず劣らずの美しい旋律が魅力だ。むしろややあっさりしているため、第3番より好みの人も案外いるかもしれない。
どことなく東欧らしさも漂う旋律を、宝石のようにきらめく高音が飾る部分は、目を閉じて聴いてもまるで光が見えてくるようだ。くどい感じはなく、まさに「高貴な愛」である。
第2番はリストの一流ピアニズムが発揮された曲と言える。旋律に耳が捉われることなく、ピアノの多面的な美しさを見せてくれる。
その分第1番や第3番と比べると、やや人気は劣るのかもしれない。しかし、静かな空間を生み出しながら確かに愛を語るこの曲は、最も夜想曲らしいとも言える。
有名な第3番の詩は「おお、愛しうる限り愛せ」というものだ。
「おお、愛しうる限り愛せ! その時は来る その時は来るのだ 汝が墓の前で嘆き悲しむその時が」という歌詞からも感じられる、強い愛。
主張する旋律からは、全身全霊をもって愛するという強い力を感じる。この愛のベクトルは判断しかねるが、スカラーは尋常でないことがわかる。
この3つのノクターンは、雅に美しく想う愛と、清く静かに想う愛と、強くひとすじに想う愛と、3つの愛の形が見られる。
夜に想う曲と言うが、その想いは実に様々で、それ故に「愛の夢」というのも実に趣深い。
夢の中で見えるものは、演奏家、聴衆、また作曲家にとっても、きっとそれぞれの愛のかたちなのだろう。
ついつい静かな夜を思い浮かべるが、愛で胸が最も熱くなるのは夜なのかもしれない。そんなことを思った。

山本実樹子 リスト・アルバム第2集 〜愛の夢・死の舞踏〜 山本実樹子 リスト・アルバム第2集 〜愛の夢・死の舞踏〜
山本実樹子,リスト

ALM RECORDS
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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック・ファンです。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、つまりひたすら聴くだけ。演奏することにはほぼ興味・情熱はありませんが、それでもときどきピアノを弾いたり、バンドでドラムを叩いたりシンセサイザーを演奏したり、あるいは作曲・編曲をしたりします。more

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“リスト 愛の夢 ― 3つのノクターン:3つの愛のかたち” への3件の返信

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     funapeeさん、こんにちわ。
    リストの愛の夢といえば、愛の夢第3番のことと思っていましたが、1番、2番もあり、しかもノクターンであったとは知りませんでした。
    ユウチューブで1番と2番を初めて聴いてみましたが、1番は3番によく似ていますね。
    それでも3番の方が親しみやすくて、愛されているように感じました。
    3番は娘のトンプソン練習曲の中に、子ども用にアレンジされてありましたので弾いてみたことがありますが、いい曲です。
    あまスタブログを読ませていただきましたが、お住まいは筑波のように思われます。
    東北関東大震災では、私の住んでいる横浜とは異なり被害も大きかったと推察します。
    そちらは強い余震が続いているようですので、くれぐれもお気をつけますように思っています。
    3月11日を境に何か変に感じています。
    通勤の電車、暗めな駅の階段を言葉も無く、整然と歩を進める靴の音だけが響く我々の集団は異様な雰囲気に包まれています。
    気が晴れない毎日ですが、通勤音楽はブラームスの交響曲第3番と第4番を聴いて気を落ち着かせています。癒されています。
    時にはショパンのバラード第1番もです。

  2. SECRET: 0
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    たつさん
    こんにちは。
    実はこの曲はノクターンなんですね。第3番の知名度が最も高いですが、第1番、第2番もなかなか素敵な曲です。もちろん、最も愛されているのは第3番ですし、それだけ第3番は抜きんでて名曲だと思います。あまり3曲を通して聴いたり、弾いたり、考えたりする機会はないので、少しそういう風にアプローチしてみました。
    つくば市は、東北に比べれば被害は小さい方ですが、やはり今でもよく揺れます。落ち着かない日々です。
    ブラームスの交響曲4番、本当なら先月チェコ・フィルの来日公演で生演奏を聴けるはずだったのですが、地震の影響でオケに帰国命令が出て、演奏会がキャンセルになってしまいました。残念なことです。ともあれ、ブラームスはしみじみ落ち着く曲が多いので良いですね。室内楽も素敵です。

  3. SECRET: 0
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    とても、勉強になりました。私も今、リストの『愛の夢』3番の練習をしているのですが、最初は男女の情熱的な愛を描いているのかと思っていたら、こんなに深い意味があったんですね!!!!!驚き♪私は、多分、『愛の夢』の詩を書いた人が生きていた時代は、今のように、孤独な時代だったのかなぁ。でも、聖書に出てくるような、見返りを期待しない、無私の愛で満ちる楽園のような世界をその詩を書いた人は、求めていて、それをリストが曲にして、夢をたくしたのかなぁって思いました。だから、私は、愛で満ちる、楽園のような世界を、表現したいです。再現部には、少しそれが現実ではなくて、夢であるっていう儚さも、入れたいです。とても、勉強になりました。ありがとうございました(☆o☆)☆ミ☆ミ

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